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旧プロトコルの同行者  作者: 八四一 十々
第1章 最初の人間
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第14話 お手本の動き

シエルは急いでアークの元に駆け寄る。

しかし、進路を塞ぐようにエトスが現れた。


「なんでかな。そんな大きな声で名前を呼んで何が変わるというのさ。」


エトスは落ちている左手からミラージュブレイドを引き離し、シエルの前に立ちはだかる。


「私のことはいい。そいつを頼む」


アークは冷静に言うと、跪きながらもパトスの攻撃を跳ね返す。


(コアメモリを瓦礫の中に隠してたんよ。これなら奇襲も簡単になる。こんなトリック誰でも思いつくやろ)


パトスはアークを煽り、再び攻撃を繰り広げる。


(くそっ。1度ヒツヤで見ていたじゃないか...俺は何をしている……)


アークは冷静に繕っていたが、内心は己の不甲斐なさに少々悄げていた。


(よし、片足潰した。大きな成果だが、こいつしぶといねん。足が1本ないのにまだ動けるか...まずい、そろそろ時間だ……)


パトスは攻撃を辞めて瓦礫の方に戻ろうと走る。


「行かせねえよ」


アークは片足の力で飛び出し、一心不乱にパトスの足首を掴んだ。


(っ……離せ!)


パトスはミラージュブレイドを掲げる。

必死に抵抗して何度もアークに刃を突き刺す。それでもアークは歯を食いしばり、一向に離そうとしない。


(いい加減離れろよ……!もういい。コアメモリ抜いちまえばこっちのもんや!)


その様子を見ながらヒツヤは手を握って祈っている。


(アーク……)


パトスはアークの顔を蹴り、何とかコアメモリを抜き取ってアークの束縛から脱出した。


(やるやんけ。まあこれでおあいこやな)


パトスはうつ伏せでほとんど動かないアークを見下ろしながら呟くと、ゆっくりと瓦礫の方へ歩いていく。


(手こずった……あと、ちょっと...)


パトスは意識を失いその場に倒れた。


その頃、リオとロゴスは凄まじい戦い繰り広げていた。


「これだけ戦って成果ゼロ。心にくるね」


ロゴスは息を呑み、構える。


(くそっ、エトスとパトスはどうなった……状況が全く分からない...)


ロゴスはゆっくりエトスの方を向く。するとリオは速攻ロゴスに斬撃を繰り出す。ロゴスは間一髪のところで躱す。


「私が加勢に生かせるとでも?」


(本当に厄介だぜ...覚醒者は。)


2人は互いに攻防を繰り返し、辺りの地形が破壊されていく。その時、ヒツヤは戦況をよく観察する。


(アークと相手の一人が相打ち。あとはそれぞれ1対1をどうやって切り抜けるか。リオさんは相手の隊長とやり合ってる。攻撃速度が早すぎてとても目で追えない。対してシエルと戦っている相手の片腕は既に奪った。頑張れ、シエル!)


シエルは倒れているアークをじっと見つめる。


「大丈夫よアーク。もうコアメモリが抜かれて3分。意識はもう飛びかけてると思うけど、試合時間残り4分半...何とかしてこいつを倒すから...待ってて」


二人を眺めてエトスは楽しそうに話しかける。


「そんなに仲間のことが気になる?僕は片腕とはいえまだ立ってるよー。もう眼中に無い感じ?」


シエルは無言で立ち上がる。


「どれだけ手傷を負っていようが、あなたはまだ立っている。私はどんな相手だろうと油断しないの」


シエルは姿勢を低くし、高速でエトスに飛んでいく。


(集中しろ私、本来の目的を忘れるな。今の私じゃとてもリオに加勢できる力は無い。だから、今私に出来るのは、この男のコアメモリを奪うこと...!でも...)


シエルはアークのミラージュブレイドをエトスに向かって投げる。エトスは軽々と攻撃を止めると、目くらましのようにシエルも飛び出していた。右手を前に突き出し、一直線にエトスの胸へ飛び込んでいく。


「やっぱり近くで見たときからすごいと思ってたんだ。君、相当速いね。」


エトスも飛び出した。


シエルの刃がエトスの胸に触れる。


両者は互いに入れ違う。

二人は静止し、ただ風の音が靡いている。


するとゆっくりエトスは前に倒れた。


(体が動かない...流石に未改造の体だとこれが限界か。あーあ、ここで終了か。でも、意外と楽しかったな)


ヒツヤは観覧席で瞬きもせず手を握っていたが、ゆっくり手の力が抜けていく。


(シエルの咄嗟の判断力、アークのミラージュブレイドを活用するアイデア、凄い。私にはあんな早く判断できないな)


シエルは振り返って倒れたエトスを見下ろす。


(強かった。あなたの隊長よりも……)


その頃、リオは、


「なんだ、もう終わりか?」


リオは余裕そうに立っている。


「なんだこの生き物は……攻略方法はあるのか」


ロゴスは地べたに尻をつき、リオを見上げていた。

リオはふっと微笑んだ。


「そろそろ時間だ。コアメモリを頂くぞ」


ロゴスは為す術もなくコアメモリを奪われる。

同時に制限時間を迎えた。


「試合終了。勝者、カゴエ地区!」


場内アナウンスが響き渡った。


「残念だったなロゴス。私たちの勝ちだ」


リオはそう言ってゆっくりと立ち去る。ロゴスは唖然としながらリオの背中を見つめていた。


「おーい、みんなー」


ヒツヤが3人の元に駆けつけた。


「この声は」


アークは座ったまま振り向くと、ヒツヤが笑顔で走って来ている。


「相手凄く強かったね。でも最後にシエルのアイデアで何とか勝つことが出来たね!」


相変わらず無邪気な笑顔を見せつけるヒツヤ。


「そうだな。だがまだ試合が終わったわけじゃないからな。控え室に戻ってゆっくり休もう。」


するとシエルはヒツヤに近寄り、酔っ払いのようにもたれ掛かる。


「ごめん、私疲れちゃった。おぶってくれない?」


ヒツヤはシエルの頭に手を置き、優しく微笑んだ。

そうしてヒツヤはシエルを背中に乗せて歩く。軽く、簡単に背負うことが出来る体からは温かみを感じる。


(お疲れ様...)


そうヒツヤは心の中で呟き、控え室に向かう。

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