魔法に夢を抱いて
翌朝、僕は縦ロールさんに魔法を教えてもらうことにした。
魔法が使えれば、荷物運びだけじゃなく戦力としても見てくれるはず!
現実はそう簡単じゃないらしい。
魔法というのは一日二日でできるものではく、日々のたゆまぬ努力によって初めて出来るようになるらしい。
しかし僕は異世界人!きっとチート能力で、バンバンできるはず!
「できない….」
「だから言ってるじゃない、そう簡単にできるはずないって。」
「そんな!……でも、努力すればいつか!」
「魔力感知すら出来ないようじゃ、10年かかっても無理ね。諦めなさい。」
縦ロールさんは冷酷にも、そう言い放った。
「そんな….」
あぁ、神様よ。なぜ神様は私にこんな試練を与えるのですか?
異世界に来ても、チート能力はなし、魔法も使えない、おまけに見た目も元の世界と同じ不細工!
「べつに魔法なんて、固有魔法を使えばいいじゃない。」
「固有魔法?なんですか?それ。」
希望の光が見えてきた、ような気がする。
「はあ?あんた、固有魔法も知らないなんて、どんな僻地から生まれたのよ?」
僻地どころか別世界なんですけどね。
「….まぁ良いわ。固有魔法というのは、一般魔法とは違い自分だけに備わってる魔法ね。魔力を使わないし、修行して身に付くものでもないわ。」
そう淡々と話す縦ロールさん。
「十五歳になってから、神様に与えられるって大司教が言ってたけど、本当かどうか怪しいものね。」
おお、神様よ。あなたの深い御慈悲に感謝いたします!
「期待しないほうが良いわよ….。ほとんどの人が『コインを裏表反対にさせる』とか『3秒間足を痺れさせる』とかだから」
泣けてきた。
「まぁとにかく村をみつけないと。ほら、行くわよ。」
そう言って彼女は無理矢理僕を立たせた。