HOUKA
宿羅「ん?」
天声「目が覚めたか?」
宿羅「おい。ここはどこだ」
天声「確証はないが、おそらくは……」
宿羅「おいてめぇ!その姿!!」
天声「どうした?」
宿羅「その姿!てめぇはカラスだったのか!!」
天声「汝の姿を見てみろ」
宿羅「え?……なんだこりゃ!?どうなってやがる!俺はこんな足なんてしてねぇぞ!それにこの黒い羽根!なんなんだこりゃ!」
天声「我らは今カラスという姿を与えられているにすぎぬ。我が主によって」
宿羅「あんだと?」
天声「ここは我が主の心象風景。深層世界」
宿羅「あのガキ、こんな〝気味の悪いもん〟飼っていやがんのか」
天声「月光しかない夜の森。確かに汝と同じくらい薄気味が悪い」
宿羅「テメェに言われたかねぇ。……にしても、なんなんだここは。ゾクゾクするほど寒いぜ」
天声「足下、我らの留まる枝の下を見よ」
宿羅「……首を括った死体か」
天声「横に伸びる枝ぶりからして、首を括るにはまさにうってつけの木である」
宿羅「死にてぇ奴は勝手に死にやがれ……で、あれか」
天声「うむ。我らから少し離れた丘にある、太き枯れ樹。三又の木」
宿羅「何かがたくさんぶら下がってやがる……」
天声「山に生える三又の木は神宿る存在。もしくは……」
バシュッ!
二人「「!?」」
白鳥人族「グウウウウウウウッ!!」
宿羅「おい、こいつ首括って死んでたんじゃねぇのかよ!」
天声「分からぬ。ただ自ら縄を断ち切って落下したらしい。……白鳥人族?」
宿羅「灰色の翼だ。オスか?メスか?」
天声「分からぬ。分からぬがともかく、三又の木へ飛んでゆく」
宿羅「いつの間に十字の槍なんて……ここはガキの心象風景か。ならなんでもありか」
メキメキ……ベリリ……ヌチャア。ドサッ。
宿羅「おい……」
天声「あれらは首吊り死体ではなく、繭であり蛹であったか」
宿羅「あれ、ガキじゃねぇか?」
天声「いかにも我が主の姿。釘崎鉄太郎に見える」
宿羅「ヌルヌル素っ裸のくせに、いっちょ前に斧だけは握ってやがる」
ヴン。
宿羅「おうおう、斧が青く光ったぜ」
天声「感じる。死んだフリスキル。飢餓の咆哮「メシマダカ」の気配」
宿羅「ガキ……何人いるんだ?まさかあの蛹の中全部、ガキが入ってんのかよ」
ザシュザシュンッ!シュパッ!ガシュンッ!
宿羅「にしても弱ぇなぁ。一匹の白鳥野郎に、皆殺しにされてんじゃねぇか」
天声「……そう見える」
ガブッ!ゴキゴオキガブッ!
宿羅「しかも「メシマダカ」のせいで食われてやがる。惨めで滑稽だなぁ」
天声「……?」
メキメキ……ベリリ……ヌチャア。ドサッ。
宿羅「おいおい。また懲りもせずガキが羽化したぜ」
ヴン。
天声「斧が、今度は赤い」
宿羅「子作りしたくて、死んだフリができなくなるヤツだろ。なんてったか、アレだアレ」
天声「死んだフリスキル。発情の咆哮「モウタマラン」」
宿羅「それだそれ……あ?……ヒッヒッヒッヒッ」
ゴキゴキゴキゴキ……
白鳥人族「ヌオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
ザジュザジュザジュンッ!!!
宿羅「見ろよ。傑作だ。白鳥のお子ちゃまが立派な大人になったぜぇ」
天声「幼形成熟が解除され、白鳥人族が変身。あれはオスであったか」
ザシュンッ!!!
宿羅「そしてあの大虐殺。このガキ、こんなものを心の奥底で好きで見ているなんて、死んだフリじゃなくてひょっとしてコイツ、死にたがってんじゃねぇのか?あ?」
天声「………」
ムク。
二人「「ん?」」
ヴンヴン。
天声「死者に紛れていた。我が主が」
宿羅「文字通りの死んだフリか。んで、自分そっくりの死体たちが落とした斧……青と赤に光る斧を持ってやがるなぁ」
白鳥人族「ヌオオオオオオオオオッ!!!!」
ザジュザジュザジュザジュ!!!
