第13話 影から見る戦い
カゴエ地区の控え室にて。
4人は二回戦目に向けて準備していた。
「次の二回戦のメンバーだが、ヒツヤは観戦だ。」
リオはヒツヤの目を真っ直ぐに見つめる。
「わかりました。三人とも気をつけて」
ヒツヤの言葉を聞き、当然だと言わんばかりの顔で腕を組むアーク。それを見て隣で苦笑いするシエル。
三人とも準備万端のようだった。
そして、本番を迎える……
会場は熱気に包まれていた。カゴエ地区とルルクメ地区の戦いが始まろうとしている。
観客席からは歓声が響いている。
ヒツヤは観客席の隅に座り、静かに戦場を見つめていた。
(今回は出ない……でも、学ぶことはたくさんある)
心の中でそう決め、ヒツヤは双眼鏡のような視点でリングの上の3人を見つめた。カゴエ地区の3人、アーク、シエル、リオは落ち着いる様子だ。ルルクメ地区の3人は作戦を立てているように見える。
「いいかパトス、作戦通りにな」
「わかってます」
隊長ロゴスとパトスは覚悟を決めている。
「おい、エトス。聞いているのか?」
ロゴスはエトスの肩を掴む。
「聞いてますよぉ。隊長。作戦通りに、でしょ」
エトスは軽々しい態度で敬礼する。
「お前、やっぱり変だぞ」
ロゴスはエトスの不気味な笑みを不審に思った。
「そんなことないですよぉ。ほら、始まりますよっ。」
ロゴスとパトスは目を合わせる。
「それでは、第2回戦、カゴエ地区とルルクメ地区のコアメモリ奪取試合、開始!」
アナウンスが会場に響き渡ると両者は勢いよく飛び出していく。ヒツヤはルルクメ地区の動きを見て不審に思う。
(あれ、3人とも広がって動いてる。って、まさか...)
すると3人は、片っ端から全ての遮蔽物を壊して回る。会場には凄まじい破壊音が響く。
「おいおい何だこの音は。あいつらまさか遮蔽物を……!」
アークは驚いた顔をしてシエルの方を見た。するとリオも口を開く。
「確かに去年のことを思い出してみれば、彼らからしたらこれは最善手かもな。この行動はどう考えてもシエル対策だ。」
「そうか。最後シエルがコアメモリを持って逃げ切り勝ちをしたんだ。シエルを捕らえるのは至難の業。向こうはちゃんと考えてる」
するとシエルは遮蔽物が壊れる轟音を聴きながら少し微笑む。
「私には有効かもね。でも、そのおかげでアークが暴れやすくなるんじゃない?」
アークに視線を移すと、既に誇らしげな表情をしていた。
「ああそうだ。今それを言おうとしてたんだ」
そう言うとアークは走り出した。
一方その頃、ルルクメ地区はーーー
「おいおいこれやっぱやりすぎなんちゃう?」
パトスはロゴスに心配の声を漏らす。
「やりすぎなくらいが丁度いい。全力で叩き潰しに行くぞ」
「ねぇ、こんな回りくどいことしないでさぁ。早く戦いたいよー」
エトスがため息をつくように声を上げ、面倒くさそうな顔をする。
「エトス。これは戦略だ。協力しよう。」
「あーそうだったね。そんなに焦りすぎる必要は無いか。にしても残念だなー。あの子は今回休みだなんて」
エトスは観客席を眺める。
「止まれ!シエル、アーク。奴らすぐそこまで迫ってきてる」
遮蔽物の奥から轟音が近づいてきている事を感じ、リオは声を張った。すると突然煙の向こうからエトスが飛び出した。
それはシエルに向かっていた。
「まずは1人目ー!」
エトスは笑いながら突っ込んだ。シエルは咄嗟にミラージュブレイドを取り出し刃を受け流す。
キリキリと音を立てながら刃が擦れる。
「シエル、飛べ!」
アークが叫ぶ。
シエルは空高く飛び上がる。
「空中じゃあ攻撃、交わせないんじゃない?」
エトスが上を向いた瞬間、斬撃がエトスを襲う。
「おっと」
エトスはミラージュブレイドで咄嗟に守る。
「面白い。斬撃が伸びた!」
笑いながらゆっくりとアークの方を向く。アークはミラージュブレイドを強く握りしめる。
持ち手から青白い稲光が走っている。
アークは飛び出し、もう一度刃を振り払った。
すると、刃先から閃光が勢いよく伸びる。
「へぇー面白いね。大体30cmくらいかな。伸びる斬撃、初めて見るよ。ほら隊長さーん。こいつの胴体がら空きだから攻撃するなら今だよー」
すると背後にロゴスが刃を向けて迫っていた。
しかし次の瞬間、リオが突然目の前から消える。
「遅い。怖くて目を瞑っちゃったかな?」
居ないはずの背後から嘲笑うような声。
(ちっ、バケモンかよ)
ロゴスは距離をとる。
(今日も始まった……隊長の高性能な煽り)
アークは横目でリオを見ながらそう思う。
「向こうの隊長は私が相手をする。」
リオは刃をロゴスに向けて微笑む。
「助かったリオ。隊長はそっちに任せる。このテンションが高いの俺たちに任せてくれ。シエル、そっちは大丈夫か?」
アークはエトスを警戒しながらシエルとコンタクトをとる。
「ええ、問題ないわ。それより、一人がずっと瓦礫の中に隠れてるわ。常に警戒して」
シエルが瓦礫に刃を向ける。
「了解。さっさとこいつに蹴りをつけるぞ」
アークはミラージュブレイドに力を込めて攻撃を仕掛ける。
「スパークレイド!」
その姿はカマキリのようだった。
エトスは伸びた光を切ろうとするも、刃は貫通して切れない。
「なるほど。実体はないわけね...でも伸びた斬撃に触れたら簡単に体が切断してしまうだろう。はぁこれは厄介だ」
シエルは後ろからエトスの首を目掛けてミラージュブレイドを振るった。
エトスは振り向きもせず、ミラージュブレイドを後ろに構えて斬撃を止めた。
「防がれた……」
シエルは急いで距離をとる。
エトスはシエルの方を見向きもせず、再びアークの元へ駆け出す。
アークは攻撃を繰り広げる。
「おっと」
エトスは攻撃を躱しきれず、左腕が切断される。
「あーあ、まずいね。でも悪くない」
その時、観客席にいるヒツヤは戦いを見て不審に思っていた。
(アーク、気づいてっ!)
ニヤリとするとエトスは右手のミラージュブレイドをアークに向かって投げた。
「単純な投げ攻撃...」
金属がぶつかる音。
すぐにアークは簡単に攻撃を跳ね除ける。
その瞬間、突然アークの視線が傾く。
「なにっ……!」
アークの左足が切断されていた。切断面から金属部品が飛び出し、ビリビリと火花が散っている。
「油断してましたね」
そこにはパトスが立っていた。
彼は瓦礫の中にコアメモリを隠し、背後から奇襲したのだ。
「どういうことだ...これはまるで、あの時と同じじゃないか……」
アークは訓練場での出来事を思い出し、その場に跪く。
「アーク!」




