第79話 整備
前日はトラックの整備を行ったが、今日はレーシングカートの整備であるが、これはタイヤ交換だけでどうにかなりそうだった。
庭で整備を行っていると、ルノが様子を見にやって来た。
「ご主人さま、調子は如何ですか?」
甘えるように後ろから抱き着いて来た。
「大魔法使いのご主人さま、魔導ガンは如何ですか」
「魔導ガンの改良はまだ先になるかなぁ。これの整備が終わったら取り掛かる予定だよ」
「了解です! 楽しみに待つことにします。それで、私にも手伝えることはありませすか?」
「今晩手伝ってくれると助かるかな」
「精一杯ご奉仕させていただきますね!」
何故か喜んだ顔してルノは家の方へ向かっていった。俺はレーシングカートと整備が終わったトラックをストレージの中へ仕舞って家の中に戻ったルノを呼びに行った。
「どうしたんですか? ご主人さま」
「これからジョアンさんの屋敷に行く。カミュはマリーに付き添あわせる必要があるから、ルノは俺と一緒にお出かけだ」
何故かガッツポーズをするルノ。
「ですが、姫様は大丈夫でしょうか?」
「刺激が強かったのは確かだけど、あれは慣れるしかないだろ」
「あれが魔物ってやつですからね。ご主人さまが言うように慣れるしかありませんよね」
頷きながらルノは俺の手を握ったので、そのままテレポートの魔法でジョアンの屋敷へとやってきて、屋敷の扉をノックする。すると、屈強な男が扉を開けてくれた。
「今日はどの用事だ」
屈強な男が言ってきた。俺は車の整備が完了したことを伝えると、そこで待つようにと言われた。
しばらくしてジョアンが奥からやってきた。
「おうぅ! シノミヤ様、お仕事が早いですぅ」
どこら辺に車を置けばよいのか聞いて車をストレージか取り出すと、ジョアンは嬉しそうにして屈強な男に状態を確認させる。
自分がいつも乗っているのかジョアンがレーシングカートをチェックし始める。屈強な男はトラックに異常がないことをジョアンに説明した。
「さっすがシノミヤ様、珍しい鉱石をお使いになられている。ガラスの代わりにクリスタルを使用しておられますね!」
「さすがに目が肥えているな。割れそうな場所は全てクリスタルに変更している。あとはバンパーをミスリルに変えてある。できればタックルなんてしてもらいたくはないが、そう簡単にはいかないと思った。あとはタイヤを新品に変えたくらいだ」
俺の説明に頷くジョアンと屈強な男。
俺が用意した受領書にジョアンがサインをして、金貨一千枚が入った箱を受け取るとジョアンは自分の商品を見てほしいと言ってきたが、これは次回という話で俺たちはテレポートの魔法で家に戻った。
家に戻ると庭でカミュとマリーが剣の稽古をしていた。体を動かすことで乗り越えようとしているのかもしれない。
マリーが俺たちに気が付いて稽古を中止して駆け寄ってきた。
「師匠、どこへ行っていたんですか?」
マリーの質問に答えると、マリーはギルドの依頼を受けないのかと聞いてきた。別に依頼を受けないつもりはないが、今は受ける必要もない。それよりも鉱石がだいぶ少なくなってきたのでそちらの回収へ行きたい。
鉱石の回収へ行きたいことを伝えるとマリーは新たな装備を作ることを約束してほしいと言ってきた。
「そりゃ構わないが、新たな色々な素材が必要になるから素材集めとかも必要になるぞ」
「構いません、今よりも強くなれるのなら!」
精神的に強くならなければ意味がないが、それを言ったところで理解するのは難しいだろう。
だが、強さを求めるのならそれに付き合ってやるのも師匠の役目かもしれない。
