15話 曝露
フィリップ殿下に殴られ蹴られても、一度話し始めたら言いたいことを我慢することができなかった。
民衆の前で私が知っている王家の暗部を、次つぎと暴露してやる。
「あなたたちが先王を毒殺したことも知っているわ!」
私の言葉でフィリップ殿下はハッと息を飲み、顔色が変わった。
「虚、虚言を吐くな! 大罪人の言葉に耳を貸す者などいない!」
「ラウレル殿下を罠にはめて魔獣に襲わせて暗殺したあと。私に先王陛下の治療をさせなかったのは、陛下に毒を盛っていたからでしょう?」
「何をバカげたことを……!」
「亡くなった先王陛下の遺体を清めようと聖霊力で浄化したとき、瘴気以外に強い毒の存在を感じたわ! 本物の聖霊姫にはウソは通じないの!」
「この…っ!」
フィリップ殿下の顔がどんどん青ざめてゆく。私がそのことに気付いていたとは、思わなかったのだろう。
今までの私はこの真実を暴露しても、自分の身が危険になるだけで何も変えられないとわかっていたから。
悔しくても自分の安全のために、ずっと口を閉じていた。
民衆のザワつきが大きくなる。
「聖霊姫様の話はどういうことだ?」
「先王陛下が毒で殺されたとクレマンティーヌ様は言ったのか?」
「ラウレル殿下が罠に嵌められたと、おっしゃっていたわ!」
「フィリップ殿下が先王陛下を殺したの?」
「いや、もしかして…… 今の王様が?」
民衆が困惑し口々に話す姿を、私は処刑台で転がったまま眺めた。
「これで少しだけ復讐できたわ」
(ラウレル様、私を褒めてくれますか? ……それとも聖霊姫の役目をはたせず、あなたの元へ行ったら怒りますか?)
ざわつく民衆を見てフィリップ殿下は大声を張り上げた。
「今すぐ大罪人を処刑しろ───っ!」
「は、はい!」
フィリップ殿下の命令で近衛騎士が私の肩をつかんだ。大きな丸太を輪切りにした断頭台の上に、うつ伏せで押しつける。
処刑人が私の首を落とそうと斧をかまえた。
「……みなさまに聖霊王ルミエール様の祝福がありますように!」
暴行を受けた痛みで視界がぼやけていき、目を閉じた。私は精霊王ルミエール様に最期の祈りをささげる。
「私が死んだ後の世界に残る、罪のない善良な人たちにどうか救いを……」
フワリと何かにつつまれて、身体から暴行の痛みがうすれてゆく。子供のころからなれ親しんだ、私が良く知る感覚だった。
思わず祈るのを止めて、目を開いた。
「……っ⁉」
(今のは聖霊力?)
「うわっ! 何だコレは?」
私の首を切ろうとした処刑人が突然、悲鳴のような声をあげた。
無数の妖精たちが、私のまわりを飛び回っている。




