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後宮怪談  作者: やなぎ怜
6/10

死体

 ……幽霊の死体って見たことある?


 え? 幽霊はもう死んでるし、実体がないものなんだから死体なんてないって?


 まあそうだけどさ。


 けど、それは幽霊の死体としか表現できないものだったんだってさ。


 俺のひいばあちゃんの話なんだけど。



 「宮殿の白い男」の伝説は知ってる?


 白人っていう意味じゃなくて、そいつは煙みたいに全身真っ白で、半透明な幽霊らしい幽霊だったらしいよ。


 ときどき、宮殿の屋根の上に現れて、手を振ってくる。


 それに手を振り返すといいことがある……っていう話。



 宮殿の白い男の伝説がいつ生まれたのかはわかってないらしいんだけど、相当古くからある話らしい。


 男の正体も説がありすぎてよくわかんないとか。


 まあ、幽霊って時点でよくわかんない存在だけどさ。


 正体はよくわかんないけど、見ても不幸にならないし、手を振り返すといいことがあるから、むしろ幸運の象徴として扱われていたって。


 曰く、王家の守護者だとか。


 ……まあその王家もなくなって何十年と経ってるし、その宮殿は残ってるけど、白い男の目撃証言は絶えて久しい。


 ひいばあちゃんは、白い男の最期を見たって言ってる。


 それが幽霊の死体の話に繋がるんだけど。



 避雷針ってあるじゃん?


 宮殿にも当然あったその避雷針に、こうぐさっと、串刺しになった状態の白い男が、あるときを境に目撃されるようになったって。


 避雷針に串刺しになった……された? 白い男はもうこちらに手を振ってくることもなくて、ぴくりとも動かなかったらしい。


 そう、死体みたいに。


 だから、ひいばあちゃんは死ぬまで「幽霊の死体を見た」って言ってた。



 白い男がなんで串刺し状態になったのかは、さすがにひいばあちゃんもわかんないって言ってた。


 ただ、そのころから後宮では色んな怖いことが立て続けに起こったから、それが原因なんじゃ? とは言ってたなあ。


 ある妃が飼ってた犬が木のてっぺんで串刺しにされたあとの話とも言ってたけど、白い男が串刺しになったこととなんか関係あるのかな?



 ひいばあちゃんは死ぬまで後宮があったところには近づきたがらなかったよ。


 「あそこは怖い場所だった」って言って。


 いい思い出がないから近づきたくないんだって言ってた。


 ……まあ「最後のアルセル王」が亡くなってからは大変だったって、ひいばあちゃん、思い出すたびに言ってたからなあ。


 「最後のアルセル王」がああいう死に方をしてからも、しばらく後宮で働いてたって言ってたから、きっと色々大変だったんだと思う。



 それで王朝も途絶えたわけだけど……王家の守護者たる白い男が死んだから、王家も滅んだと思う?


 あるいは王朝が滅びる運命ゆえに、白い男は死んだのか……。



 ひいばあちゃんは、「白い男を殺したやつがいる」って言ってたな。


 なんか後宮で働いていたひとにしかわかんない、心当たりとかあったのかな?


 うーん、ひいばあちゃんが生きてるうちにもっと話を聞いておけばよかったなあ。

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