神様よりも
「ひっく、ひくっ⋯⋯。うぅ⋯⋯」
レレルの全裸を見てしまった私は、ミレヴァラさんに抱きしめられていた。そして、その胸の中で今も泣いている。
「よーしよし。見たくもなかったのに、急に男の人の裸を見せられるのは辛いわよねぇ」
「そんな泣くこと?シャナだって男の裸くらい見たことあるでしょ」
「んなもんあってたまるかボケェ!価値観っていうか、マナーどうなってんのアンタ!」
今は服を着ているが、ケイロンさんのシャツはレレルには少し大きかったらしく、ダボダボになってしまっている。萌え袖を顎に当てて考え込む仕草は、計算してやっているのかと疑う程あざとい。
「そうは言っても、僕まともに学を得たのシュヴィのとこ入ってからだし。それまで特殊な環境で育ってきたから、人間の基準でものを喋られても分からないよ」
「んじゃ今覚えて。恋人でもない男女が裸を見せるのはマナー違反なの!分かった!?」
「ふーん?なるほど、それじゃあ⋯⋯」
なにを思いついたのか、レレルは距離を詰めてきて、私の手を取って指を絡めてきた。
「恋人同士になったら見せてくれるの?」
「はぁ!?」
頭の中では速攻で叩いたその手を、現実では振りほどくことが出来なかった。それどころか、あらぬ想像までしてしまう。
「う、あ⋯⋯。あ、いや!なんで私が見せる前提なわけ!?絶対見せないから!」
「えー?それは残念」
「残念がるんじゃない」
沸騰した頭が冷静になってきたお陰で、私はレレルの手を抜け出すことが出来た。
「ふふ。そうだ二人とも。今日はどうする?今日はもううちで寝るでしょ?遅いし」
「そうですね。でも、その先はどうするか、まだ考えてなくて⋯⋯」
「なら、暫くはうちにいたらいいわよ」
「いいんですか!?」
ミレヴァラさんの提案に、私は身を乗り出して声を上げてしまう。今まで突き放されてばかりなせいで、久しぶりにまともな人の温もりに触れた気がする。
「えぇ。うちは問題無いわよ。ね、ケイロンさん」
「勿論。元々、レレルは私達の家族みたいなものだかね。それなら、シャナさんも家族ですよ」
「あ、ありがとうございます!正直、行くところも無かったので助かりました。それじゃ、暫くお世話になりますね」
「さて。それじゃ、今日はお祝いということで、夕御飯はカレーにしましょうか。それに、こちら側は、色貴女に話さなくてはいけないことがたくさんあるので」
「え?は、はい。分かりました⋯⋯」
***
カレー作りの間、私とレレルはミキの遊び相手を任されることとなった。しかし、元々子供の世話は得意な方ではなかったこともあり、カレーが出来上がる頃には、私はもうへとへとになってしまっていた。しかし、そんな疲労も、手作りカレーを前にすれば吹き飛ぶものらしい。
「おー!」
(生の手作りカレーだなんて久しぶり!めっちゃ美味しそー!)
前世では、引きこもりだったせいで冷えた食事ばかり食べていたせいで、こんな出来たての手作りカレーを最後に食べたのがいつだったかも思い出せない。
誰かと食卓を囲み、「いただきます」と言って手を合わせるのも、随分と久しぶりだ。温かい雰囲気が、食卓を囲んだまま、私達は食事を終えた。
そして、ミレヴァラさんがミキを寝かせにいったのを見てから、ケイロンさんが真面目な顔で話を切り出す。
「⋯⋯さて、シャナさん。貴女は、異世界から来たそですね」
「あ、はい。前世で死んで、気付いたら王宮にいて、何故か追放されて、今に至ります。まぁ、その間に、処刑宣告とか色々あったんですけど⋯⋯」
「なるほど。それじゃ、我が国の派閥については知らないですかね?」
「派閥?」
私は、ジルクの会話を辿り、派閥という言葉を探す。しかし、そんなものは見つからなった。
「⋯⋯すみません。分かりません」
「では、説明しましょう。派閥というのは、『魔法とはこうあるべきだ!』と、方針を掲げている組織のことです。一種の宗教とも言えますね。そんな組織が、町ごとに存在しているんです。市民は基本的に、その町の組織に所属していることになります。本人の意思には関係なく。まぁ、我々が居る首都は特殊で、色んな考えの者がたくさんいるんですが、うちはどこにも所属はしていません」
『我々は、どこの組織にも属していない、ただの喫茶店ですから』
ケイロンさんのその言葉が脳裏に過ぎる。どの組織にも所属していない、というのは、こういうことだったのか。
「⋯⋯なるほど。もし、所属したらどうなるですか?」
「ものによりますね。過激なものだったら、生活がまるまる変わってしまう恐れもありますし、ただ祈りを捧げるだけ、とかのものもあります」
「⋯⋯なんだか、本当に宗教みたい」
「そうですね。この国に限らず、この世界では、神より魔法が信仰されている節がありますから、そう思うのも当然のことです」
「⋯⋯そう、なんだ」
神よりも魔法が優先される世界。ファンタジー過ぎる話に夢を見ているような気分になってしまう。
(⋯⋯いっそのこと、本当に夢だったらいいのに)
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私事ですが、今日誕生日でした!20歳です!初お酒です!これからも頑張ります!いぇい!




