表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/3

SARU

 魔術師(マユズミ)「お、やっとメールが来たか」

 ポチ。ウィーン。

 魔術師「気持ちのいい風やな……で、どれ……害者の顔と車の車種にナンバー。ついでに〝犬ども〟の写真か。トラッキング防止だからって、開いて5秒で勝手に発火するなっちゅうに……」

 ポイ。ウィーン。

 魔術師「しっかしなんでダークウェブなんて分かりやすいところに、けったいなシロモン流すんやろなぁ、ほんまトーシロの考えることは分からんのぉ」

 蒼空(ソラ)「ダークウェブ?」

 魔術師(マユズミ)「気にせんでええ。それよりこれからはつづら折りの上り坂になっとるから、対向車に気ぃつけて運転しや」

 蒼空(ソラ)「うん」

 魔術師(マユズミ)「おっ!コインがキリ番になった!」

 蒼空(ソラ)「アスカ姉。ヅムヅムやり過ぎだよ。ストレートネックになるし、目悪くなるよ」

 魔術師(マユズミ)「なんや、どこぞのオカンのようにうっさいなぁ。ネックがストレートやなかったらそれはもう誰かにへし折られとるわ。あと、うちの視力がいくつか知っとんのか?10.0はあるで」

 蒼空(ソラ)「それってすごいの?」

 魔術師(マユズミ)「ああ、ソラはそういうの、測ったことないんか。まぁ、しゃあないな。10.0ちゅうのはな、トイレの外からでも、ソラが中でシコシコとキノコしごいとるのが分かるくらい目がいいってことや」

 蒼空(ソラ)「そっ、そんなことしてないよっ!」

 魔術師(マユズミ)「嘘こけぇ。うちの美少女ボディのボインとアワビを思い出して抜いとるやろ」

 蒼空(ソラ)「そんなことしてない!ほんとにしてないからっ!」

 魔術師(マユズミ)「まあええわ。とにかくこれから長い峠越えや。迷路みたいな尾根を登ったら目的地や」

 蒼空(ソラ)「ねぇ、どうして今回は山なの?」

 魔術師(マユズミ)「獲物が山に移動しとるからや。それと、いつもくっさい都会の空気ばかり吸ってたら気が滅入ってまうから、気分転換も兼ねとる」

 蒼空(ソラ)「そうだったんだ。こういう山だらけの場所を車で走るの、生まれて初めて」

 魔術師(マユズミ)「あとまあ、借りを返さなあかんちゅうのもあるんやけどな」

 蒼空(ソラ)「借り?」

 魔術師(マユズミ)「そうや。カリはソラのシメジみたいなチンコの一番敏感なところや」

 蒼空(ソラ)「もう!アスカ姉さっきからエッチなことばかり言って!」

 魔術師(マユズミ)「いいから運転に集中しいや。10歳でマニュアルの運転と無水カレーが作れないようじゃ、ウチの家には置いておけんからな」

 蒼空(ソラ)「大丈夫!坂道でもちゃんとクラッチつなげるし、ギアチェンジできるし、チェーンも巻けるから!」

 魔術師(マユズミ)「なら安心や。でも今は春やからチェーン巻くことはおそらくないやろ。それよかシカとかクマが飛びだしてくるかもわからんから気をつけてな」

 蒼空(ソラ)「うん。ちゃんと止まらず()き殺すから大丈夫」

 魔術師(マユズミ)「よっしゃ。じゃあ姉ちゃんは安心してヅムヅムでフルアイテムをかけるか」


 ヒンカラカラ……ホーホケキョ……ヒヨヒヨヒヨ……

 魔術師(マユズミ)「右手でしっかりと床尾(しょうび)を握る。親指を床尾の背において、ソラのほっぺをくっつける」

 蒼空(ソラ)「こう?」

 魔術師(マユズミ)「そうや。(じゅう)床尾(しょうび)をがっちりと肩に当てて、右腕と右ひじは肩に対して直角。その姿勢が二脚架(バイポット)(ふく)(しゃ)するスタイルや」

 蒼空(ソラ)「なんか、ドキドキする」

 魔術師(マユズミ)「そうか?ウチと一緒に風呂入る時の方がドキドキするやろ?」

 蒼空(ソラ)「もう、またその話」

 魔術師(マユズミ)調節(ちょうせつ)ノブを使って倍率(ばいりつ)3倍で、まず獲物(えもの)を探す」

 蒼空(ソラ)「あ、うん。……シカが見えた。全部で6匹、かな」

 魔術師(マユズミ)「よく見ぃ。茂みの奥に親子がおる。8匹や。照準器(しょうじゅんき)を調節してスコープの倍率を調整する」

 蒼空(ソラ)「………」

 魔術師(マユズミ)「倍率をアップして、今ソラが見ている上の方の2本線に標的(ひょうてき)を合わせて、下に見えてる距離表示(クオドランド)の目盛りを読んで、射程(しゃてい)距離(きょり)を把握する」