宿羅「ヒッヒッヒッ!ダメじゃねぇか。斧もろくに振れないまま切り刻まれて、しかも食われてやがる!」
天声「死んだフリ……青と赤………メシマダカとモウタマラン……」
宿羅「食いまくってますます成長してやがるぜぇ、あの白鳥野郎」
メキメキ……ベリリ……ヌチャア。ドサッ。
二人「「?」」
ヴンヴン。
宿羅「孵ったありゃあ、誰だ?」
天声「我が主……であろう」
宿羅「背中が変だぜ……どこかで見たな、あれ」
天声「川壺人族」
宿羅「それだ。あの甲羅みてぇな変なもんでクソミジンコビッチの攻撃を防いでたなぁ!今回は白鳥野郎相手だ!通用するかぁ!?」
ザジュンッ!ガブッ!
宿羅「ヒッヒッヒッヒッ!やっぱり全然ダメじゃねぇか!!笑えるぜ!いつまで食われ続けるつもりだ!ガキっ!!」
天声「……」
白鳥人族「ヌウウウウウウウ……」
ムシャ。ムシャ。ムシャ。
二人「「!?」」
メキメキ……ベリリ……ヌチャア。ドサッ。ヴンヴン。ザジュンッ!ザジュンッ!
ムシャ。ムシャ。ムシャ。
宿羅「おい」
天声「なんぞや?」
宿羅「白鳥野郎。アイツなんで、自分の羽根を食ってるんだ?」
天声「……食羽行動」
宿羅「あ?なんつった?」
天声「食羽。自らの羽根を食らう、鳥の本能」
宿羅「なんで羽根を食う必要がある?」
天声「羽毛の弾力で消化管を守るためであるが、もう一つ理由がある…………そういうことか」
宿羅「一人で納得してねぇで説明しやがれ」
天声「堅い物を食らった場合、消化には時間をかける必要がある。そのため排泄までの時間を遅らせるために、鳥は羽根を食らう。鳥人も然り」
宿羅「なんだ。そんなくだらねぇことかよ」
天声「くだらない?よく見よ」
宿羅「?」
ズシュッ!
白鳥人族「ヌアアアアアアアッ!?」
宿羅「ようやくガキの斧が当たったなぁ。まぐれか?」
天声「もはやアレは、逃げられぬ」
宿羅「はあ?」
天声「川壺人族の硬い甲殻を食った白鳥人族は消化のために羽根を食らう。しからば羽根はなくなり、飛べなくなる」
宿羅「……」
天声「排泄を遅らせ、消化管を傷つけぬために体内で団子状にしたペレットを仮に口から吐き出すにしても、攻撃動作は鈍る。細い首をペレットが通れば窒息する可能性もある。普通に排泄孔から出すのにも時間はかかる。だがいずれにせよ出さねば、胃腸は破裂する」
宿羅「…………」
天声「結果的に、川壺人族にかかわった白鳥人族はあのようにして斬殺される」
宿羅「おい。ひょっとして」
天声「我が主はハスターを壊すために、白鳥人族と川壺人族自身の秘密を川壺人族に教え、水蚤人族を改造してハスターへと送り込んだ。……それだけを行ったと思っていたが、間違っていた」
宿羅「……」
天声「我が主の真なる目的は、白鳥人族の絶滅」
ヌアアアアアアアアアッ!!ズシュッ!ズシュズシュッ!!
天声「鉱物資源があり、しかも使役できる川壺人族のいるハスターの地を、白鳥人族は簡単にあきらめない。とはいえ白鳥人族の集団は組織としては壊滅。結果として深刻な食糧難が起きる。そうなると白鳥人族はオスメス問わず、無性・有性問わず、増えた暴徒である川壺人族を捕食する可能性がある。その果てに起きるのは食羽行動」
宿羅「で、羽根を食えば食うほど、不利になる」
天声「羽ばたいても飛べず。吐き出したくても吐けず。排泄したくとも排泄できず。腹痛だけが緩慢に続く地獄。そしてその間にも川壺人族はあきらめずに攻撃を続ける」
宿羅「死にたくなきゃ、白鳥野郎どもは番で遠くに逃げるしかねぇってことか」
天声「然り。ただし、逃げたところで、つがいの子どもの繁殖相手は簡単には見つからず。結局のところ滅びる」
宿羅「滅びたくなきゃ、白鳥野郎と白鳥ビッチどものいるハスターに戻るしかねぇ」
天声「然り。そして戻れば川壺人族に、腹の内外から殺される。すなわちどう転んでも白鳥人族にとっては地獄」
宿羅「絶滅が渦巻く……ここまで、あのガキは、考えていたのかよ」
天声「おそらく。しかも我らすらあずかり知らぬ、かような領域で」
宿羅「……」
天声「我らは主の心に棲む者。その我らすら、知らぬ領域がこうして在る」
宿羅「滅入って疲れて眠ったせいで、それが俺たちに垣間見えたってわけか……ここはじゃあ誰が」
ストストンッ!
二人「「!!」」
ギャー!ギャー!ギャー!
