クソガキを分からせよう
(要するに、このクソガキを分からせろってことでしょ?いけるいける)
見た目通りの実年齢ならばせいぜい十代半ばだろう。
(こういった天狗に乗ってそうなクソガキは単純⋯⋯って前世のアニメが言ってた)
しかし、私の立場は弱いままだ。なにか特筆したスキルがあるわけでもないし、この劣勢を覆すことには限界を感じる。
「おやぁ?どうしたの〜?シャナちゃん。答えらんないのぉ?」
「⋯⋯私の答えは決まってます」
そこで、一つ深呼吸をして気持ちを整える。
「そんなの、王宮に連れていかれる一択です!」
「は!?」
サーシャは、自分のところに来てくれると思っていたらしく、私の回答に心底驚いているようだった。
(ふっ。馬鹿め)
「ちょ、ちょっと待って!なんで!?お前処刑寸前だったんでしょ!?また行ったら同じことになるとか思わないの!?」
「まぁ、死んだら死んだで、その時はその時だし。それに、王宮には『お友達』も居るし、レレルもついてくれるだろうから。ね、レレル」
「え?うん、それはもちろんだけど、お友達って⋯⋯?」
「ないしょ。気になるならシュヴィに聞いてみたら?」
「ふふっ」
私が隅っこに居た彼に視線を向けると、なにが面白かったのか、口元に手を置いて笑いを堪えているようだった。
「おともだち⋯⋯。ふふ、彼とお友達か」
「なに?別に変なことじゃないでしょ?あんなに仲良くなったら、お友達認定でいいと思うんだよね」
ふふん、と鼻を鳴らせば、レレルは当然話が見えていないようで、首を傾げていた。横目に見たそんな彼を少し可愛いと思ったところに、激しい怒声が狭い部屋に響き渡る。
「ちょっと待ってよ!お友達だかなんだか知らないけど、王宮に居る奴は皆お前みたな奴助けたりしないって!悪いこと考えずにボクの方に来ていた方がいいんじゃな~い?ボクは、お前のことを殺したりしないし、お前が死ぬその時まで大事にしてあげる!それに、そのレレルって奴とも一緒に居させてあげる!でも、お前みたいな災いを運ぶ異世界人がまた王宮になんて戻ったら、今度は処刑どころでは済まないと思うけどぉ?それに、そいつとも離れ離れになるんじゃないかなぁ?綺麗に顔してるから、もしかしたら娼館とかに飛ばされるかもねぇ?最近はそういうのも需要あるみたいだから」
「⋯⋯ふーん」
サーシャの瞳には、焦燥の色が見える。どうやら、余程私、ではなく、異世界人が欲しいらしい。
(勝ったな)
「うーん。でもぉ、知らない人のとこについていくのは怖いっていうか~、一応私も女の子だからぁ、そういうとこには敏感になってて~」
「なんかの真似?それ」
ふざけた喋り方を、レレルの冷静な突っ込みに止められる。全く、ユーモアが足りない天使なことだ。
「こほん、まぁ、さっきのは一旦置いとくとして、正直なこと話すと、私は割と真面目に、アンタのとこに付いていくくらいなら、王宮に連れていかれる方が百億倍まし。だから、どうぞ好きに連行してくださいな、って感じ」
(確かに、ただでは済まないだろうな。でも、アンシオや予言師についても、なにか手掛かりが得られるかもしれない。ジルクも多分協力してくれるだろうし、意外となんとかなりそうな気がするんだよね~)
「⋯⋯そう。なら、意地でもお前を連れていくから!ボクの権力があれば余裕だし。おい店主!こいつ貰うから。いくら出せばいい?」
「困りますねぇ、お客様。彼女はうちの商品ではありませんよ。だって、既に僕の奴隷ですからね」
どこか嘲笑を孕んだような微笑みを、シュヴィはサーシャに向ける。サーシャは煩わしそうに舌打ちをして、テーブルを強く叩いた。
「なら今すぐ契約を破棄して!」
「いけません。奴隷契約の破棄は、王宮魔導士の方の立ち合いが無いと⋯⋯」
「おい、舐めてんの?ボクは六大魔導士の一人なんだけど?そんなボクに向かってよくそんなことが言えるね。六大魔導士の仕事には、そんな地味なものは無いとでも思ってた?」
「そうですね」
シュヴィは、いつもと変わらない様子でそう言いのけてしまう。そのにこやかな発言に、当人の眉間には皺が寄っていた。
「あっそ!悪いけど、そういう普通の魔導士がやるような仕事も、ボク達がやったりするわけ。だから、契約の破棄ならボクが立ち合ってあげる」
「それは大変有難いお申し出ですね。しかし、僕は彼女との奴隷契約の破棄を望んではいません。ですので、そのお話なら大丈夫ですよ」
「はぁ!?それ、ボクのありがた~いお誘いを断るってわけ!?ありえないんだけど」
「有り得ないと言われても⋯⋯。いくら貴方でも、同意の無い契約の破棄だなんてことは、流石に出来ないでしょう」
「そ、それは、そうだけど⋯⋯」
サーシャは、困惑を分かりやすく顔に浮かべ、なにかを深く考え込んでいる様子だった。しかし、暫くして、勢いよく顔を上げた。
「⋯⋯よし、分かった!お前、王宮に行きたいんでしょ?」
「え?」
(いや別に行きたくはないが⋯⋯?)
しかし、馬鹿正直にそう話しても、目の前のクソガキの焦りが落ち着いてしまうだけだろう。
「⋯⋯そう!目的の為に王宮に自由に行けるようになりたいの。そうしたら、別に私はアンタの下についてやってもいいかな~、なんて思ってるけどね」
「ほ、ほんと!?」
「ただし、条件付き。別にアンタの実験だかなんだかに協力してもいいけど、必ずレレルを連れていくこと。そして、私がその実験を受けるかどうかのジャッジをレレルにしてもらうこと」
「⋯⋯僕!?」
急に名前を挙げられたことに驚いたらしく、本人は大声を上げていた。
「はぁ?なんで奴隷なんかにさせるの?」
「だって、今私がこの世界で一番信頼してるのレレルだもん。だから、まずはレレルに決めてもらう。そこを通過して、私が許可したら、アンタの実験台になってあげる。どう?これなら、アンタの要望に沿ってることにならない?私は王宮に入り込めて、条件付きではあれど、アンタは異世界人を手に入れた」
「⋯⋯まぁ、それなら」
(言ったなぁ?)
私は今、この異世界征服計画の一歩を進めた。かなり偉い人を手駒にすることが出来たのは、大きなアドバンテージになることだろう。
(こいつの私への執念がある限り、どうとでもなる、いや、絶対してやる⋯⋯!!)
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(シャナ、主人の僕無しで勝手に色々決めちゃった。まぁ、いいけどね。奴隷をきつく縛りたくないし。⋯⋯あと、レレルのチェック、いる?)
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過去一とんでもねぇタイトルを付けてしまった気がします