 蒼空(ソラ)「……500ヤード。ってことは、約460メートル。……大股(おおまた)460歩分」

 魔術師(マユズミ)「呼吸するたびに銃口が上下に揺れる。心臓が拍動するたびに振動する。十字線の中心はそのたびにあちこちに移動する」

 蒼空(ソラ)「うう……」


 黒「だから全部、止めるんや。仕留(しと)める時は、(さき)にこっちが()んでみせる」。


 蒼空(ソラ)「……………」

 魔術師(マユズミ)()て」

 ドンッ!

 蒼空(ソラ)「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、はあ……」

 魔術師(マユズミ)「ほお。バイタルエリアに当たっとるからまあほどなく死ぬやろ。はじめてにしては上出来や」

 蒼空(ソラ)「やった!アスカ(ねえ)()められた!」

 魔術師(マユズミ)「腹減ったやろ。お昼にするで」

 蒼空(ソラ)「今日は何?」

 魔術師(マユズミ)「ウチが高速のサービスエリアでクーラーボックスをもって降りたやろ。なんでだと思う?」

 蒼空(ソラ)「強盗?爆破テロ?臓器売買?」

 魔術師(マユズミ)「おしいな、けれどどれもちゃうで」

 蒼空(ソラ)「う~ん……あっ!もしかしてお昼ごはんを買ってくれたの!?」

 魔術師(マユズミ)「当たりや。じゃじゃーん!ウチが無水カレーの次に愛してやまないモズバーガーやで!ダブルモズチーズバーガーとダブルテリヤキバーガーがあるが、どっちがいい?」

 蒼空(ソラ)「ダブルテリヤキバーガー!!」

 魔術師(マユズミ)「ふっ、こってり味が大好きとはまだまだお子様やな。ええやろ。ウチはダブルモズチーズバーガーの方が好きやから今回は譲ったる。オニオンフライとチキンナゲット付きや」

 蒼空(ソラ)「ありがとアスカ姉!」


 ホッホウ…………ホッホウ…………

 蒼空(ソラ)「ねえ、ほんとに来るの?」

 魔術師(マユズミ)「来ないわけあるか。あの依頼(いらい)(ぬし)薔薇(ばら)ジジイがウチに嘘を言ってもなんも(とく)せん。この緑の迷宮みたいな山には死体を埋めるポイントがちゃんとあって、そこに捨てに来る連中も決まってて、そいつらはもうじき来る。そしてそれを邪魔する」

 蒼空(ソラ)「どうして邪魔するの?」

 魔術師(マユズミ)「今回のは、埋めたらあかん死体なんや」

 蒼空(ソラ)「どういうこと?」

 魔術師(マユズミ)「〝園芸(えんげい)〟を知らんたぶん素人がな、でっかい闇市(やみいち)で、売ったらいかん植物の種子(しゅし)を誤って売ってしもうた。それだけだったら事は大事(おおごと)にならんかったんやが、闇市でのし上がることしか興味のないクソ密売人が絡んだせいで例の種子の行方が分からなくなってもうた。で、見つかった時には大事(おおごと)や。そのへんのシャブと同じだと思って種子を栽培して育った葉っぱを吸ったアホが廃人以下の外道(げどう)になる」

 蒼空(ソラ)「ゲドウ?」

 魔術師(マユズミ)「詳しくはまだ知らんでええ。とにかく外道が出現して、ようやく種子の足取りが発覚。マトリ、簡単に言うと役所(やくしょ)猟犬(りょうけん)に種子の存在を知られたくない〝園芸〟のプロたちはヤクザを使い、外道を殺し、死体を外道の家に運び入れ、外道の家と葉っぱもろとも燃やす。と思ったらヤクザは肝心の外道の死体を家に運び入れなかった。全部一緒に燃やす約束をしていた〝園芸〟のプロはビックリ仰天。まぁ刑法が重くなったこのご時世、ヤクザは死体を燃やして組員をムショに送って無期(むき)懲役(ちょうえき)にするより、産業(さんぎょう)廃棄物(はいきぶつ)として山に埋めてなんもなかったことにする方が好きだってことを〝園芸〟のプロは知らんかったんやな」

