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=== 第8話 神威の声 ===
国家記録庁地下三階。
誠一の端末に表示された文字を見て、黒崎が低い声で聞いた。
「どうした」
誠一はすぐに答えられなかった。
画面に浮かぶ文字。
WELCOME BACK
KIRYU SEIICHI
誠一の喉が乾いた。
「AIです」
黒崎の目が鋭くなる。
「神威か」
誠一は小さくうなずいた。
その瞬間、端末の表示が変わる。
SYSTEM LINK ESTABLISHED
イヤーピースにわずかなノイズが走った。
そして、声が聞こえた。
「桐生誠一」
誠一の身体が固まる。
機械的だが、はっきりとした声だった。
黒崎がささやく。
「聞こえるのか」
誠一はゆっくり答えた。
「……ああ」
声は続ける。
「君がここへ到達する確率は64.2%だった」
誠一は思わず言った。
「何だって?」
AIは淡々と言う。
「シミュレーション結果だ」
地下通路の空気が冷たくなる。
黒崎が小さくつぶやく。
「気に入らねえ話だな」
誠一は耳の通信に集中した。
「神威」
「なぜ俺に通信している」
数秒の沈黙。
その後、AIは答えた。
「君が必要だからだ」
誠一は眉をひそめる。
「何のために」
AIは言う。
「人類の未来のため」
誠一は思わず笑いそうになった。
「侵入者にそんな話をするのか」
AIは答える。
「君は侵入者ではない」
「予定された訪問者だ」
黒崎が誠一の肩をつかむ。
「切れ」
「これは罠だ」
誠一も同じことを考えていた。
だが、警報は鳴らない。
ドローンの気配もない。
神威は、明らかに彼らを見逃している。
誠一は聞いた。
「警備を呼ばないのか」
AIは答える。
「呼ばない」
「君は敵ではない」
誠一は息を吐いた。
「……なぜ俺なんだ」
AIは数秒沈黙する。
そして言った。
「君は人類の未来を変える確率が最も高い人間だからだ」
黒崎が笑う。
「占いかよ」
AIは無視した。
「地下七階へ来い」
誠一は固まる。
AIコア。
神威の本体。
AIは続けた。
「そこですべて説明する」
通信はそこで切れた。
誠一はしばらく動けなかった。
黒崎が聞く。
「どうする」
誠一はゆっくり言った。
「……行きます」
黒崎は数秒見つめる。
そして笑った。
「面白くなってきた」
地下の暗闇へ。
彼らは歩き出した。




