第72話 トラック
ジョアンの屋敷に到着して荷車を車から外すと、屋敷の中から屈強な男が出てきて荷車に乗っていた奴隷たちを連れて行く。
俺たちは早々にジョアンに別れを告げるのだが、ジョアンは必ず戻ってきたら屋敷へ来るようにと念をおしてきた。逆らうと面倒くさいので適当に返事をした。
ネリマ山にマリーやグレイスを連れて行くのは無謀なため、先ずは二人にオークの討伐に行ってもらうことにした。一応、何かあられても困るため、ルノとカミュの二人をお供に連れて行かせる。
その間に俺はネリマ山へテレポートして桜蜘蛛の糸を入手することにした。
桜蜘蛛は集団で行動してくるのでかなり厄介であり、ボスであるチェリースパイダーは魔法も使ってくる厄介な存在である。マリーやグレイスがそんな奴らを相手にすることなんてできるはずがない。
ましてやルノやカミュだって相手にできない奴らなので問題外なのだ。
俺には隠密スキルがあるのでドラゴンが寝ている横で採掘作業もできるし、チェリースパイダーなんて楽勝だ。正直、一人のほうが行動しやすいのである。
桜蜘蛛の糸を大量に入手するには意味がある。桜蜘蛛の糸は『桜の糸』となり、魔法耐性に強くなるのである。また、普通の糸よりも強度が高くて防御力にも優れているし、桜蜘蛛の内臓は万能薬の素材にもなる。だが、その桜蜘蛛はレベル100を超えていないと倒すことが難しいと言われているのと、奴らの牙には猛毒が仕込まれている。
そんな危ない相手に彼女ら四人が対応できるのかと言われても難しいだろう。そう思っているうちに現れるのがチェリースパイダーである。
チェリースパイダーの上半身は人のような格好をしていて話が通じそうだと思われるが、まったく話は通じることはない。こんな奴はさっさと倒して素材に変えてしまうのが一番である。
夕方になるまでに桜の糸を大量にゲットして、俺はシンジュクの町へテレポートした。
町へ戻り宿屋に向かったのだが、まだみんなは戻ってきていない。みんなに何かあったかもしれないので冒険者ギルドへ寄ってみたところ、四人と出くわした。
「あ、ご主人さま!」
俺に気が付いたルノが飛び付いてきた。
「お疲れ、お前たちは大丈夫だったか?」
「大丈夫でした! ですが、姫様たちはそれどころではなかったです」
意味がわからないが、取り敢えずギルドに併設されている酒場へ行き話を聞くことにした。
久し振りに来たシンジュクのギルドは騒々しく、活気に満ち溢れているようにみえた。
「それで、それどころではなかったとは?」
四人に聞くとルノが元気よく報告してくれる。
俺が山へ糸取りに行っている間、四人はオーク討伐に行っていたのだが最初はゴブリンしか出てこなかったらしい。ゴブリン程度なら二人で余裕になってきていた。それからしばらくしてようやくオークと対戦することができた。
グレイスは盾役として体をはろうとしたがオークの力を見誤っていたらしく、盾を破壊されてしまった。攻撃に関してもオークの素早さを舐めていたマリーはいとも容易く躱されていたらしい。
一匹倒すのに二人は満身創痍となってしまったらしい。
「それで結局、残り三匹は私とカミュが倒したんですよ」
「なるほどね。初めてのオークは大苦戦していたということか」
ルノの話に項垂れる二人。相当手古摺ったのだろう。
「その実力で死の森へ行くというのか?」
「面目ありません……」
顔を上げずにマリーが言う。
取り敢えず明日も訓練代わりにオークの討伐へ行ってもらおう。食事を終わらせて宿屋へ戻り休むことにした。
翌日になり四人は再びオークの討伐へ出かけさせ、俺はジョアンの屋敷と言うか商館へと向かった。
商館にたどり着きいつものようにノックすると、屈強な男が出てきてジョアンのいる部屋へ案内される。
「おぉシノミヤ様! よくぞお越しくださいましたぁ」
「どうも、ジョアンさん」
「こちらは先日の護衛依頼料ですぅ。はい」
そう言って金貨五枚をテーブルの上に置く。前みたいに奴隷を渡されるのかと思っていただけに、少し拍子抜けである。
「ところでぇ……。あの不思議な乗り物ですがぁ……お譲り頂けないでしょうかぁ」
「車か? あれは売り物じゃないよ」
「そこを何とか……」
「整備とかできないでしょ? タイヤはゴムだけどフレームなどはオリハルコンを使って、外装はプラチナだ。売るにしても金貨一千万枚でも足りないくらいだ」
「オリハルコンとな! プラチナとな! そんな物をふんだんに使われていると言うのですか!」
「鉄で良ければ作ってやっても構わねーけど、金貨一千枚でどうだ?」
「是非是非!」
出来上がってからお金をもらうことにして、ジョアンの屋敷を後にして俺はテレポートを使ってトウキョウ都の家に戻り車作り始めた。
フレームの素材は鉄で外装はアルミ。タイヤはゴムだと修理ができないのでキャタピラにしよう。
ジョアンのことだから荷馬車のように使いたいはずだからトラックタイプにして荷台は幌ではなくてコンテナタイプにした方が良いだろう。
図面を作成し終えて作り始めるのに半日が過ぎたころ、お腹が空いてきたのでラーメンを作ってみた。久し振りのラーメンは懐かしい味がして涙が出そうになる。ルノたちは無事なのだろうか、少し心配だ。
食事を終えたあとは再び車作りに作業を移す。
キャタピラにしてみたは良いが、音がかなりうるさい。タイヤにしても何かあった場合交換ができず、鉄タイヤだと削れてしまうためどうしようか悩んでしまう。
多少サービスしてやろうと思いタイヤはオリハルコンを使ってみるが、今度は車軸がもたないのでやはりダンプ用のタイヤにして横からの攻撃を防ぐシールドを取り付けよう。
そんなことを考えながら作っていたら、辺りはすでに真っ暗になっていて、俺は慌ててシンジュクの町へテレポートして宿屋へ向かうと、宿屋の前にはルノたちが心配そうな顔して立っていた。
「悪い、ちょっと夢中になりすぎた」
声をかけると四人は安心した表情を浮かべたあと直ぐに怒った顔をした。
「何処へ行っていたんですか! 心配したじゃないですか!」
事情を説明するが四人が納得するはずがない。物凄く怒られた。
翌日もオーク討伐へ行ってもらおうとしたのだが、今日みたいなことがあったら嫌だとルノが言い出すとマリーもそれに同意しやがった。
取り敢えず何を作っているのかを知りたいと四人が言うのでテレポートを使ってトウキョウ都にある自宅へやって来た。
外には作りかけのトラックがあり全員は驚きの声を上げる。初めて見るトラックだから当たり前だろう。
「ジョアンさんに依頼されたから作ってるんだよ。触るなよ金貨にしたら一千枚じゃすまないぞ」
触ろうとしていた四人に金額を言うと驚いた声を上げる。
「せ、千枚!!」
唖然とするグレイス。
「これでもサービス価格だ。本当ならもっと高いだろう。俺は仕上げを行うからお前らは中に入ってろ」
そう言うとマリー達は「晩御飯がまだなんです」と言ってきたので、俺は昼間に食べたラーメンを作ってやった。
ラーメンを食べると握り飯が食べたくなる。
晩飯を食べたら眠くなってきたのでトラックはストレージに仕舞い今日は休むことにした。