 蒼空(ソラ)「ごめんなさい。アスカ姉の話、途中からちょっと難しくてわからない」

 魔術師(マユズミ)「まあええわ。とにかくそれで、ウチの出番や。家で燃やさなかった死体を、ヤクザが飼っとるチンピラどもがいつものゴミ捨て場に捨てに来る。チンピラはクマの餌にでもなんになっても構わへんが、燃やさなかった死体が問題や」

 蒼空(ソラ)「どうして〝問題〟なの?」

 魔術師(マユズミ)「外道を生む種子もしくは胞子(ほうし)が体内に残っている可能性がある。あれが勝手に発芽したらメチャクチャ面倒なことになる。せやから土には(かえ)せん。完全に破壊せなあかんのや」

 蒼空(ソラ)「じゃあアスカ姉はこの山でその死体を見つけたら燃やすの?」

 魔術師(マユズミ)「そうしたいのはやまやまやけど、〝園芸〟のプロが「もう誰も信用できへんから死体持って帰ってこい」言うてな。自分達の手でちゃんと燃やすそうや」

 蒼空(ソラ)「だったら〝これ〟も自分たちでやればいいのに」

 魔術師(マユズミ)「それをせぇへんのがプロや」

 蒼空(ソラ)「どういうこと?」

 黒「ヒトが動くとな、痕跡(こんせき)が残って(たくら)みは必ずバレる。(じゅう)を撃てば薬莢(やっきょう)が落ちるのと一緒や。だからプロは最後の最後まで動かん。動かれても自分たちが困らん奴を(こま)にしてまず動かすんや。そういうもんなんや、世の中は」

 蒼空(ソラ)「へえ」

 魔術師(マユズミ)「おっ。説教しとったらターゲットが来たな。草木も眠る(うし)()つ時。山は静かやから車の音は意外と響くなぁ」

 蒼空(ソラ)「いつ()るの?」

 魔術師(マユズミ)「車から降りて死体袋かシャベルを下ろそうとしたところで仕留める。昼間送られてきた情報によれば4人しかおらん。顔は……写真と同じ。頭の悪そうなガキどもや。DSR-1でサブソニック(だん)使えば静かに()れる。ソラは暗視(あんし)ゴーグルつけて、さっきシカを撃ったM40A1で、脳天ぶち抜かれる連中をよう見とれ。言うとくがトリガーに指かけたらあかんで」

 蒼空(ソラ)「分かった」

 ブロロロロ……チャ。ガタ。バタンッ。

 魔術師(マユズミ)「エンジン切って、降りてきよったな」

 ピョンッ!カチャンッ。カランカラン。

 蒼空(ソラ)「一人」

 ピョンッ!カチャンッ!カランカラン。

 蒼空(ソラ)「二人」

 ピョンッ!カチャンッ!カランカラン。

 蒼空(ソラ)「三人……あっ、四人目が逃げ」

 ピョンッ!

 蒼空(ソラ)「へ!?」

 魔術師(マユズミ)「動く標的(ひょうてき)を狙い撃つのは難しいが、これも()れや」

 蒼空(ソラ)「すごい……全部ヘッドショット」

 魔術師(マユズミ)「本当やったらチンピラ四人の若い臓器だけは回収して金に換えたいんやけどな。車に押し込んでプロに送り……」

 蒼空(ソラ)「あれ?」

 魔術師(マユズミ)「どした?……!」


 蒼空(ソラ)「枯れた三又(みつまた)の木の隣に、誰か、いる」。


 魔術師(マユズミ)「……なんやアイツ。雨も降っとらんのにレインポンチョ着とる」

 蒼空(ソラ)「子ども?大人?」

 魔術師(マユズミ)「分からん。しかも……妙な面を被っとる。猿のお面、か?」

 蒼空(ソラ)「こんな山の中に、こんな時間に、明かりもつけないで〝ふつう〟の人が、いるの?」

 魔術師(マユズミ)「……」

 蒼空(ソラ)「撃つの?」

 魔術師(マユズミ)「星しか出てない漆黒の新月やが、あの場所からして、殺しの現場を奴に見られとる。猿面にスターライトスコープでも仕込んどるんやろ。ポンチョの中はM16か?こらもう殺るしかない」

