表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旧プロトコルの同行者  作者: 八四一 十々
第2章 秘匿管理局
23/23

第23話 総合研究所

「しくったー」


カルネアはあくび混じりの声で伸びをする。


「あそこで自己破壊するとは...あの人間に何を吹き込まれたんだか。楽しませてくれるね。」


カルネアは別室に移動する。やけに頑丈で分厚い扉。その中には、これまで盗んできた無数のコアメモリが置かれている。


「次はもっと大胆に行こう。待っててね」


手に持ったコアメモリを眺めるその顔は歪んでいた。





「おいおい、どういう事だよ...何があった」


ナユタはシエルの目を見つめ、困惑している。外見はシエルでも、近づけば、コアメモリが共鳴しない違和感に誰でも気づく。


「そうか。襲撃に...」


レントも状況を飲み込めていない。


「1番重要なのは、貴方がなぜ狙われているかよ。貴方のコアメモリは特殊でも、それだけでは暗殺を企てる動機には不十分よ。他に、もっと大きな理由があるはず。心当たりはあるの?」


カナメは大きな声でシエルに問いかける。

シエルは、自分自身が狙われる理由はとうに理解していた。あの夜、カルネア本人から聞かされた真実。正直、今すぐにも真相を吐き出してしまいたい。それほどまでの苦痛と孤独感を感じていた。でも話さない。シエルは思った。暴露する事に意味はない。ましてや、自身が真相を唯一知っている、上位者になってしまう可能性があるからだ。知らなくていい。彼女はこの先も、彼らの同行者でありたかった。


「心当たりはありません。でも、このままでは居られない。私は、カルネアを捕まえたい。協力……してくれませんか?」


一瞬の間。シエルには何倍にも長く感じた。それでも、


「当然のことをぬかすな。エンテレキアは奴を倒すためにあると言っても過言では無い。もちろん協力させてもらうよ」


普段からやる気のなさそうなナユタはいつもより真剣な口調だった。


「俺はここに来てまだ時間が経ってない。力になれるかわからないが、よろしく頼む」


レントは優しく手を伸ばす。シエルは目の前に差し出された手を見て少し安堵する。


「ありがとう」


シエルの孤独感はじんわり薄れた。


「私は反対よ。」


カナメは椅子にふんぞり返る。


「リオ、アーク、シエルが負けたのよ。エンテレキア、カゴエ地区はこの辺りじゃいちばん強い。しかもリオは全国に10人しか居ない覚醒者。こっちにも覚醒者はいるけど、現状勝機は薄いと取れるわ。そんな危険な戦いに挑みたくない」


誰もその意見に反論出来なかった。少し間を空けてからナユタが切り出す。


「焦る必要はない。確かに現状じゃあ勝ち目はないだろうな。だからこれから腕を上げる。強くなるんだ。あの3人よりも...」


ナユタは何かに気づいたようにそっとカナメの顔を覗く。


「カナメ……」


「やめて。もう忘れるから」


カナメは大人しい声を出すと、窓際に移動して明るい外を眺める。


「はあ...その通りかもね。もっと強くなれば、いずれ倒せるかもしれないしね。協力するわ」


振り返ったカナメの表情を見た3人は顔を見合った。


「何、文句でもあるの?」


カナメは睨みを利かせた。


「そんなことない。むしろありがとうって思ってるよ」


シエルは笑顔でカナメの手を取った。カナメは浮かない顔をする。


(あの子も、そんな表情をしたのかな)


そんな2人の様子をナユタはじっと見ていた。


その時だった。突然脳内にアナウンスが入り込んできた。


「コガヤシ地区、総合研究所内に不法侵入確認。付近の戦闘員は直ちに向かってください。」


4人は声一つもあげずにエンテレキアを飛び出した。それぞれが街中を飛び回る。今回の事件現場は地区内。アサリカ地区の時とは違い、すぐそこだ。

4人は建物が入り組んだ地帯に入る。人通りと街明かりは少なく、見通しが悪い。


「ついた。そこだ。」


ナユタは建物の角からそっと正面玄関を観察する。ガラス越しに内部が見えるが異常は見当たらない。


「本当にここで...」


シエルも3人に追いついて覗いてみると、あるものを発見する。


「ん、あれは...洗濯ばさみ?」


玄関手前の地面に、黄緑色の洗濯ばさみのような物が刺さっている。


「っ……!」


カナメは説明する。


「あれはノイズピンね。建物の壁や地面に刺せば、中と屋外を跨いでの共鳴が出来なくなる装置よ。磁界を発生させると言ったほうがわかりやすいかな。おそらく、中にいた職員が外部に連絡することを防いでいるんだわ」


続けてレントも話す。


「ノイズピン、聞いたことはありましたが初めて見ました。まだ黄緑色...設置してから時間が経っていませんね」


周囲を警戒しながらナユタは目を細める。


「ああそうだ。当然だが、あれは装置だ。無限に稼働しない。徐々に色は緑色から赤色へとかわり、最終的に無色になって停止する。効果範囲を広げたらその分早くエネルギー切れし、逆に狭めれば長持ちする。単純だが使い方を極めれば厄介な代物になる。」


「え、ちょっと!大丈夫なの!?」


シエルの目線の先では、カナメが堂々とノイズピンの元に歩いている。


「大丈夫よ。これは中と外で共鳴されないようにするためだけのものよ。危害はない。とはいえ、今外すと私たちが来てるのバレちゃうし、このままにしとこうか」


カナメが玄関の前に立つと、自動でドアが開く。中の明かりはついたまま。これといった異変は感じられない。


「3人とも、中に入りましょ」


カナメに続いて全員内部に潜入する。4人を出迎えたのは、二手に別れた、白くて無機質な長い廊下。


「二手に別れるか」


ナユタが切り出す。ナユタ、シエルは左通路、カナメ、レントは左通路に進む。


「今回の目的は不法侵入者の確保だ。けどここは研究所。危険なブツが多くあるから暴れ回る事は出来ない。無理はするな」


ナユタはシエルに背中を向けながら歩く。その背中を眺めながらシエルは後を追う。


「分かりました。」


シエルが答えたその時、


「誰かいるな。この感じは...」


ナユタは誰かの気配を察する。


「あの扉の向こうだな。」


シエルは扉を見ながら息を呑む。その時、ゆっくりと扉が開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