天声「剣鉈?どこから……」
宿羅「ゲフッ!心臓をやられた!やべぇ……」
ギャー!ギャー!ギャー!
天声「猿の仮面……あやつが」
宿羅「ガキの……闇……」
朝まずめ。つまり日の出の1時間前。
魚が餌を求めて活発に動く、薄明るい、青の時間帯。
ヒュオオオオンッ!!!
召喚者釘崎鉄太郎が地上迷宮セキドイシに閉じ込められ、迷宮で巡り合った戦乙女とともに淵位の魔物ベルゼブブと戦っている頃。
バババババババンッ!!!!
地上迷宮セキドイシのあるオキシン国から南西に3千キロ離れた絶海の孤島、フィリニアにて。
(来る!)
バサバサンッ!!
潮風を切りつつ、海上を高速で飛ぶ召喚者がいる。彼女の背中には四枚の白い翼。
ズビャッ!ズビャビャビャビャバヤッ!!!!
水面から空中へ無限に飛び出してくる、手裏剣のような漆黒の魚鱗。
ヒュオオオオオオオオッ!!!!!!
弾幕のように飛ばされる魚鱗をジェット機のように旋回して躱しながら飛翔を続ける召喚者の名前は、世良田。
世良田莉子。
特殊な魔法を操れるクイーンスキル所持者にして、ビトレイヤー「天使を篭絡する者」に選ばれてしまった、元高校生。
それが蛇だらけの孤島フィリニアの沿岸を、汗まみれになりながら縦横無尽に飛び回る。
パァーンッ!!
世良田の手汗の浮くその手に握られているのは使い古した蛇革の鞭。音速で振り回せば、銃の発射音に似た音を出せる。
「ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!」
息を吸っても吐いても酸素が肺を巡る気嚢を内臓に搭載した世良田は既に2時間以上空中を全力疾走しながら偽の銃声を放つ。
ズビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャバヤッ!!!!
そしてその偽音と日の出の生む世良田の影めがけて、水中から魚鱗が回転鋸のように飛びだす。
キュンキュンキュンキュンキュンキュン………
一方でその水中。
スクリューの錬成に成功した召喚者が、信管も火薬もない〝訓練用〟魚雷をいくつも泳がせる。
ボムンボムンボムンボムンボムンボムンッ!!!!!
プロペラの回転音に似た振動音を放つ魚雷を貫く、苦無のような黒い魚鱗。
魚鱗は魚雷だけでなく、魚雷を放った召喚者の肉をも容赦なく狙う。
ゴボゴボッ!!ブオンッ。
召喚者は発達した高密度の筋肉の詰まった四肢と尾を素早く動かし、ダツのように迫る魚鱗から距離をとるべく必死に泳ぎ続ける。
彼の名前は綾瀬圭祐。
トランプスキルの中でも「錬金」という稀有なダイヤスキルの所持者にして、ビトレイヤースキル「天使を斬獲する者」に選ばれてしまった元高校生。
苦無のような、ダツのような魚鱗が綾瀬の皮膚を何度も掠る。しかし巨獣の魚鱗に匹敵するほど硬い爬虫類の鱗を装備している変身状態の綾瀬は、無数の傷を負うも流血にまではいたらず、何とか入り江に逃げ込む。
「ぶはっ!すううっ!はあっ!すうっ!はあっ!すううううっ!」
ザボンッ!!ビシビシッ!!!
水面から顔を出し、意思で稼働できるようになった横隔膜筋を動かし、肺に目一杯に空気を溜め込むと再び潜る。手には既に魚雷。潜水可能時間は、何もしなければ30分超。ただしそれでは殺されてしまうから彼は泳ぐ。10分間無呼吸でひたすら泳ぐ。
世良田。綾瀬。
どちらも元の世界にいられれば、ただの高校生だった。クラスが同じだけの、関わることのほとんどない、赤の他人。
(雑魚めが)
しかし今は、異世界パイガに転移させられた。
天使サンダルフォンが、神の仕掛けたゲーム「ソロモン」に勝つための駒として。
(毎日毎日……偽音であることにこの私が気づかぬとでも思っているのか)
ただし天使サンダルフォンの刺客たる「ビトレイヤー」として二人は特別に神によって選ばれたために、今は孤島にいる。ただの他人は、神の含めた因果で結ばれた。
結ばれ、孤島フィリニアにいて、二人は銃声音を真似し、プロペラ音を真似する。
結ばれ、暗号名「コトリ」を与えられ、暗号名「トカゲ」を与えられている。
すなわち因果の中心に、暗号名を与えた、銃声を放つ、プロペラを持つ者がいる。
(囮のつもりか。罠でも張っているというのか。それとも単なる無謀な挑発か)
魚鱗を手裏剣のように、苦無のように海中から飛ばし続ける存在は、多くの魚を呑み込み捕食しながら思案する。
その正体はリヴァイアサン。
ランク:精霊位の魔物。
すなわち、過去に行われたゲーム「ソロモン」において、敗北した天使のなれの果て。
敗北天使の復活条件は、ただ一つ。
バババババババババッ!!!!!