 カチャンッ!カランカラン。


 闇「「「「「「「ギャアッ!ギャアッ!ギャアッ!ギャアッ!ギャアッ!」」」」」」」


 二人「「!?」」

 蒼空(ソラ)「カラス?何この声!?樹の上?」

 魔術師(マユズミ)「………見失った」

 蒼空(ソラ)「え?」

 魔術師(マユズミ)「猿面が消えた」

 蒼空(ソラ)「ウソ?あれ、ほんとだ、どこにもいない!」

 魔術師(マユズミ)「……」

 蒼空(ソラ)「アスカ姉。どうするの?」

 魔術師(マユズミ)「死体袋はまだ車にある。あれだけは絶対に回収せなあかん。ウチが行く。ソラ。お前はウチの車使って先に帰れ」

 蒼空(ソラ)「えっ!?」

 魔術師(マユズミ)「来た道を戻るだけや。高速に乗って、モズバーガー買ったサービスエリアで落ち合う。ええな?」

 蒼空(ソラ)「あ、えっと、分かった!」

 魔術師(マユズミ)「はよせな」

 蒼空(ソラ)「アスカ姉!薬莢が、薬莢がどこにもないよ!」

 魔術師(マユズミ)「落ち着け。……とにかくウチは死体袋から片時も目が離せんから、ソラは周囲を警戒しながら車に向かえ。グロックのセイフティは外しとき」

 蒼空(ソラ)「分かった!気を付けてね、アスカ姉!」

 魔術師(マユズミ)「誰にモノ言うとんねん。そっちこそこんな辺鄙(へんぴ)な山で事故なんか起こしたら承知せぇへんからな」


 蒼空(ソラ)「アスカ姉!」

 魔術師(マユズミ)「おお。ちゃんと高速乗れたか。たいしたもんや。次は戦車かヘリの操縦でも教えたるわ」

 蒼空(ソラ)「うん!って、そうじゃなくて、大丈夫だった?」

 魔術師(マユズミ)「何がや?」

 蒼空(ソラ)「死体袋はちゃんと、運べたの?」

 魔術師(マユズミ)「当たり前やん。中身も確認したし、さらに車に縛り付けたわ。して、チャカをこっちの車に移したら、ウチの車はここでいったん乗り捨てて、ソラもこっちの車に乗りや」

 蒼空(ソラ)「うん」

 ブロンブロン……

 蒼空(ソラ)「あの後、また誰かを撃ったの?」

 魔術師(マユズミ)「いいや。撃っとらん」

 蒼空(ソラ)「ほんと?」

 魔術師(マユズミ)「ほんまや。ここでウチがソラに嘘ついてどうすんねん」

 蒼空(ソラ)「……あの猿のお面の人。ライトも持たないで立ってるだけで不気味だったけど、あの関係ない人まで撃っちゃって、アスカ姉が悲しんでたら嫌だなぁって思って」

 魔術師(マユズミ)「ほんまにウチは一発も撃っとらん。……関係ない人かどうかは知らんが」

 蒼空(ソラ)「え?」

 魔術師(マユズミ)「四人を撃った地点からこの車の停車位置までウチが駆けつけるのに、そう時間はかからなかった。けどな。不思議やねん」

 蒼空(ソラ)「何が?」


 魔術師(マユズミ)「撃ち殺した四人の死体が全部、消えとった」。


 蒼空「!?」

 魔術師(マユズミ)「そのかわり、見たことのない獣の毛が散らかっとったわ。あの猿面の髪の毛じゃなさそうや。オオカミでもいるんちゃうか、あの山」

 蒼空(ソラ)「オオカミ……」

 魔術師(マユズミ)「なのに獣の足跡はどこにもなくて、かわりにロードローラーでなぎ倒したような草木の一本道がある。オオカミかと思ったらまさかの大蛇かもな。しかも毛の生えた」

 蒼空(ソラ)「……」

 魔術師(マユズミ)「まあええわ。ほな行くで」


 カランカラン。


 二人「「?」」

 キィ。

 魔術師(マユズミ)「何の音や?」

 蒼空(ソラ)「後ろの座席の、フロアマットから、聞こえた気がする」

 魔術師(マユズミ)「……」

 蒼空(ソラ)「カラの、カラの薬莢(やっきょう)の音……みたいだった」

 魔術師(マユズミ)「……」

 蒼空(ソラ)「……ねぇ」

 ギギ。カチャ。バタン。ゴオオッ。

 蒼空(ソラ)「アスカ姉?」

 魔術師(マユズミ)「音の正体はコイツか」

 蒼空(ソラ)「その薬莢……」

 魔術師(マユズミ)「リムド型の真鍮(しんちゅう)薬莢(やっきょう)。7.62ミリのDSR-1のやな。しかも4つ。荷物を詰み替えた時には確かになかった。しかもこの製造(せいぞう)番号(ばんごう)……」

