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1杯目 ホロ苦いビール

「はるこ大学合格おめでとう!かんぱーい!」

小さな居酒屋の一角でビールジョッキが重なり合い心地よい音が響く。


「みんなありがとうー。もう本当に良かったよー。みんなは楽しい女子大生生活始めて、あたしだけ浪人で心折れるかと思ったよー。」


「はるこはうちらの中でも1番優秀だからさあ、志望校のレベル違うんだもん。」


「そうそう、まきの言う通り、うちらは大学行ければどこでもって感じだったからー。ね、さおり。」


「ほーほー、あたひなんて」

「さおりポテト口に詰めすぎ!」

『笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑』


「そんなに優秀じゃないよー。うちはお父さんがうるさいからさあ。マーチ以上じゃないと大学は行かせないって!」


「あー、はるこパパ昔から厳しそうだったもんね。なんかお堅い感じでー。」


「そうそう、そうだった、そうだった!小学校の先生だっけ?」


「んーん、中学校。お父さんのお父さん、つまりあたしのおじいちゃんも学校の先生だったから、もう染み付いてんだよねー。」


「そっかそっか。あ、すみませーん!レモンサワーと、みんなは?」

「えっと、カシスオレンジとー」

「あ、私はハイボール、はるこは?」

「んーっとオレンジジュースで」


「ってかさあ、まきハイボールとか渋くない?」

「そう?美味しいんだよねー。」

「へー、凄いね。あたしまだハイボール?ウイスキー?美味しく飲めないんだよね。」

「慣れよ慣れ!それにハイボールは太らないって先輩言ってたし。」

「!?ハイボール太らないの!?それはあたしも早く飲めるようにならないと!」

『笑笑笑笑笑笑笑笑』

「そんなことより晴子オレンジジュースって。さっきはウーロン茶だったし。お酒飲みなよー。」


「えー。お酒飲めないよ。って言うか私は驚いてるよ。みんなが当たり前のようにお酒飲んでて。みんなまだ19歳じゃん。」

「しーっ!!声大きい!!」


「ごめん。だって私にとっては本当に大きな出来事でさ。」


「晴子も大学入ったらすぐ飲めるようになるって。そうだ、みんないるしビール飲んでみようよ!」

「おー!みくナイスアイディア!」

「ちょっとやめてって。あたしは20歳になるまで飲んじゃいけないってお父さんに言われてるんだから!」

「出た出た頑固親父!あんたもう実家に帰るわけじゃないんだから、バレないって。すみません生1つ!」


そこからはなんだかあまり覚えていない。いや、覚えているハッキリと。忘れたいだけなのかもしれない。

サークルの誰々先輩がカッコいいとか、ゼミの誰々に誘われてクリスマス出かけたとか、バイト先の誰々と良い感じとか。

私がこの1年間薄暗い予備校に通っている間に、都会のきらびやかな大学生活に慣れたみんなはなんだか変わってしまったように感じた。違うな。みんなが変わったのではない。私だけが芋臭いJKのまま取り残されている。なんだか初めて飲んだビールと同じく、ホロ苦い感情で帰路につくのであった。




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