(日の出が合図か。……間違いなく島から振動が響いている)
それは、「ジョーカースキル所持者を殺すこと」。
それができればゲーム「ソロモン」に、執行猶予付きの天使として、すなわちプレイヤーとして参加できる。
故に今は、ただのチャレンジャー。
ジョーカーも含めた召喚者全員にとってのギミック。
(必ず殺す!!!!)
敗北天使のなれの果てリヴァイアサンが魚鱗攻撃をやめて、巨体を動かす。
海水が大きく揺れ動き、高層ビル群のような高波が発生する。嘯滅波タイダルウェイブ。
ザバーンッ!!!!!!!
高波が島を呑み込む前に、リヴァイアサンが孤島の上をダイナミックに跳躍する。上空から島の様子を確かめにかかる。
(ジョーカーはどこにいる?奴の火筒はどこにある?)
瞬膜だけ閉じて舞うリヴァイアサンは、自分と高波から逃げる世良田も綾瀬も見ていない。
見たいのは〝音源〟。
デグチャレフ軽機関銃に似た銃声を出した人物。
(ジョーカーがいない?)
赤外線も紫外線も可視光線も磁力線も感知できるリヴァイアサンが宙で戸惑う。
ババババババババババババンッ!!
デグチャレフ軽機関銃の音はけれど、目下から聞こえる。
(朽ち縄どもが……これもフェイクか!)
ザブウウウウウウンッ!!!!ボヴァアアアアアアアンンッ!!!!!!!
陽光の熱を感じた蛇たちは繁殖行動のためにオス同士で身体を叩きつけ合い、威嚇する。それが軽機関銃音と酷似する。リヴァイアサンが今日初めて聞く、新しい擬似音。
島で日夜起きる、強制種分化。
放射線を絶え間なく浴びせられた蛇たちの細胞内の水は異常をきたし、ついにはDNAが壊れる。その中で何とか生き延びた個体は遺伝子に変異をもつ。
そして選ばれ増やされた個体群が今、地上に放たれ、軽機関銃音を上げて島の上を這いまわっている。
島のヘビの進化を引き起こす存在。
すなわちジョーカー。疑似魔王。
志甫蒼空。
異世界パイガに飛ばされた元高校生。
ゲーム「ソロモン」において生贄に選ばれた代償として凶悪な力を得た、空中航空母艦。
人の心の代わりに、トカマク型核融合炉をもつ怪物。
人の形に擬態した、原子力機動要塞。
それがシウラソラ。
それが夜明けの今、島の表面のどこにも見つからない。
リヴァイアサンのいかなる探知機能をもってしても見つからない。
(地下の溶岩流にまた潜ったか!?)
自ら引き起こした高波が孤島フィリニアの樹木も、蛇も、土砂も、何もかも押し流す。海水面がかつてないほど濁る。光は散乱しすぎてダイヤモンドを散りばめたように光り、水中へ差し込む光量が恐ろしく減る。
(潮を浴びせ過ぎたせいで樹も岩も朽ちたか……)
乱流を起こし蛇も岩も樹々も魚も食らいながら、リヴァイアサンは考える。
(鞭を鳴らす羽虫も、風車を回す孑孑の相手も、飽いた)
決断した巨体は意図的に鼓動を速める。血流が速まる。筋肉の箍を魔力で外す。
(もはや島ごと破壊するっ!)
ボッ!!!!!!!!!!!!!!
濁る海面を破り、巨獣が再び島の上を舞い、天を覆う。
しかし今度は島を飛び越えない。
ジャギ!!
鱗を逆立てて島に、そのまま金棒のように体を無慈悲に叩きつける。
ドゴオオオオンッ!!!!!!!!
大地を思い切り揺らした後、針の飛び出たロードローラーが地面を削り潰すように、暴れるリヴァイアサンが島の上の何もかもをなぎ倒し、すり潰し、削り壊していく。
(!?)
巨体がふと動きを止める。静寂が一瞬訪れる。
眼球を守るために覆っていた瞬膜すら開くリヴァイアサン。
シュウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!
(なんだあれは!?)
地平線から昇る海上の空に引かれた、白い一筋の軌跡。
軌跡の先は、鉛筆のようにとがった鉛色の物体。
超高速で高高度へと発射された飛翔体。
とがる鉛筆の反対側からは鋭く激しい炎が噴射される。
飛翔体。
PGM-11レッドストーン改良型。
すなわち短距離弾道ミサイル。
(?)
