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10年前1
あの日、僕はミエと街を歩いていた。
土砂降りで、今思えば台風かなんかだったと思う。カッパを着ていて、そしてミエを背負っていた。
なんでそんな中歩いていたのかはわからない。何が目的だったのかも思い出せない。
でも、すごくお腹が空いていて、雨で体がぐったりしていて、ミエは重くて、正直降ろして置いていってしまいたかった。
でも、そんな事はできずに、僕は一歩一歩、また一歩と歩き続けた。
辛かった。
しんどかった。
足は重く、ミエも重かった。カッパさえ、重く感じた。
そして、ついに限界になって電柱の側で僕は座り込んでしまった。
ミエを降ろす。
土砂降りのアスファルトにミエを横にさせる。
ミエは眠っていた。まるで死んだように眠っていた。
背中の重荷が降りて少し体と気分が楽になる。
と、同時に、ミエを降ろしてしまった事に心が重くなる。
土砂降りはひどくなるいっぽうで、もう目にはその水以外、うまく見えなかった。




