表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛と苦悩   作者: JohnSmith
2/2

儚い出会いのバラード

毎日が変わり映えせず、退屈で仕方がない。時々、自分は何をしても満足できない存在なのではないかと思う。奇妙なことに、目立たないように振る舞っているのに、心の奥底では目立ちたいとも思っているのだ。


愛というものを経験できれば、今よりもっと人間らしく感じられるのだろうか。もっとも、恋愛に関しては全く経験がないので、アロンソに聞いてみることにした。若いのに意外と長い恋愛経験を持つ彼なら、愛とは何かを教えてくれるかもしれない。


彼に近づいて、質問してみることにした。


アドリアン:「アロンソ、ちょっと聞きたいことがあるんだ。」


アロンソ:「何を聞きたいんだ?」


アドリアン:「簡単なことだよ。」


アロンソ:「言ってみろよ、回りくどいことはなしだ。」


アドリアン:「えっと…君は愛するってどういう感覚か知ってる?」


アロンソ:「変な質問だな。まあ、簡単に言えば、誰かを見て好きだと感じる、それが愛なんだよ。」


アドリアン:「正直に言うと、その『感じる』っていうのがよくわからない。もっと具体的な説明が欲しいんだ。」


アロンソ:「うーん、俺はあまり詳しく説明するのは得意じゃないな。感じるしかないんだよ。それか、他の誰かに聞いてみたら?」


アドリアン:「今、誰かに対してそんな感情を抱いているの?」


アロンソ:「もちろんだよ。今でもドロレスを愛してるんだ。彼女を初めて見た瞬間からずっと、もう2年くらいになるかな。」


アドリアン:「ドロレスって誰だ?」


アロンソ:「お前の目の前にいる女の子だよ、バカ野郎。何ヶ月もここにいるのに、どうしてクラスメートの名前も覚えてないんだ?」


アドリアン:「さあね、あんまり気にしてないんだろう。」


アドリアン:「それで、なんで彼女を愛してるんだ?」


アロンソ:「わからないよ。もし理由がわかっていたら、こんなに夢中になってないかもしれない。」


アドリアン:「彼女は他の女の子と同じように見えるけど、なんで誰かが彼女を愛するのか理解できない。」


アロンソ:「何言ってんだ。彼女は美しいよ。白い肌、茶色の目、茶髪、かわいい声、そしてその魅惑的で謎めいたまなざし。彼女は俺が知る中で一番美しい人だ。」


アドリアン:「正直、君の言ってることが理解できない。美しさなんて、ただ見た目が整ってるだけじゃないか。どうしてそれが感情を揺さぶるんだ?それって空っぽの概念にしか思えないよ。君がその人を見ただけで理性を失うなんて、僕には理解できない。」


アロンソ:「えっと…この話はもうやめようぜ。」


アドリアン:「でも、君の言うことが全く理解できないんだ。もし見た目だけが理由なら、モデルを見た時や通りすがりの人に恋しないのはなぜだ?彼女に何か特別なものがあるのか?」


アロンソ:「もしかしたら、君が僕のことを理解できないのは、愛を経験してないからだよ。愛は理由を見つけることじゃなくて、感覚を経験することなんだ。」


アドリアン:「君の気持ちを理解する日は来ない気がする。」


アロンソ:「愛について君は迷子なんだろうな。でも、いつか僕が感じているこの喜びを君も感じられる日が来るといいな。」


翌日、天気はあまり変わっていなかった。寒さはまだ続いていたが、私はその感覚に慣れてきていた。それはまるで私の感情状態を反映しているようで、無関心で、大きな期待もなく、淡々とした日々を過ごしている感じだった。


いつものように早めに教室に着き、いつもの場所に座った。後ろの方で、誰の注意も引かない位置だ。すべてがいつも通りに進んでいるかのように思えたが、突然、ドローレスが私の机に近づいてきた。