「うぅ……ああ、ああっ!!」「ぐ、ううううううっ!!」
打ち上げられたミサイル内に隠れた世良田と綾瀬は、自分に襲いかかる10Gの重力加速度に必死に耐える。常人なら気絶する重力にもかかわらず、抱きしめ合った召喚者二名は懸命に耐える。
メキメキ。
「さて、もうすぐ高度100キロメートルに達するけれど、今度はどう出る?」
ミサイルに生えた突起物。人間の首らしき構造。
レッドストーン輸送ミサイル作戦の立案者シウラソラはミサイルと融合した状態で、遥か下の〝大きな蛇〟を見下ろす。
(……)
島から逃げられたことに気づき、頭が真っ白になるリヴァイアサン。
(思えば羽虫女が少しずつ樹木を傷つけ、孑孑男が日々岩を砕いていた。繰り返される擬似音と新手の朽縄、そしてこちらの視界を通常より長く遮る海上汚染……全てはあの火炎筒を無事に飛ばすための布石……)
大きな蛇が、リヴァイアサンが、即座に島の破壊をやめ、蛇腹を動かし海中へと戻る。
真っ白だった思考は再び、フル回転する。
(舐めるな!!)
志甫の術中にはまったことに気づいたリヴァイアサンは激怒し、空を突き進む弾道ミサイルを猛追する。
ミサイルの進路は北東。すなわち超大陸パンゲア。
志甫の勝利条件とは要するに、パンゲアに上陸すること。上陸さえできれば場所はどこでもいい。
一方のリヴァイアサン。
勝利条件はジョーカーをパンゲアに上陸させないこと。上陸されればジョーカーが海に近づかない限り、挑む機会が著しく減る。勝ち目が那由多の彼方に消える。
ジョーカーの、孤島フィリニアへの隔離。
天使サンダルフォンが用意した、精霊位の魔物リヴァイアサンにとって千載一遇の機会。
これを逃せば勝利の機会はほぼ永久に失われる。
(逃がさぬ!)
焦らないわけがない。
(逃がさぬ!!)
怒らないわけがない。
(逃がさぬっ!!!)
本気を出さないわけがない。
魔物の血肉が脈打つ。周囲の魚が湯立つほどに海が沸いて泡立つ。魚が気絶するほどに潮が轟く。魚が千切れるほど波が割れる。魚が消滅するほどの魔力が迸る。
(食らうがいい……排滅砕鱗!)
潜水艦のように泳ぐリヴァイアサンを覆う全身の鱗が赤く明滅する。その妖しい赤色がリヴァイアサンから輝きつつ離れ、糸のように軌跡を残しながら急浮上する。水面を荒々しく破り、空気を裂き、上空のミサイルの撃滅に向かう。赤い雨が海面から夕立のように噴きあがる。
〈着弾地点を設定した〉
光が刻々(こっこく)と変化し、距離感がつかみづらくなる時間。
世良田と綾瀬に無線通信を入れた志甫は弾道ミサイルとの融合を、上半身だけ解く。ミサイルから人間が生える。人間の形をした航空母艦が生える。
ゴキゴキゴキゴキゴキ……
左腕にはGSh-30-1。すなわち30ミリ機関砲。
右腕にはR-37。すなわちMig-31用空対空ミサイル。
フィリニア島の地下深く。溶岩流の近くに工場を造り製造していた破壊兵器の照準が赤く輝く鱗に向けられる。
シュポオオオンッ!!!
ドロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!
黒い眼球に白い瞳の志甫の両目がカメレオンのようにバラバラに素早く動く。両腕のモーターとギアと油圧機がフル稼働する。
R-37ミサイルを魚群のように躱した幸運な鱗たちを、命中率の高い不幸な特殊機関砲で一つずつ木端撃滅していく。爆音が空全体に鳴り響く。澄んだ空が硝煙と煤の雲に包まれていく。
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンッ!!!!
しかし、志甫の機関砲の弾幕をはるかに上回るリヴァイアサンの魔弾鱗が誘導ミサイルのようにして志甫の体に雪崩上がる。
ブシュオンッ!ブシュンッ!
志甫は弾道ミサイルの一部を切り離し、デコイにする。さらに自身の口からチャフグレネードを発射し、いずれも囮として使う。一方で落下予測地点の座標修正を終え、ターボジェットエンジンを止める。
バアッ!!!!
高度を落としつつ、志甫は高度10キロ地点でミサイル弾頭のパラシュートを開く。蛇革を幾重にも縫い重ね、繋ぎ合わせて造ったパラシュート。それが引っ張る弾頭の中には世良田と綾瀬の二人が籠る。
ボスボスボスボスボスボスボスボスッ!!!!!
