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第70話 騎士爵

 突然の卒業通告。

 なんというか、元冒険者の教員たちは俺に教えることが無いという理由から卒業を言い渡されたのだ。

 それもそのはず、剣の稽古では教員を何度も打ち負かしてしまっており、魔法の訓練では無詠唱で魔法を発動させてしまう。学科の授業に関しても俺の方が知識はあるので間違いを訂正してしまうぐらいなのだ。

 仲間だったカミュやルノ、マリーにグレイスも一緒に卒業となった。グレイスには申し訳ないことをしてしまった。

 グレイスは伯爵家の三男で家の跡を継ぐことができないので、このまま冒険者として生活をしていくとのことらしい。だが、ブロンズプレートだとそこまで稼ぐことができないし、そのまま俺の仲間となることを決めたようだ。俺としてはマリーのほかに護衛対象が増えてしまったことに苛立ちを覚えるが、彼を卒業させてしまったのは俺の責任がある。

 仕方がないから不動産屋へ行き新しい家を買うことにした。

 家選びはマリーに任せると、貴族街に屋敷を購入しやがった。

 グレイスも住むことになるのだが、それを不満に思っている奴が二人いた。


「ご主人さま、本当に一緒に暮らすんですか? 姫様は仕方ないですけど……」


「私としては反対っスよ」


 ルノとカミュの二人だ。二人は時折俺に奉仕をしてくれている。


「仕方がないだろ。俺が原因でグレイスは学校を卒業させられちまったんだから」


 むくれる二人を放っておいて俺は家の改良を始めることにしたら、ルノたちも文句を言いながら手伝ってくれる。

 前の家のように魔石を使った給湯器からキッチンやトイレまで改良しまくった。驚くグレイスだったが、なぜか自慢げな表情をするマリー。お前は何もしていないだろ。

 冒険者稼業としてゴブリン討伐を行うが、それだけでは生活が成り立たない。しかもグレイスは魔法が使えないのでどうにかしないといけない。せめて生活魔法を覚えてもらわなければならないだろう。


 ステータス

 名前:グレイス

 年齢:17歳

 種族:ヒューマン

 冒険者ランク:Dランク ブロンズプレート

 ポイント:40

 Lv(レベル):10

 HP:88

 MP:30

 STR():34

 AGI(敏捷):25

 DEX(器用):31

 VIT(生命):40

 INT(知性):32

 【スキル】剣技レベル4

 【魔法】生活魔法(清掃・掃除)


 取り敢えずポイントを使って覚えさせたのは良いが、どうやって本人に教えるかである。


「カミュ、悪いんだけどグレイスに魔法を教えてあげて……」


「——嫌っス。それはできないっス」


「なら、ルノ……」


「私も嫌です。絶対に嫌」


 なんでそんなに嫌われているのか分からないが、仕方がないのでマリーにお願いすることにしたのだが、マリーも嫌がる。


「何故に?」


「魔力操作は体に魔力を通すんですが……その、体を全部見られるかのような気分になるんですよ。女同士なら別に気にも留めませんが、男に魔力を通すのは……嫌です。師匠なら……別に構いませんよ」


 いやいや、俺はそんなことはしませんよ。一国の姫に手を出すようなことはしません。

 グレイスに魔力操作について聞くと、ストレージは使えるとのことなので生活魔法を使ってみるように言ってみたところ、無詠唱で使えるわけではなく生活魔法を詠唱をして使えるようになった。


「ついにトイレに紙を使わなくて済みます! 風呂に入らなくとも済む……」


 喜んでくれるのは何よりだが魔導ガンに関してはグレイスに使わせるわけにはいけない気がしたので教えていない。訓練場で弓の練習をさせる。元冒険者の人に習いながら練習をする。

 グレイスの装備は俺が作った武具は装備していないというか、渡したことが無い。なぜかというと、本人が断ってきたからである。


「冒険者なら自分で武具をそろえるべきです!」


「まぁ、お前がそれでよいのなら俺としては構わないが……」


 グレイスの武器はロングソードに鉄の盾、鉄の鎧である。カミュとルノは俺が作った冒険者の服に皮の防具とバックラーである。マリーも冒険者の服に鉄の胸当てとバックラーを装備している。

 武器は魔導ガンにミスリルの剣を装備している。

 のんびりとした生活を望んでいたが、そうさせてくれないのは神の嫌がらせなのか分からない。

 急に王宮へ呼ばれた俺、何事かと思ってみれば冒険者学校を卒業させたことによる功績をたたえたいというていで娘に会いたかったようである。


「久しいな……シノミヤよ」


「……そうですね」


 何故か俺が一緒でないと行きたくないとマリーが言い張ったので付いてきたのだが……。

 学校を卒業させてくれてありがたいと言われたのだが、とてもそんなようには思えない。


「お父様、話はそれだけなのでしょうか? 師匠はこれでも忙しいのです!」


 別にそこまで忙しくはない。


「い、いや……マリエルよ、冒険者としての生活はどうだ」


「お父様、話はそれだけなのでしょうか? 我々は本当に忙しいのです!」


 まるで会話をしたくなさそうにマリーは言う。


「要件はそれだけなのでしょうか? 師匠、それだけなら我々は失礼させていただきます。行きましょう師匠!」


 俺は引きずられるようにして連れていかれ、後日、改めて俺だけが呼ばれたのだった。


「今日は何の要件ですか……」


 俺だけ呼ばれたはずなのに何故かマリーとルノ、カミュも付いてきた。


「何故、マリエルまでやってきたのだ?」


「お父様が師匠を呼ぶからです!」


「いや……なに、シノミヤには大変苦労を掛けてしまっていると聞いておる」


「えぇ……。本当に迷惑を被られていますよ。今現在……」


 娘にゃオークと戦わせろと言われたり王様にゃ無駄にお呼ばれされたりしてるよ。


「——それで要件とは?」


 少し怒気を含んだ声を出す娘のマリー。


「う、うむ……シノミヤには爵位を用意されていてな、一番下の位だが……」


「騎士爵ですか!」


「そ、そうだ。砦の防衛などや辺境伯の娘を救ったとの報告を受けておる。しかもドラゴンまで仕留めているとの話ではないか。最後に娘の世話をしてもらっているからな」


 こうして俺は一言も喋ることもなく勝手に爵位を与えられたのである。

 しかも領地は死の森と言われているマチダの森。強力な魔物が出るので王宮としても困っていたよう、俺に押し付けてきたようにも思える。

 王宮を出て家に帰ると早速マリーが切り出してきた。


「師匠! さっそくマチダの森へ向かいましょう! 師匠の土地なんですから」


 向かうにしても俺の車は四人乗りであり、一人は留守番することになってしまうからどうにかしなければならない。

 そのことをマリーに説明するとマリーは車の改造を提案してきたが、やるのは俺である。でも作るとしたらワゴンタイプの車になるだろう。

 死の森と言われているからには魔物が強い。今のままでは俺以外全滅してしまうだろう。

 兎に角グレイスとマリーを今以上に鍛える必要があるのだが、二人はそれを理解しているだろうか……。

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