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嘘は内緒の始まり  作者: 凪野海里
11月
101/126

9話 練習

 まず、最初のシーンは「騎士」と「国王」の対面のシーン。

 僕は台本を手にしながら、椅子に座っている「国王」こと、青原くんと「女王」こと、島田さんのもとへと歩いていく。



『お、お呼びでしょうか、国王陛下』



 すると「国王」は立ち上がって、たどたどしく台本を読み出す。



『よく、いらっしゃった。騎士殿……。えっと、」



「えっと、はいれないようにお願いしまーす」



 須藤さんから早速ダメだしが入る。

 青原くんは頭をがしがしかきつつ、もう一度椅子に座りなおした。どうやらやり直すらしい。

 僕は「国王」から離れてもう一度近づいた。



『お呼びでしょうか、国王陛下』



『よく、いらっしゃった。騎士殿。実はおまえに紹介したい者がいる』



『いらっしゃい』



「女王」の呼び掛けで教室の端から「お姫様」こと、海さんが近づいてきた。

 落ち着いた足取りで、「国王」の隣に立つ。彼女はまるでドレスを着ているかのように、ひだを引っ張っているつもりなのか、指をそっと空中に持ち上げて一礼をした。


『はじめまして、騎士殿』



 ちょっと見とれてしまった。

 台本にも「騎士は姫に見とれる」とあったけれど、台本に言われずとも見とれてしまった。

 たぶん、所作が手慣れているのだ。自然さを感じる。



「国王」が口を開こうとしたので、僕は慌ててそちらに向き直った。



『この者は私たちの一人娘である。この子にはまだ友だちがいない。たしか騎士殿とは年が近いはずだ。もしよかったらこの子と友だちになってはくれまいか』



『僕でよろしければ』



 そして場面は変わって、数年後。



「お姫様」は地面に座り込んで鼻唄をうたいながら、手を動かしていた。あれは、花冠を作っている最中らしい。

 そこの近くで「騎士」は剣の稽古中だ。剣を振るふりをしていると、「お姫様」が背中を向けたまま話しかけてきた。


『この前、また村で暴動が起きたんですって』



『そうか』



『ねえ私、なんだか怖いわ』



「騎士」は剣の稽古をやめる。

 不安がる「お姫様」の肩にそっと手を置いて、「騎士」は彼女に語りかけた。


『大丈夫だよ。何があっても僕が守ってあげるから』



 すると、「お姫様」は驚きと悔しさをないまぜにしたような顔を僕に向けてきた。



「ウソつき」








***



 あれ。



 僕は慌てて台本を見返した。そんなセリフあっただろかと思って。

 でもそこにはそんなセリフなんてなかった。台本には「ほんとに?」と問いかけるとある。悲しそうな顔をして。



「悪い、間違えた」



 海さんはぷいっと僕から視線をそらして、頬を数度たたく。



「もっかいいいか?」



 彼女は監督役の戸田さんとその隣で、台本と僕らを照らし合わせて見ていた須藤さんへと視線を向ける。



「ええ」



 須藤さんはこくん、とうなずいた。戸田さんもうなずいている。

 みんなの反応は普通だった。

 海さんの変化に気づいたのは僕だけ。



 気のせいだろうか。



「じゃあもう一度、「騎士」が剣の稽古をしているところからお願いね、雪くん」



「う、うん……」



 ウソつきって、どういう意味だろう。

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