弾頭のパラシュートに次々と無惨に穴をあけていく、呪いを帯びた魔鱗の大群。
パラシュートを失い、重力にただ従って落下していくレッドストーン輸送ミサイル弾頭。
「「………」」
空気抵抗から生まれる摩擦熱の高温と想像以上の重力加速度に、歯を食いしばる世良田と綾瀬。抱きしめ合う全身に力がこもる。互いに汗と血がにじむ。目の前の相手にしてやれることを全身の細胞が考える。
「必死だね。みんな生き残ることに」
楽しそうに弾幕でリヴァイアサンの魚鱗に応戦しながら自由落下していく志甫とミサイル弾頭。超合金の志甫の上半身ですら、魔法を帯びた魚鱗は削る。抉る。貫く。
ミシャリ。メキメキメキ……
傷ついた機械王の腹部から、火砲が不吉に芽生える。
〈こちらクロフネ。コトリとトカゲに連絡。ミサイルの高度が1万メートルを切った。あとは自分達で脱出して着地して。運と実力がなければそのまま死ね〉
志甫はそういうとロケットから自らの下半身も生やし、分離する。腹から芽生えた砲は203ミリ榴弾砲。戦車が戦車を滅するための破壊砲。
トンッ。
ミサイル弾頭からついに離れる志甫。
キュンキュンキュンキュンキュンキュンキュンキュンキュンッ!!!!!
頭部がキノコの傘のように広がり黒いドローンに変化した志甫がさらに苛烈な弾幕を張り始める。
ドゴォ―――オオオンッ!!!!
シュポシュボシュボシュボオオオンッ!!!
ドロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!
赤光する魚鱗はことごとく打ち落とされ、逆に海面に金属弾が突っ込み、鱗を失いつつあるリヴァイアサンの体表に突き刺さる。
(この物質は何だ?肉体が蝕まれていく?)
体の異変に気付くリヴァイアサン。
だが劣化ウラン弾を激しく食らい、肉が放射線で冒されて崩壊しようと、退くわけにはいかない。止まるわけにはいかない。体を大きくくねらせ高波を重ねて津波を引き起こしながら、鱗を必死に再生させる。残る全ての魔力を投入し、無尽の鱗を空へ飛ばし続ける。
「なんだ?」
予兆なきその凶悪な津波を最初に観測したのは、パンノケル王国沿岸警備隊。
パンノケル王国。
それはアーキア超大陸南西端の寒冷地にある、魔法王国。
さらに、
「おいっ!何かが空から降ってくるぞ!!」
キュォォォォォォオオオオオオオオオオオ……
短距離弾道ミサイルの弾頭部分が、
ドゴオオオーンッ!!!!!!
隕石のように着弾する。
黒い煙を上げ、弾頭は地面を大きく震わせながら、巨大なクレーターを造る。
「ふうう……鍛えといてよかった……」
「はぁ、はぁ、はぁ……馬鹿じゃねぇの!?こんなの!鍛えたからってどうなるもんじゃねぇだろ!」
地面衝突と共に粉砕した弾頭。再突入体。
「どうにかなっただろ。お前も俺もちゃんと生きてんだからそんなにプリプリすんなよ」
「はぁ!?これ見ろっつうの!アタシの翼!超立派でゴージャスなのが二枚も丸焦げになったんだけど!!」
その弾頭片近くに転がる、ギリギリの命二つ。
「そうだな。でもたしか、羽根は毛と同じでまた生えてくるんだろ?だいたい下の毛は剃ってるくせにアイテッ!」
「うっさい!余計なこと言うな!!」
世良田の柔軟な羽毛は地面衝突の衝撃を逃がし、綾瀬の筋肉と角質鱗は膨大な摩擦熱を外へ逃がした。
ただし二人ともボロボロ。
クレーターの中で倒れたまま、守り合った命は言い争っている。
「そうだ。おい」
ゆっくりと身を起こす男。
「んだよ」
「そのさ。島を脱出したら渡そうと思ってたものがあるんだ」
「え?」
「なんつーか。お前が俺にとって大事な人だって伝えたくて」
「っ!」
驚いた女がゆっくりと身を起こす。
「そんな大きいもんじゃないんだけど」
「……よこせ」
「へ?」
「いいから、早くよこせって」
「受け取ってくれるのか?」
「……当たり前じゃん」
頬を赤くした女がぶっきらぼうに左手の甲を差し出す。
「良かった。絶対にサイズは間違えてないぞ!」
その手に指をからめる、澄んだ瞳の男が照れくさそうにはにかむ。
「渡す前から何を渡すか、分かるようなこと言ったらダメだろ。ったく女心が分かってな……」
「錬成っ!!」
バシイイイッ!!!!ゴトゴトンッッ!!!
