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山奥出身ですが皇帝の跡継ぎに選ばれたので王都に旅に出ることになりました  作者: らな


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第22話 東都州 東江 仕事先で

東江では金持ちの篤志家たちの間で、屋敷の清掃や庭の手入れなどの仕事を孤児の子供たちに提供することが当たり前のこととなっているらしく、明蘭と狼牙も、その日、大きなお屋敷の庭の手入れの仕事に来ていた。

 他にも数人の子供たちがいて、彼らと一緒に屋敷に入った。今日は顔見知りの子供はいないようだった。その後入ってはいけない場所や仕事内容についての説明を受け、持ち場へと各自解散となった。



 第三皇子・陽誠は庭から聞こえる子供達の声に眉をひそめた。

 「どうして子供があんなに敷地内にいるんだ?」

 三階の窓から下を眺め、不機嫌そうにこの屋敷の執事に尋ねた。

 「東江では富裕層が孤児の子供たちに仕事を与えることが半ば義務のようになっているのです。当屋敷でも定期的に庭の手入れの手伝いを依頼することになっております。」

 「ふうん、そうなの。でも、僕が滞在する間は子供を入れないようにして。うるさいし。」

 そう言って、もう一度窓の外に目をやった。


 ふと狼の耳が頭から生えた少年が目に入った。

 「獣人の子までいるのか。」

 汚らわしそうに目を背けようとしたその時、その獣人の子が近くにいた少し大きめの子供に嬉しそうに駆け寄っていくのが見えた。自分で捕まえたのか、細長い蛇を得意そうに見せている。

 狼の子の頭をなでる子供の顔を見て陽誠は眉をひそめた。


 どこかで見たことがある?


 その子供は、他の子供に比べ非常に整った容貌をしており、スラっとした手足にシャンと伸びた背すじのためか、汚い恰好をしているにもかかわらず、とても目をひく子供だった。


 その時、高い木から一羽の青い小鳥がその子供の肩へと舞い降りた。小鳥はのど元が緑色になっており日の光のせいか全身がキラキラと光っている。


 あれは神鳥? まさか?


 そう思った時、その子供と顔がよく似た人物のことを思い出した。

 皇宮の奥深くに大切に保管されている帝国に一枚しかない竜王陛下の肖像画。

 それは竜王の妻である初代皇帝・香蘭と第一子である真蘭皇女とその二人の弟達との家族の絵だった。


 真蘭皇女に似ているんだ・・・。

 それにあの神鳥・・・。

 ということは、あれが宝珠か?

 しかし、年齢は麗蘭姉上と同じくらいと聞いていたが・・・。

 まさか、その子供とか? 


 陽誠と母の雪花には北寧での襲撃以降、情報が極力入らないよう操作されていたため、宝珠が龍聖であることや、真蘭皇女が始祖となる天竜村の出身であることは知らされていなかったのだ。


 あの子供が宝珠だと確信があるわけではなかったが、皇宮で時おり見かけていた神鳥を見誤るはずがないという自信もあり、陽誠は側近を呼び寄せた。

 「あの子供と獣人の子供を始末しろ。そうだな、飲み物に毒を仕込むとかでいい。さっき蛇を捕まえていたし、作業中に毒蛇に噛まれたことにすればいいだろう。」

 万が一、何の関係もない孤児院の子供だったとしても、仕事中運悪く蛇に噛まれたと言って見舞い金を払えばいいだろう。



 「皆さん、お疲れ様です。屋敷のご主人から飲み物の差し入れです。」

 男性がコップにいれた飲み物を持ってきてくれた。


 今までの仕事と比べて親切な雇い主だなと思いながら明蘭がコップを手に取った瞬間、狼牙が体当たりしてきた。


 「うわっ。」


 思わずコップが滑り落ち、地面に落ちていった。

 「狼牙!」

 さすがに注意をしようと狼牙の方を見た明蘭は、そこで言葉を止めた。

 狼牙が真っ青な顔をしていたのだ。

 「狼牙!体調が悪いの?」

 明蘭が駆け寄ると、狼牙が抱き着き耳元でささやいた。

 「メイ、これ毒だよ。飲んじゃだめだ。」

 「!」


 狼牙の表情から冗談ではないと悟った明蘭は、男性に謝った。

 「すみません。連れの体調が悪いみたいで、せっかく頂いた飲み物をこぼしてしまいました。調子が悪そうなので、私たちはここで失礼させていただきます。お給金はコップ代やいろいろ引いていただいて大丈夫ですので。」

