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人喰い天使と異世界征服計画  作者: 甘語ゆうび


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15/20

最高の布団

 ケイロンさんの話を聞いているうちに、時間はあっという間に過ぎていき、動き続けた私の体は限界を迎えていた。


「ふぁ〜⋯⋯」

「眠そうだね、シャナ」

「当たり前でしょ。今日だけでどんだけ動いたと思ってんの」

「では、今日はもうお休みになられた方がよろしいでしょうね。⋯⋯といっても、客室としてご用意出来る部屋が一部屋しかないんですけど、それでもよろしいでしょうか」


 ケイロンさんの言葉に、レレルは不快なにやけ面を浮かべて私の方へと視線を向けた。


「シャーナっ!一緒に寝よ?」


 組んできた腕を振りほどこうとするが、向こうの力が強すぎて全然抜け出せない。


「嫌に決まってんでしょ!てか離してよ!」

「シャナが『うん』って頷いてくれたら離してあげるよ」

「はぁ!?」


 拘束された状態に加えて、レレルは上目遣いで私のことを見てくる。そのあどけない瞳に負けそうになってしまう。


「い、いやいやいや!ケイロンさん、物置とか無いんですか?私そこでいいんで!」

「あるにはありますけど、暫く片付けてないので、人が寝れる場所なんてありませんよ。お疲れでしょうし、しっかりとベッドで横になって休まれた方がいいですよ」

「うっ⋯⋯」


(良心が痛い⋯⋯)


「ほらシャナ、ケイロンさんもこう言ってるし、今日は一緒に寝ようよ」

「寝ようよって⋯⋯。アンタ、なんかする気じゃないよね?」

「んー?何かって、何が?」

「それは、その〜⋯⋯」


 頭に浮かんだ言葉を口にすることが憚られて、口を噤んでしまう。


「⋯⋯そのー?」

「⋯⋯⋯⋯と、とにかく!ケイロンさんがそこまで言うなら、仕方ないから今日は一緒の部屋で寝てあげる」

「やったー!」


 私の言葉に、レレルは随分と嬉しかったらしく、その場でぴょんぴょんと飛び跳ねた。


「でも、同じベッドでは絶対に寝ないから!例え布団が無くても、私は床で寝るからね」

「そう心配されなくても、ベッドは二つ用意されているので、問題ありませんよ」

「なら良かった⋯⋯」


 ふかふかのベッドに一人で寝れるということに、安堵感を覚える。


「⋯⋯それじゃ、僕達はそろそろ上に上がろうか。シャナも眠いんでしょ?」

「当たり前でしょ。⋯⋯てなわけで、ケイロンさん、私達寝ますね。おやすみなさい」


「はい。おやすみなさい。私は、戸締りをしてから寝ることにします。お二人共、いい夢を」


 ***


 ああは言ったが、布団に潜ったら案外眠れないものだ。色んなことが頭の中に浮かぶせいで、眠気がどんどん覚めていく。


「⋯⋯⋯⋯レレル?」


「なにぃ?」


 今にも眠りそうな声が隣から聞こえてくる。どうやら私とは違って、睡魔に襲われていたらしい。


「ごめん、起こした?」

「いいよ、気にしなくても。⋯⋯眠れないの?」

「⋯⋯少し」


 私のその呟きを、くすくすと笑う声が聞こえてくる。自分が眠れそうだからってそれがなんだというんだ。


「それじゃ、少しだけ話す?」

「⋯⋯なら、シュヴィの店に行く前のことを教えて。ここの人達とは、元々知り合いだったの?」


「知り合い⋯⋯というか、拾われたというか、捕まったというか⋯⋯」

「え?な、なに?拾われた?捕まった?」


 動物に使う言葉が並べられたことに、眉をひそめてしまう。


「うん。三人目のとこのご主人様を食べた後、そろそろヤバいだろうな〜って思ったから、適当に逃げてったら、お腹が空きすぎて行き倒れちゃって」

「え!?」

「それで、そこをケイロンさんに見つかったのが最初。彼は、僕を見つけてすぐに喫茶店に連れていってくれたし、この部屋で休ませてくれたんだ」


 そう語るレレルの声は、とても穏やかなものだった。本人にとって、大事な思い出なのだろう。


「⋯⋯それじゃ、なんでシュヴィのとこに居たの?」

「⋯⋯お城から、偉い人が来たんだよ。それで、ここに迷惑は掛けられないから、ついて行くことにしたんだ。ケイロンさん達は、最後まで僕のことを庇ってくれてたけどね」

「そうなんだ⋯⋯」


「でも、行った場所がシュヴィの店で良かったよ。そんなに酷いことされなかったし。何故か知らないけど、あの人、かなり僕のことを気に入ってくれてたらしいんだよね。なんでだろ」

「レレルが好みだったんじゃない?」

「うげー。やめてよ⋯⋯」


(本当に無理そうな声出すじゃん)


「⋯⋯それより、シャナはどうなの?寝れそう?」

「いや?」


 実際、眠くなるどころかどんどん意識が覚醒してしまっている。


「そっかぁ⋯⋯。あ、いい事考えた。シャナ、少したけスペース空けてくれる?」

「は?何する気?」

「いいからいいから。きっとシャナも気に入るよ」

「だからなにを⋯⋯」


 はっきりと言わない彼に苛立ちが込み上げてしまい、咄嗟に身体を起こしてレレルの方に視線を向ける。


 ──彼のベッドには、天使が居た。


 真っ白な翼を広げて、月の光を浴びた彼は、正真正銘の天使としか言いようがない。


「それじゃあ、ベッド失礼するね」

「え?」


 私の返答も聞かず、レレルは羽を広げたまま、私のベッドへと入ってきた。


「ちょっと!?」

「シャナも横になりなよ。もふもふだよ?」

「はぁ⋯⋯」


 腑に落ちないながらも、言われた通りに横になる。


(⋯⋯確かにもふもふ)


 癪に障るが、天使の羽というのは、思ったよりも温かいらしい。その羽が最高の布団だからなのか、それとも吐息が聞こえる距離に人が居るからなのか、すぐに眠気が訪れてくる。


「⋯⋯⋯⋯」

「眠くなってきた?」

「⋯⋯少し」


「ふふ。それじゃ⋯⋯おやすみ、シャナ」

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