日常1
休み明けの月曜日。朝のホームルーム前。天気は曇り。少し肌寒い。
去年先輩がいた教室に私がいる。しかも今は、窓側の後ろから二列目。今学期最後の席替えをした一か月前はそれだけでものすごくうれしかった。なのに今は―
今朝と届いたメッセージを見返す。
『おはよう。今日は学校だよね。少し寒いようだから、あったかくしてね。いってらっしゃい。』
自然と笑みがこぼれる。あれから、おはようとおやすみを送りあっている。信じられない幸福が日常になっていく。
キーンコーンカーンコーン
鐘がなると、先生が入ってきた。
『おー、早く座れー。三年生が卒業して、これからはおまえらが最高学年だ。自覚をもって行動するように。あと、もう受験生だからな。しっかり勉強しろよ。」
ああ、もう先輩はここにはいないのか。廊下ですれ違ったり、体育の授業を受ける先輩を観察したり、もうできないのか…。
先輩を思いながら、窓の外の校庭を見ていた。
なんであんなに見てて、先輩が女性だと気付かなかったんだろう。不思議だ。
コンコン
誰かが私の机をたたいた。
音のするほうを向くと、担任の先生だった。
先生は、外を何か探すように見てから、こちらを覗き込んだ。
「外になんかあるのか。教科書はどうした。授業、始まってるぞ。」
「すみません。」
もう、一限目が始まっていたらしい。机の横にかけた鞄から、数学の教科書とノートを取り出す。
先輩のことを考えていると、周りのことが見えなくなって、時間を忘れてしまう。先輩はこういうことあるのかな。
先輩は完璧だし、きっとないだろうな。
けど、あったらいいな。
私のこと、いっぱい考えてたらいいな。