「………」「よしっ!」
手を取り合う男女の真ん前に転がった防具。
「志甫が地下2400メートルで採掘したスケブニライトで俺がつくった兜と鎧だ。軽くてメチャクチャ丈夫!これならお前の命を守れフゴッ!」
「指輪じゃねぇのかよ!」
クレーターの外から若い男女の不可思議を怪訝そうに見守る、パンノケル王国兵士たち。
〈痴話喧嘩は後にして。津波が来るよ〉
「「!」」
志甫の無線で我に返る召喚者2名。クレーターの中を気にしていた王国兵たちも周囲の叫び声や逃げ出す兵士を見て何事かと振り返り、なりふりかまわず北へと駆けていく。
(僕とやりあったって結局勝ち目なんて一ピコグラムもないのに。……アレにそう伝えられたら苦労なんてないんだけど)
航空母艦をやっている志甫はリヴァイアサンの起こす津波を眺めながらふと思う。
(伝える……話す……)
異世界に来る直前。
修学旅行のバス移動中。
隣の座席に座っていた同級生が志甫の面影に立つ。
ページの端に折り目がいくつもついた、『ドリトル先生航海記』を読む少年。
(「天の声」からの死亡報告は入っていない。僕がジョーカーに選ばれ力を得て、初めて変形した時点で、倒れていたのは気づいていたけれど……)
面ではなく塊として陸に迫る潮の災厄をぼんやり見ながら、志甫は一人の召喚者を想う。
(あの時は動かないことにだけ気を取られて、なぜ動かないのか考えなかった。あの場で死体の真似をするとはさすが)
召喚された者が誰一人として想像もできない特殊スキル「死んだフリ」の所持者。
釘崎鉄太郎。
(釘崎……お前のことだ。また生きて会うことがあるかもね)
クスクスと笑いながら思い出に浸りつつ、ウラン濃縮までできる志甫は、地形ごと変える〝大便〟の投下準備を完了させる。
ズムンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「……は?」
ホバリングをする志甫が、きょとんとする。周囲をゆっくりと見渡す。
(津波が、崩れる?)
押し寄せる潮の塊が、体積を失い、壁となる。志甫のよく知る、ただの巨大な高波となる。
(リヴァイアサンの進行が止まった?奴はどうした止まる?)
超音波を使い、海の中をさっそく探る志甫。その間にも百メートルを超える高波が志甫を含めて沿岸部に襲いかかる。
シュウウッ!!!
ただし志甫の2000℃を超える輻射熱で彼に触れた海水だけは瞬時に気化し、彼を置き去りにして過ぎていく。
(何だ、こいつは?)
地獄のような高波カーテンの裏。
上空からただ一人、その光景を目の当たりにする志甫。
グゥゥゥゥウウウウウウゥゥゥウウウゥゥウウウウウウ………
リヴァイアサンが苦しそうに呻く。
そのリヴァイアサンの鰓、目、耳、口、排泄口。
全ての穴に巨大な触手がねじ込まれている。
ギチギチギチギチギチギチギチチチチチイイイイイイイ……
さらにリヴァイアサンの巨体を締め上げる筋肉の塊のような極太の触手。吸いつく吸盤。
(大きいミズタコ?俗にいうクラーケンってやつかな?)
メギャッ!ブシュウウウッ!!!!
筋肉の吸盤をもった触手がリヴァイアサンの骨を思い切り砕く。それにとどまらず肉がねじ切られ、赤い血液が夥しく流れ出す。広域の海が深紅に染まる。
ザバアンッ!
1本の触手が赤い海面から悠々と伸びる。その触手の先端には、リヴァイアサンから引き抜いた黄金の目玉が2つ。桃色の視神経を握るその姿はサクランボを持つ手に似ていなくもなかったが、触手は悠々と蠢き、視神経を手繰り寄せて、ちょうど目玉2つの瞳が志甫の真正面に向くように眼球を持ちなおす。
『いつでも僕を見ている。そういうメッセージかな?ミズダコ君』
スピーカーを使い、志甫は触手に答える。すると触手は目玉を持ったまま海中へと消える。リヴァイアサンの死体も深海へと消えていく。
(僕が手こずったリヴァイアサンをこうもあっさり仕留めるとはね)
ため息をついた志甫は空母であることをやめる。
「僕は、僕に等しき者となりて、再生す」
頭を人型に戻し、ホバリングをやめ、学生服姿の人型になって地上へと落下する。
ヒュオオオオオオオオオオオオオオオッ!ボムンッ!!!!!!
