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3杯目 綺麗なコーヒー

気になるアルバイト先候補が自宅の近所にあることを知った晴子は夕飯のお惣菜(コロッケ2個税込198円)を買った後、そのバーを覗いてみることに。

ここか。多分ここよね。

【Bar DIANANT】

バー。。。ディア?ダイアマント?

ダイナマイトって読まないことだけはわかるわ。

窓がない。ドアしかない。


うーん。そもそも私バーなんて行ったことないから全然想像出来ていなかったけど、バーって中覗けないのかあ。。。。

怖いなあ。なんと言えばいいか。この重そうなドアがより重苦しさを増幅させるわ。

ちょっとだけでもいいから覗きたいんだけどなあ。

でもちょっとだけ開けて怖いおじさん出てきたらどうしよう!?

イメージだけど、バーって、無口で白髪のおじさん、なんならおじいさんが白いジャケット着てグラス磨いてるイメージなのよねー。ドラマの観すぎかなあ。あー怖いわあ。やめようかなあ、どうし

「おネエチャン何やってんの!?」

ビクッ!?!?

「どうしたの?お客さん?見たことないけど」


とりあえず怖そうなおじさんでもおじいさんでもない。

なんなら若い。adidasの白いTシャツが筋肉でぴちっとしていてちょっと気持ち悪い。頭はモジャモジャだ。ビニール袋から葱の青い部分がこちらを覗いている。20代中盤くらいかな?恐らくきっとこの店のアルバイトさんだ!


「あ、あの、ネットでアルバイト募集を見て、ちょっとどんな所か知りたくて覗きたくて」

あー、なるほどなるほど。どうぞー」

『ガチャ』

「えっ!?」

「はい、どうぞ覗きたいんでしょ?」

「え、?あっ、はい。すみません!すみません!」

「すみませんって(笑)ほら、入った入った。」

adidasはそう言って私を店にあげた。


うわー。バーだ。映画やドラマで見るバーと全く同じだあ。おっしゃれー〜♪

「ごめんね、まだオープン前で。色々と納品物が散らかってて。ちょっとそこにでも座ってて。」

adidasはそう言うとビニール袋と共に店の奥に入っていった。


どうしよう。ちょっと覗くつもりがこんなガッツリ入ってしまった。多分あのadidasは奥にいる怖いバーテンダーさんを呼びに行ったんだ。


「どうぞ」

adidasはそう言うと私の前に見たことのない綺麗なコーヒーカップを置いた。

「ごめんね。お客様に出すカップしかなくて。砂糖とミルクは?」


コーヒー出されちゃった。お前adidas!コーヒーなんて出さないでよ。あんたはプロテインでも飲んでなさいよ。

「あ、ありがとうございます。すみません、なんかコーヒーまで出してもらって。ブラックで大丈夫です。」

「あら、ブラックなの大人なのね。」

そう言うとadidasはプロ野球チームのロゴが入ったマグカップで自分のコーヒーを啜った。


「それで、アルバイト募集を見てくれたのね。なんでまたバーに?あっ、もしかしてお酒好き?最近は女の子の方がお酒好き多いのよねー。前も女の子のアルバイトいたんだけどそのコも酒大好きでさあ。」

マシンガントークである。

「あ、あの、えーっと、お酒は飲めません。まだ19歳で。い、家が近所で。近いから良いかなあって。」

「あ、酒飲めないの。未成年か。」

あっ。地雷踏んだかも。一気にトーンが下がったのが分かった。

「あ、えーっとはい。。。。」

沈黙が訪れる。

「あ、あの、今日は店長さんはお休みですか?」

「え?」

「え?」

つい繰り返してしまった。


「まあ見えないよねー。私が店長です。」

まさかのadidasが店長だった!!

「バーテンダーって言ったらもっとおじさん想像するもんねー。わかるわかる。」

「失礼しました!つい、お若く見えたのでアルバイトさんかと」

「まあ、そうなんですよ。私が店長でして。あ、それでえーっと君は、そういやまだ名前も聞いていなかったね」

「真田です。真田晴子と申します!」

「戦国時代みたいな名前だね(笑)」

「はあ。」

「それで真田さん、悪いけど未成年は雇えないんだ。どうしてもお酒の場でさ、色々あるから。ごめんね。20歳になってまだ興味があったらまた来てね。」


なんと言うか告白してもないのに振られた感じだ。これからこの道通り辛くなるなあ。でも家のコーヒーの3倍くらいコーヒー美味しかったなあ。

トボトボと歩く。近所に他の良さそうなアルバイト先あればいいけど。

やっぱり徒歩5分くらいかあ。丁度良い距離だなあ。

『ピッ』

オートロックにタッチし鍵を空けた所で気付いた。

コロッケ忘れた。トホホ。

果たして晴子はコロッケを取り返すことは出来るのか!?

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