ドローレス:「こんにちは、アドリアン。ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」


その声は気軽なものでしたが、彼女の目には何か私を驚かせるものがありました。これまで彼女と直接話をした記憶はなく、それがこの瞬間をさらに奇妙なものにしていました。


アドリアン:「もちろん、何でも聞いて。」


ドローレス:「昨日、アロンソと話してたよね。ごめん、聞こえちゃったんだけど、隣にいたから仕方なく。私の名前が出てきたの、何の話をしてたの?」


アドリアン:「別に大したことじゃないよ。ちょっとした雑談だよ。知ってるだろう、アロンソはいつも何か訳の分からないことを話してるから。」


ドローレスは微笑んだ。その表情は、アロンソが彼女を熱烈に語ったときに私が想像したものとは違っていた。彼が話すような「謎めいた」美しさは見えなかったが、彼女には何か惹かれるものがあった。


ドローレス:「そうね、彼って物事を独特な見方で捉えるよね。」


彼女の言葉はほとんど無関心で、ただの知人について話しているかのようだった。アロンソの気持ちにドローレスが応えていないようで、私はそれが興味深かった。彼女は彼が何を感じているのか知っているのだろうか。


アドリアン:「アロンソのこと、どう思う?」


彼女は一瞬考え込んでから答えた。


ドローレス:「あなたって話題を変えるのが上手ね。アロンソはいい人だと思うわ、でも時々少し…情熱的すぎるかな。」


アドリアン:「そうだね、彼は何でも深刻に受け止めすぎるところがあるよね。」


ドローレス:「まさにそう。」


少し気まずい沈黙が流れた。彼女は何か深く考えているかのように目をそらしていた。私は話を続けるべきか、それともここで終わりにするべきか迷った。


アドリアン:「愛についてはどう思う?」


その質問は考えなしに口から出てしまった。昨日の会話から頭の中にずっとあったもので、彼女の意見を聞きたくなった。彼女はアロンソの人生に無意識のうちに影響を与えているようだったから。


彼女は驚いたように私を見た。


ドローレス:「あら…そんな質問が来るとは思わなかったわ。どうしてそんなことを聞くの?」


アドリアン:「ただの好奇心だよ。昨日アロンソが愛についてたくさん話していたからさ。それに、みんなそれぞれ違う考えを持ってるみたいだし。」


ドローレス:「まあ、愛は複雑よね。それぞれが自分なりに体験するものだと思うわ。」


アドリアン:「君は愛を感じたことがあるの?」


彼女は軽く笑ったが、それは嘲笑ではなく、むしろ安堵のようなものだった。


ドローレス:「どうかしら。時々そう思うこともあるけど、他の時はただの幻想のように感じることもあるわ。映画や音楽で見たり聞いたりして、それを感じていると思い込むだけかも。」


彼女の答えは私を考えさせた。愛が現実のものではなく、頭の中で作り上げたものかもしれないとは、これまで考えたことがなかった。


アドリアン:「確かに、それも一理あるね。」


ドローレス:「それで、あなたはどうなの?愛を感じたことはある?」


私は沈黙した。愛という概念が自分にとってどれほど遠いものか正直に認めたくなかった。


アドリアン:「分からないな。たぶん、ないと思う。」


彼女は私を不思議そうに、そして好奇心いっぱいの目で見つめた。


ドローレス:「じゃあまず、あなたにとって愛が何かを定義するところから始めるといいわ。もしかしたら、すでに感じているのに気づいていないだけかも。」


その後、彼女は元の席に戻った。短い会話ではあったが、彼女の言葉には何か深い意味が隠れているようで、私にはそれを完全には理解できなかった。まるで彼女もまた、自分自身の愛に対する考えに迷っているかのようだった。


授業が続く中、私の頭の中では彼女との会話が何度も繰り返されていた。もしかしたら、アロンソが言ったように、彼女には見た目ではわからない何かがあるのかもしれない。それは待っているだけで、発見されるのを待っているのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