 早口でそう言うと明蘭は狼牙を背負い屋敷を足早に立ち去った。


 三階からその様子を見ていた陽誠は唇をかみしめた。

 声は聞こえなかったが、狼の子どもは匂ってから行動を起こしたように見えた。

 「全く使えない・・・、央斎は無臭の毒と言ってなかったか?」

 イライラしながら母の実家が重宝している闇薬師の悪態をついた。


 飲み物をこぼしてから鮮やかなほど素早く立ち去った行動をみても、やはりただの孤児には見えない。陽誠は直感であの子供が宝珠だと確信した。

 しかし、今回のことで何か感づかれたかもしれない。東江を早く立ち去る可能性もあるし素早く行動する必要があるな。

 陽誠は庭に出ていた側近を呼び戻し、次の計画を練り始めた。


 一方、屋敷から出た明蘭と狼牙は歩きながら先ほどの飲み物の話をしていた。

 「央斎の屋敷で、あれに似た毒の実験体にされたことがあるんだ。毒の匂いは僕がかいでもほとんどしないんだけど、すごく特徴的な薬草の匂いがよく嗅ぐと少しだけするんだ。前は実験だったからごく薄いやつだったけど、濃度を上げたらどんな生き物でもいちころだって央斎が言ってた。」

 狼牙の言葉に明蘭は眉をひそめた。

 「後で斡旋所に行って、あれが誰の屋敷か聞いてみるよ。」


 狼牙を宿に送って休ませてから明蘭が斡旋所で確認したところ、あれが皇族の所有する屋敷であることが判明した。現在、第三皇子が滞在しているらしいということまで教えてくれた。


 宿に戻り、桂申が仕事から帰ってくるまでの間、明蘭は荷物の整理をしながら考え事をしていた。

 

 今回は狼牙が気付いてくれたので未遂で済んだものの、下手をすれば狼牙まで巻き込んで二人とも死んでいた可能性もあったのだ。第三皇子もこちらが感づいたことに気付いただろうから、今後、どういった方法で攻撃を仕掛けてくるか・・・。


 桂申が帰ってきたため、今日の仕事先で実の兄弟に再び命を狙われ毒薬を盛られたことを伝えた。竜珠や龍聖のことまで詳しく話すと、彼らも事情を深く知りすぎたことで命を狙われる可能性が出てくるため、そのあたりは伏せて狼牙にも家族のことを話した。

 「・・・というわけで、今後また兄弟に命を狙われる可能性が高いから、危ないしこれからは二人とは別行動にしたいと思ってるんだ。」


 桂申は毒を盛られた話を聞いている間中、不愉快そうな顔をしていたが、最後の明蘭の言葉を聞いて怒ったように告げてきた。

 「見損なうなよ。俺が今まで一緒に旅をしてきた仲間を、そんなことがあったからって見捨てるような薄情なやつだと思ってたのかよ。お前が兄弟に命を狙われてるのは旅をするって決める前に聞いてるんだ。逃げるんだったら一緒にだ。」

 「僕も一緒に行く!」

 狼牙も明蘭を見ながら頷いた。


 「みんな・・・。」

 明蘭は涙ぐみそうになりながら、ある決心をした。

 ここまで言ってくれる友を信頼して、全てを話そうと。

 「ありがとう・・・。今まで話せなかったことも色々あったんだけど、全て聞いてほしい。実は・・・」

 明蘭が龍聖のことや竜珠のことなど国家機密に近い話も伝えようとした、その時。

 「しいっ。メイ、一回黙って。たくさんの男の人たちの足音と声がする。」

 狼牙が遮ってきた。

 「子供3人だ、とか大きさが真ん中のヤツを逃がすなとか言ってるのが聞こえた。」

 狼牙は獣人なので匂いや音に関して人よりも優れているのだ。

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