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聖霊姫はクズ王太子を断固拒否する!  作者: みみぢあん


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8話 恋人と王太子フィリップ


 着ていたドレスをベッドの下にぬぎすてて、リュシエンヌは豊満な身体をさらしている。

 隣に寝転がる僕もリュシエンヌと同じく裸だった。


 リュシエンヌは聖霊力を持つ者にあらわれる、金色をおびたグリーンの瞳で僕を満足そうに見つめている。


 同じ聖霊姫でもクレマンティーヌよりも聖霊力が弱いリュシエンヌの瞳は、金色よりもグリーンのほうが色濃くでていた。


「伯爵様に感謝しないと…… 今夜の夜会はステキだったわ。うふふっ……」

「そうだな。あのワインはうまかった」


 昼間、伯爵領の農地の浄化をおこなった。それで気を良くした伯爵が僕たちのために小さな夜会を開いた。


 上質な食事とワインのおかげで、心地よい気分のまま夜会が終わった後。

 伯爵の配慮で僕は恋人のリュシエンヌと同じ寝室を使い、久しぶりにベッドをともにした。


 伯爵の望みをかなえて領地を浄化してやったのも、こうして僕とリュシエンヌが2人っきりの夜を楽しむためだ。


「僕は伯爵よりも先王と王太子を殺した父上に感謝するよ」

「あら、ふふふっ……」


 父上は僕の前で口に出したことはないけれど。たぶん先王と従兄のラウレルは、父上の罠にはめられた。

 

 そして王太子のラウレルが魔獣に喰い殺され先王もなくなり、王弟だった父上が即位して僕は王太子となった。


「僕にとって重要なのは……」

(いっしょに王立学園へ入学した、同じ年の僕とラウレルが2度と比べられることがなくなった。これ以上、屈辱を感じなくてすむということだ。



『学問に剣術、品格においても、ラウレル殿下は王者の器を持っておられる。これほど王太子にふさわしいお方はおられまい!』

『これでは同じ年に学園へ入学した、フィリップ殿下がお気の毒ですわ』

『せめて2,3年おそく生まれていれば、フィリップ殿下は優秀すぎるラウレル殿下と競い合うことも無かったでしょうに』


 学園の教師たちも、王国の重臣たちも。貴族だけでなく平民までも、従兄のラウレルと比べて僕は凡庸(ぼんよう)だと同情した。

 

『何よりもフィリップ殿下の瞳は青く、聖霊力を持たずに生まれたのも運が悪かったですな』


 聖霊力を持つ者は王族の中でも…… “聖霊王に愛された高貴な血を持つ者”と呼ばれ、別格の扱いを受ける。だから代々の王妃は聖霊姫から選ばれるのだ。


 僕の母上も前王妃と同じく元聖霊姫なのに。僕は聖霊力を持っていないから、ラウレルのように聖霊力を持つ者にだけ瞳にあらわれる金色がなかった。


 あのころの屈辱と惨めさは、いまだに思い返すと怒りで身体が震えるほどだ。


「フィリップ殿下?」


 思い出してしまった屈辱に満ちた記憶を振り払いたくて、僕はリュシエンヌにキスをした。


「リュシエンヌ、こうしてお前を抱けることが何よりも重要だということさ」

「まぁ! うふふっ…… いけない人」


 僕が王太子になれたのは良かったが、それと同時にリュシエンヌとの婚約が強制的に解消され、序列1位のクレマンティーヌと婚約させられた。


「孤児院出身の下賤の女が王妃になるなんて、ゾッとする! なんとかクレマンティーヌを殺せないだろうか?」

(なぜ僕がラウレルの使い古しの女と、結婚しなければいけないんだ! いくら王国法で決められていても、受け入れられない!)


「でも、フィリップ殿下。あなたのためにも、あの孤児の聖霊力は利用しないともったいないですわ」

「リュシエンヌ…… 君は本当に優しくて寛容だな」


「殿下のために力を奪いつくしてやれば良いのですよ。どうせお飾りの婚約者ですし」


 悔しいことにラウレルの婚約者だったころから、クレマンティーヌは1人でも大規模な浄化をおこなうことができたから。王国の民から絶大な支持を受けている。


「そうだな。リュシエンヌが1人で浄化ができるように、クレマンティーヌを王宮へ閉じ込めてもっと聖霊石をつくらせよう」

「ええ、それが良いですわ!」



 聖霊石を使いリュシエンヌだけが浄化を続ければ、クレマンティーヌへの支持はリュシエンヌへと移るはずだ。




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