カミュたちを連れて再び採掘場へ向かい、採掘を始める。数日かけて鉄、銅、ミスリル、プラチナ、鋼、クリスタル、オリハルコン、金、銀などたくさんの素材を手に入れたが、高級な生地や小さな結晶など特殊な素材は海外に行かなければ手に入らない。
今は国内にある物で何かを作るしかないだろうが、武器に関しては国内が世界最強だが、素材は世界に散らばっているので海外へ行かないと最強の武器を作ることができない。
それからしばらくは魔導ガンの改良に取り掛かった。外装はオリハルコンだと重すぎるが、魔導力の伝導率を考えるとミスリルだけで作ると良いのだが耐久性が弱くなってしまう。ふつうの防御力で考えるとミスリルと何かを組み合わせるのが一番良い。そこでプラチナを部品として使用することで伝導率を上げることをできる。オリハルコンにプラチナを使い、魔石を砕いてミスリルと合成させることで魔導力の伝動装置を作りあげる。あとはスナイパーライフルの要領で組み上げていく。
出来上がったスナイパーライフルを試し撃ちをするだけだ。
試し撃ちをするために何かしらの依頼を受けた方が良いと思ったのでシンジュクの町へ行き冒険者ギルドへ足を運んだ。前に来たときはギルドマスターが死んだとかでギルド内が騒がしかったが、ラインハルトのオッサンが戻って来たのかギルドは落ち着きが取り戻されていた。
「やぁ、キョースケ!」
声をかけてきたのはアーノルドだった。
「よう、アーノルド。調子はどうだ?」
「問題ないよ。僕たちもメタルプレートになったんだよ」
マリアンヌとセリナも後ろにいた。どうやらまだ仲間を続けているようだ。
「じゃあ、またね」
そう言ってアーノルドたちは何処か自信ありげに俺たちの前から去っていった。なにか自信が付くことがあったのだろうか。
それから俺たちは適当な依頼を探していると、後ろから声をかけられた。
「お前、シンジュクの町にいたのか!」
その声に振り向いてみるとラインハルトのオッサンが驚いた顔して立っていた。
「ちっ……。オッサンかよ。俺たちはシンジュクの町に住んではいねーよ。スギナミ洞窟の近くにある森で暮らしてるんだ。あんた等に縛られたくなくてね」
「トウキョウのギルドでは大変だったんだぞ! お前らが突然いなくなったって……」
「そりゃ俺たちが悪いわけじゃなくてそっちが悪いだけの話だ」
これ以上話てもお互いのためにならないと思ったのか、オッサンは話題を変えた。
「これからのギルドは仕事の斡旋だけをしていくだけじゃだめだと王都で学んでな、引退した冒険者を雇い新人の育成を行うことになったんだ」
そりゃ良い話だ。この間みたいな件が減るのであれば砦に人員を回せるようになるだろうし、安全な冒険ライフを送れるだろう。
「そこでな、お前にも協力をお願いしたい」
「断る。それでもなく、こちらにはマリーがいるんだ。これ以上の厄介は持ち込まないでもらいたい」
「分かってる。姫様にゃ王都への帰還命令が出ているんだ」
その言葉を聞いてマリーは驚いた声を上げる。そりゃ驚くかもしれないが、一国の王女様が行方知れずになっている方が問題だ。
しかし、マリーが頷くかどうかは俺には知らんがね。
「嫌よ! 私はまだ世界を見て回ってないわ」
ほらね。案の定、そう言うと思った。
「しかしですね、陛下から戻るようにとお達しが出ているんです」
「諦めろよマリー。落ち着いたらまた冒険に出れば良いさ。お前はこの国の王女なんだから諦めろ」
「し、師匠まで! クッ!」
俺が指を鳴らすと、ルノとカミュの二人がマリーを取り押さえるてギルドの人たちに引き渡す。
「お前のことだから引き渡さないかもって思ったが……」
「いい加減連れ回していたら外交問題になっちまうだろ」
そう言うとラインハルトのオッサンは苦笑いをしたのだった。




