異世界は余所者が嫌いらしい
人生はクソだ。いつだって、上に居る者は下の者を搾取し続けている。自分の下に居るのであれば、なにをしたって誰も怒らないと思っている。そんな世界で、下にいる事しか出来ない自分が嫌いだ。嫌いで、嫌いで、いっそ死んでしまえと思っている。だから、死んだ。電車のホームから飛び降りて、たくさんの人が迷惑するだろう死に方をした。私は電車に撥ねられ、多くの人の目にその光景を記憶に残したことだろう。
私が最後に考えたのは、推しの新衣装が実装されるという、公式の投稿だった。
(シルエットだけで、イラストちゃんと見れなかったなぁ⋯⋯。まぁ、いっか)
私の体は、弾け飛んだ。
***
「予言師よ。この者が噂の転生者で間違いないのか?」
「⋯⋯えぇ、間違いありません。予言で見た通りです。あぁ、なんて恐ろしい⋯⋯」
誰かの声が聞こえる。死んでしまった私を迎えに来てくれたのだろうか。
「ん、んん⋯⋯」
どうにか身体を起こして、目を開ける。その瞬間、なにかを不気味がる周りの声が聞こえた。
「起きたぞ⋯⋯」
「あれが、予言師様の仰っていた⋯⋯」
なにかひそひそと内緒話まで聞こえてきて気味が悪い。皆、私についてなにかしら話しているようだ。
(予言師様?)
周りを見れば、ファンタジー作品にそのまま出てきそうな玉座の間が広がっていた。私は、レッドカーペットの上で気を失っていたらしい。
「転生者よ」
王様のような身なりに見える老人が、誰かを転生者と呼んでいる。
「⋯⋯⋯⋯」
「聞いておるのか!転生者よ!!」
「ううぇい!?はい!!」
自分が呼ばれているだなんて思わず、そんな突飛な反応をしてしまう。場所が広いせいで、その恥辱を部屋一帯に響かせてしまう。
(急に転生者なんて言われても反応できるわけないでしょうが⋯⋯)
「え、えっと、あの、私今起きたばっかで色々聞きたいことがたくさんあるんだけど、これは一体何事?あなた達は誰で、ここはどこなんですか?」
「私語を許した覚えは無い」
「あ、はーい⋯⋯」
(答えてくれたっていいじゃない。このケチ。てか、その義務が向こうにはあるんじゃないかって私思うんだけど)
内心文句を言いながらも、不親切な彼らの態度に不信感が募っていく。目の前の王様らしき人は私を警戒心むき出しな視線で見つめてくるし、その後ろに隠れている顔を布で隠した女性も、表情は窺えないが、私を好意的に思ってくれているようには見えない。おまけに、私を囲むようにしている一兵卒の人達も、武器を構えていたり、ひそひそと話をしていたりと、苛立ちを覚える行為をする者ばかりだ。
「転生者、お前は災いの種ということをこの予言師が予言をした」
私は、王様の後ろに隠れている女性に目を向ける。私の視線に気付いた彼女は、怯えた様子で顔を引っ込めてしまった。
「⋯⋯あ、あの、何も分からないんですけど、説明は後で聞くんで、一旦私がどうなるのかだけ教えてもらってもいいです?なに?私死ぬんですか?」
「私語を許した覚えは無いと言っただろう!その薄汚い口を一々開くな!」
「はーい⋯⋯」
随分と怒りっぽくてケチくさい王様なことだ。
「しかし、お前の疑問には答えてやろう。予言師の予言に則り、お前は⋯⋯死刑と処す!!」
「⋯⋯ん?」
今、私はなんと言われたのだろう。死刑と聞こえた気がするのだが、気のせいだろうか。
(いや、気のせいだよね。会ってそんなに経ってなくてなんの罪も犯してない哀れな転生者を死刑だなんてしないよね〜。普通、こういうのって最初は温かく迎え入れられるもんでしょ〜?最初は)
「あ、あの〜、申し訳ありません。私少々耳が遠いものでして、もしよろしければ、もう一度言っていただけないかな〜、なんて⋯⋯」
「同じことは二度も言わん」
「はいはい⋯⋯」
呆れながらもそう返事をした時、女の啜り泣く声が耳に入ってくる。その声の主は、王の後ろに居た。あの顔の見えない女だ。
(こいつはなんなんだ⋯⋯)
「ぐすっ。陛下、流石にそれは可哀想だと思います。私、女の子が死ぬところだなんて、目の前で見たくありません!」
ヒロインぶった涙目でそう訴える彼女に、王は顎に手を当てて考える仕草を見せる。
(え?嘘でしょ?王様の大事そうな決断がこんな女の言葉で揺らぐの?なに?コイツはこの国で一番偉い裏ボスだったりすんの?)
内心そう思うが、正直死を回避出来そうなことはありがたい。死んでクソみたいな世界から逃げられたというのに、また異世界で死ぬなんてごめんだ。
「ふむ⋯⋯」
「陛下、どうかお考え直しください。確かに、私の予言通りに、この子のせいで厄災は起こってしまうかもしれません。でも、私はこの世界、そしてこの国を信じています。だからきっと、厄災をも跳ね除けてくれます。今はまだその予言は見れていませんが、きっとそれも近いうちに叶います。なので、私は無理してこの子を死刑にする必要は無いと思うんです」
「予言師さん⋯⋯」
(コイツ、もしかして良い奴か?)
「⋯⋯ふむ、分かった。では、後程罰を言い渡すとしよう。⋯⋯連れて行け」
予言師の言葉に考えを変えたらしい王様は、玉座へと座り直した。予言師もそれについていって隣へと立つ。
(⋯⋯そのポジション、王様の子供とかのポジじゃないのか?)
そんなことを呑気に考えながらも、近くに待機していた女によって、厳かな扉を跨ぐことへとなった。
新作です。おもしれー女をよろしくお願いします。前作が可愛いと思えるくらい大暴れしてもらう予定です。初めましての方にも刺さったら嬉しいです。




