10話 大罪
「大罪人、クレマンティーヌ! お前を捕縛する!」
いつでも王宮を出られるようにと、数年間すごした私室にある荷物をまとめていたら──
突然、騎士たちが乱暴に扉をあけて私の部屋に乱入してきて、私はなぜか大罪人の汚名を着せられた。
「私が大罪人ですって⁉ 何かの間違いだわ!」
「黙れぇぇぇ──っ! 大罪人クレマンティーヌ!」
騎士たちの顔に見覚えがある。
「嫌よ、黙らないわ!」
(この騎士たちはフィリップ殿下の直属の近衛騎士たちだわ!)
それも罪人を捕まえるのは近衛騎士団ではなく、普通は王立騎士団の仕事なのに。
──つまりフィリップ殿下が、私を大罪人に仕立て上げようとしているのだ。
大声で怒鳴り私の腕をつかむ騎士たちの後ろから、フィリップ殿下があらわれた。
私を汚物を見るような目で見て、殿下は冷ややかに言いはなつ。
「これだから生まれが卑しい者は嫌いなんだ!」
「フィ、フィリップ殿下! コレはいったい何のつもりですか?」
私の両わきに立った屈強な騎士たちに腕をつかまれ、動きを封じられた私はフィリップ殿下を睨みつけた。
「大罪人クレマンティーヌ、お前は聖霊姫リュシエンヌを脅迫してむりやり聖霊石を作らせた」
「何ですって? 聖霊石を作っていたのは、この私自身だわ!」
(王宮の外で浄化をするあいまに魔石に聖霊力を注ぎ、強制的に聖霊石を作らされていたのは私のほうよ!)
「お前は聖霊姫リュシエンヌの聖霊石を奪った」
「……よくも、そんなことが言えますね!」
「お前はリュシエンヌの聖霊石を使い、まるで自分の聖霊力で浄化を行っているように見せかけていた」
「それはすべて、今までリュシエンヌがやって来たことだわ!」
「我々を騙したうえにリュシエンヌを虐げ、今まで序列1位の聖霊姫だと偽ってきた!」
フィリップ殿下は今まで王国民に支持されてきた私の立場を、根こそぎ奪ってリュシエンヌに与える気なのだ。
「あなたたちは… なんて恥知らずなの?」
「黙れ、大罪人! 何年も王家と民を騙し続けてきた、お前の罪は大きい!」
「……そんなっ!」
(はめられた! 私の考えが甘かったわ!)
ラウレル様を罠にかけて魔獣に惨殺させた人たちが、私を黙って解放するはずがないと。
なぜ私は気づかなかったのだろうか。
悔しくて、悔しくて、私はギリギリと歯ぎしりした。
「1ヵ月後。大罪人クレマンティーヌは、王宮前広場で公開処刑がすでに決まっている」
「裁判も開かれないのですか⁉」
フィリップ殿下はフッと鼻で笑う。
「お前はただの罪人ではない。僕の婚約者となり、王家を害そうとした謀反人だ!」
「──つまり殿下は、私が謀反をおこした反逆者だと言いたいのですか?」
(むちゃくちゃだわ!)
反逆者は王国法で裁判を開かず即刻、死刑にしても良いとされている。
たぶん私が所属している神殿からの反発を恐れて、フィリップ殿下は早急に終わらせるつもりなのだ。
私はそのまま王宮の地下牢に投獄された。




