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彼は彼女  作者: 櫻井
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告白1



「先輩のことが好きです。付き合ってくれませんか―。」



私、美佳はずっと思いを寄せていた彼に告白した―





1年生の時、彼に出会った。



あれは、夏休みに入る少し前。たまたま2年生の教室の前を通りかかった時、彼は放課後の教室で一人、本を読んでいた。窓際の後ろから二番目の席。



彼を見た瞬間、窓は締まっているのに、風がふきだした。あるはずもない照明が、彼を淡い水色のような、緑色のような、桃色のような爽やかな色で包んでいた。



その時の私に時間なんてなかった。けど今考えると、とても長い時間そこで立ち尽くしていただろう。



どれくらいたった後だろうか。彼は不意に読んでいた本を閉じた。ゆっくりと顔を上げ、教室の時計を確認した。


突然、目が合った。


彼は、不思議そうな表情でこちらを見ていたが、何かを問うように少し首を傾けたあと、優しく微笑んだ。



顔が熱い。まだこっちを見てる。酸素が薄い。どうしよう。わからないっ。



気づいたら逃げるように廊下を走っていた―。




それから、一年と八ヶ月。卒業式。彼に会える最後の日。思い出のこの教室で。この気持ちを伝えると決めた。



断られる事は覚悟していたし、その前提で挑んだ。何を言われてもいい。悪い想像は全部した。 と、思っていた。



でも、彼の言葉は私に衝撃を与えた。だって、こんなことになるなんて予想できなかった。




「ありがとう。私、女だけど…いいの?」



大好きな彼は彼女でした。

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