 蒼空(ソラ)「アスカ姉があの時四人を撃ったあと、実は自分で拾って持ってきたんでしょ?ね?」

 魔術師(マユズミ)「……」

 蒼空(ソラ)「……違うの?」

 魔術師(マユズミ)「布切れが詰まっとるな。ウチが殺した四人の服の切れはしか。なんや、血で文字が書かれとる。ドキドキするな」

 蒼空(ソラ)「……」

 魔術師(マユズミ)「MIHIに……HODIE……それとCRAS……TIBIか」

 蒼空(ソラ)「どういう意味?」

 魔術師(マユズミ)「Hodie mihi, cras tibi……オマエ、今日は無事にメシ食えるかもしれんな。でも明日は無事とは限らんで。お前がメシになるかもしれんぞ。その覚悟はできとるか?そういう意味やな」

 蒼空(ソラ)「!」

 魔術師(マユズミ)「しかも薬莢になんや、唾液にへこみ……(くちばし)で咥えた痕か?どんだけ硬い嘴やねん……どうやら〝ホンマモン〟の同業者やな。しかもドリトルときた」

 蒼空「ドリトル?」

 魔術師「うちらの業界では動物使いの殺し屋をドリトルと呼ぶ。あの山にドリトルがいるなんて情報は一度も聞いたことがなかったが、まぁええ。久しぶりにスリリングやった。斉天大聖(そんごくう)みたいな猿面ドリトルか。機会があれば本気で相手したる。それよりソラ」

 蒼空「ドリトル……」

 魔術師「おいソラ!」

 蒼空「え?」

 魔術師「今日の仕事終わったら、何が食いたい?」

 蒼空(ソラ)「アスカ姉と一緒だったら何でもいいよ」

 魔術師(マユズミ)「なんやねん、またしょうもないカワイイ答えを返しよって。なんなら薬莢でも食わせたろか」

 蒼空(ソラ)「それは嫌だよ。お姉ちゃんだって薬莢は食べないでしょ」

 魔術師(マユズミ)「せやな。……今日はあれや、久しぶりに〝寒気(さむけ)〟を覚えたから、火鍋(フオグオ)でも食うか」

 蒼空(ソラ)「うん!食べる!」

 ブロロンッ! ゴオオオオオオオ……

 魔術師(マユズミ)「……Hodie mihi, cras tibi」

 蒼空(ソラ)「えっと……「オマエ、今日は無事にメシ食えるかもしれんな。でも明日は無事とは限らんで。お前がメシになるかもしれんぞ。その覚悟はできとるか?」だよね」

 魔術師(マユズミ)「ほんまにソラは超がつくくらい記憶力がええな。……にしても、つくづくドリトルらしいなぁ」

 蒼空(ソラ)「どういうこと?」

 魔術師(マユズミ)「この言葉は元々ラテン語の格言(かくげん)やけどな、ファーブルっちゅう、昆虫大好き有名じいちゃんが食物連鎖について語るときに引用したんや」

 蒼空(ソラ)「そうなんだ」

 魔術師(マユズミ)「ファーブル並のドリトル……もし〝そんなの〟と山で戦争せなあかんと時はソラ、メシ仰山(ぎょうさん)食うただけじゃ勝てんで」

 蒼空(ソラ)「じゃあどうしたらいいの?」

 魔術師(マユズミ)「ありったけや」

 蒼空(ソラ)「?」

 魔術師(マユズミ)「7.62ミリ小銃、12.7ミリ重機関銃、25ミリ機関砲、40ミリ擲弾銃、84ミリ無反動砲、120ミリ滑空砲、128ミリ戦車砲、155ミリAGS砲、203ミリ榴弾砲、地対空ミサイル。ありったけの火力を用意して敵地ごとドリトルを粉砕する」

 蒼空(ソラ)「できるの、そんなこと?」

 魔術師(マユズミ)「さあな。やったことないから分からん。けれどそれくらい手ごわいのが山にいるドリトルっちゅうことや。そうや!日本語と英語とフランス語の勉強も兼ねて、『ドリトル先生』と『ファーブル昆虫記』を今度買うてきたる」

 蒼空(ソラ)「ありがとアスカ姉!いっぱい勉強してたくさん殺して、僕もアスカ姉みたいにいつか必ずなるから!」

 魔術師(マユズミ)「ソラはタマキンとキノコついとるからウチみたいな美少女にはなれんな」

 蒼空(ソラ)「もうアスカ姉ってば!」

 魔術師(マユズミ)「そんなことより今一番怖いのはドリトルより火鍋を食った次の日のウンコや。〝園芸〟のプロに死体と薬莢のおまけを届けて、牛乳1リットルをコンビニで買って飲んだら店に乗り込むで」。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