足の裏からロケット燃料を逆噴射してスマートに着地する志甫。
〈こちらクロフネよりコトリとトカゲへ。答えて〉
噴射した炎が引火して徐々に足下から火に包まれる志甫の視界に広がる、大陸世界。
津波のような「引き」のない高波に襲われ、防砂林も要塞も何もかもとりあえずぐっしょり濡れ、押し崩れている瓦礫の山。
〈こちらコトリ。どうぞ〉〈こちらトカゲ。どうぞ〉
水浸しの瓦礫の山で、偶然生き延びた警備隊がどうにかこうにか起き上がる。武器を杖に、泥まみれの姿でかろうじて立ち上がる。肩で息をしながら顔をしかめる。目に染みる塩水を袖でぬぐい、砂を手で掃い、恐怖とともに、敵意を目に滲ませる。
ドゥロロロロンッ!!!
その顔面を即、ハチの巣にするジョーカー志甫。
彼の伸ばした右手には、ハンドガン「AWグロック」。ただしトリプレットドラムマガジンを搭載した600連発銃。
〈命令だ。武器を持っている者。持っていた者。持とうとしている者。彼らを蛇と同じように造作もなく殺して〉
志甫は世良田と綾瀬に命令を下し、歩き始める。黒い体液を体の後ろへ垂れ流しながら前に進む。
フォオオオオオオオオ……
黒い石油に炎が引火し、歩いた道がそのまま炎に包まれる。黒い重い煙が狼煙のように上がる。
煙も炎も、海水に混じって広がる石油に引火し、水黴のように沿岸部を蝕んでいく。
冷たい潮風と異臭と黒煙の吹きすさぶ、曇り空の明け方過ぎ。
〈〈了解〉〉
ミサイルの作ったクレーターの海から2名の召喚者が跳び出す。
「まったく男ってほんと気が利かないんだから……」
クイーンスキルの世良田。
綾瀬の錬成したヘルムとアーマーを装備し、燃えていない二枚の翼で飛び立つ。
「いっちょやるか」
飛び方を確認すると、世良田はすぐさま空を駆け抜ける。
「敵襲っ!敵襲っ!!てきっ!?」
ドシュドシュドシュンッ!!
羽根の燃えてしまった二枚の翼の骨が、兵士の首や目を刺突剣のように刺し貫く。
「来るなバケモノッ!」
「だったら俺を追っ払ってみろっ!!!」
グシャンッ!!!
「ぐえあっ!」
ドグシャッ!!
ダイヤスキルの綾瀬。
爬虫類に変身している上に、尻尾の先と指先の爪を特殊鉱石スケブニライトで覆った男は目の前で訳も分からず武器を握る兵士一切を引き裂き、捻り潰していく。
〈やっぱ翼が2枚しかないと、うまく飛べない!〉
〈ヒヨコがよく言う。最初は2枚しかなかった分際で〉
〈もう4枚で飛ぶようになって長いから、昔の感覚が思い出せないって言ってんだよ!〉
〈それよかリコ!俺の作ったサプライズの鎧と兜はどうだ?毎晩のようにお前の裸を触ってるから絶対にジャストサイズだと思うぞ!〉
〈うっせぇ!黙れ!昼間に下の名前で呼ぶな!死ね!〉
〈二人ともいいから集中してね〉
無線にこたえつつ、志甫は自分の左側から向かってくる敵に一発かます。
ドンッ!
志甫の左手にはM320A1グレネードランチャー。中身は容赦ないナパーム弾。
食らった者は火のついたゼリー状の油脂がべたりと全身に付着し、志甫同様に火達磨になる。
「ひああああああああああああああああああっ!!!」
生きたまま焼かれ、逃れられない激痛の絶叫を上げ、転げまわり、のたうち回り、火種と恐怖と肉の焼ける臭いを周囲に撒き散らして絶命する。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
前進するジョーカーの後ろが燃え盛り、彼の左側の世界も焼死体と火の手が徐々に広がる。
〈ねぇ志甫。殺せっていうけれど、実際どこまでやればいいの?逃げていく敵は深追いした方がいいの?〉
〈そうそう。なあ志甫!標的はここにいる兵士だけなのか?それとも北に向かっている敵も追うのか?〉
〈二人とも何を言ってるの?〉
燃え盛る火焔に包まれて歩きながら、パンノケル王国兵の頭部を狙い撃ちして脳をぶちまけている金属生命体が微笑む。
「島を出たけれど、島を出る前と同じ」
ドゥロロロロロロロロロロロロンッ!!!
「〝終わり〟は僕が告げる。だから」
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
「殺戮して。死者の肉が、底なしに深い生の穴を満たすまで」
〈ガチで皆殺しってわけね。ふぅ………ウチは西側の〝蛇〟を狩る〉
「殺戮して。弱者の悲惨な境遇が、強者の底なしの胃の腑を満たすまで」
〈無限蛇退治みたいに殺り切るしかねぇか……俺はじゃあ東側を潰す〉
召喚者二名はそれきり無線を閉じ、目の前の戦闘に集中することにした。




