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第68話 理解できない

 日が暮れ始めると村に静けさが訪れ始めた。


「師匠、テントとか張らないんですか?」


「ゴブリンが来たら追いかけるのにどうやって仕舞うつもりなんだ?」


 俺の言葉にマリーは何も言い返せない。


「カミュはマリーと一緒に行動すること、ルノは俺とだ」


「ちょ、なんで師匠と一緒に行動できないんですか!」


「お前は馬鹿か。俺にトイレまで付いてけと? 恥ずかしくないのなら一緒でも構わんが……」


「——別でお願いします」


 せやろ。トイレは恥ずかしいもんな。普通……。

 この日はゴブリンが現れなかった。テントを張って仮眠をとる。これを二日も続けるとさすがに緊張感が薄れてくる。


「いつになったらゴブリンがやってくるんですかぁ?」


「俺に聞くな。俺だってさっさと帰りたい……」


 隣で寝ているカミュとルノ。俺たちは交代で見張ることとして夜を過ごしている。

 ようやくゴブリンが現れたのはそれから二日後だった。畑の作物を漁っているゴブリン四匹。


「師匠! どうするんですか!」


「このまま見てるだけだ。あいつらのアジトを突き止めて、そこを叩き潰す」


 荒らしているゴブリンたちは食料を調達しているだけのようだった。

 ルノとカミュを起こすと二人は直ぐに銃を手にした。ゴブリンの気配に気がついたのだろう。

 車から降りてゴブリンたちの様子を窺っていると、ゴブリンたちは野菜を手にして移動を始めた。それからしばらくして跡を追い掛けると、洞穴にたどり着いた。


「あそこが巣のようだな」


「行きますか……」


 マリーは少し緊張しているようだった。


「取り敢えず今日は寝ようぜ。明日の朝に襲撃すりゃ良いだろ」


 俺の言葉に三人は頷いた。

 車をストレージから取り出して眠りにつき、日が昇り始めるころに目を覚ました。

 洞穴には見張りはおらず俺たちは中へ入る前に三人に暗視ナイトスコープを取り出して渡す。カミュとマリーは初めて見るアイテム。ルノが使い方を説明して洞穴の中へ入っていく。

 暗視ナイトスコープのお陰で中が明るく視える。マリーはバックラーを前に出して奥からの攻撃にそなえる。ゴブリンの中には弓を使うやつもいるので悪くない判断だと思う。

 ゆっくり中へ入っていくと予想通り矢が飛んで来たが、マリーのバックラーに守られる。

 マリーは剣を抜こうとしてカミュに止められた。


「姫様、こんな狭い洞穴でロングソードは抜けませんよ。ここは魔導ガンで戦うんスよ」


「わ、わかったわ」


 カミュに言われてマリーは銃を構える。

 マリーは魔導ガンでゴブリンを仕留めながら奥へと進んでいくと、子供のゴブリン遭遇した。


「——子供のゴブリンか。こいつらなら放っておいても……え?」


 容赦なくルノとカミュは子供のゴブリンを仕留めるとマリーは驚きの声を上げた。


「なんで子供も仕留めない」


 マリーに向けて質問をするとマリーは子供だから悪さはしないと言う。


「子供が大人になったら町や村を襲う。冒険者や村人にだって襲ってくるんだ。お前が見逃したら被害は減らないんだぞ」


「だからって子供なんですよ!」


「だから何だっていうんだよ。言って聞かせられるのなら、ゴブリン退治なんて依頼はないはずだろ」


「そ、そうですけど……」


「割り切れとは言わん。だけど理解しろ。復讐は復讐をうむだけだ。子供だからと良いって放っておくといつかは悪さをするんだ」


 納得できなさそうな顔をしているマリー。


「姫様の大事な人が襲われたらどうしますか? その人を許すんですか?」


「それは……」


 珍しくルノが正論を言うとマリーは「これも戦いなんですか……」と呟いた。

 村に戻り依頼達成したことを報告して依頼達成書をもらい、車で都まで戻っていく。その間マリーは黙って俯いていたのだった。

 トウキョウ都の冒険者ギルドへたどり着くと何処かで見たことのあるオッサンがいた。


「おう! シノミヤ!」


 ラインハルトのオッサンだった。


「オッサン、イタバシ砦の先はどうなったんだよ」


「それがな……」


 俺たちがいなくなってからも魔物の襲撃を受け、イタバシ砦から先へは進むことができなくなっているとのことで、シンジュクの町の冒険者だけでは足りないので王宮の兵士へ協力をお願いしにやって来たんだそうだ。


「シノミヤはどうしてトウキョウ都に?」


「俺は今、この都で活動してるんだよ。子供のお守り付きでな」


 そう言ってお俺は親指でマリーを指差すと、オッサンは口笛を吹く。


「パーティメンバーが増えたのか。良かったな」


「良くねーよ。面倒ごとばかり押し付けられているんだ。本当に厄介だぜ」


「そういうな。それだけお前に期待をしているということなんだ」


「それが迷惑だって言ってんだよ。早く王城へ行って仕事を済ませてきたらどうだ。俺は依頼の報告をして家に帰る」


 そう言って俺は受け付けへ行って依頼達成の報告書を出す。マリーは何か思うところがあるのかずっと黙ていた。

 マリーには気分転換が必要だと思い、明日は自由時間を与えることにしたのだが、マリーは自分の部屋から出てくることはなかった。

 やることのない俺たちは都をのんびりと歩いて都を見て回っていると、神殿にたどり着いた。


「神殿か……。あまり良い思い出は無いんだよね」


 良い思いをしていない神殿を後にして家に帰ると、王宮の兵士が家の前に立っていた。また厄介ごとを押し付けられるのだろうか。

 そんなことをもいながら兵士に声をかけると、何処かの屋敷で開催されるパーティーの招待状を持ってきたとのことだった。


「パーティーですか? 俺は貴族ではないですよ? それなのにどうして参加しなきゃならんのですか?」


「姫様がおられるからですよ。姫様をパーティーへ連れてきてください」


 そう言って兵士は戻っていき俺は招待状を手に家の中へ入っていくと淀んだ空気が室内を包み込んでいた。空気の吐き出し口はマリーである。


「いい加減に割り切れよな」


「……頭では理解してるんですよ! ですが、気持ちが追い付かないんです」


「まぁ良い、頭で理解しているのならそのうち気持ちも整理できるだろうよ。それでお前さん宛てに招待状だ」


 俺は先ほど渡された招待状をマリーに渡すが、マリーは乗り気ではない。


「堅苦しいのは嫌なんです! 私は気ままな冒険者が良いんです」


「俺に言わんでくれ。お前の親父さんに直接言ってくれないか。ほらよ」


 そう言って俺は受けっとた招待状をマリーに渡して俺は部屋に戻ろうとしたらマリーに呼び止められた。


「師匠! ちょっと待ってください! この招待状ですけど師匠たちも参加するようにと記載されてますよー」


 えー!! 俺たちは関係ないのに!


「まじかよ! 俺はタキシードなんて持ってないぞ!」


「パーティーは明後日ですって師匠」


 本当に厄介ごとを持ってこられた。

 家で休むつもりだったが、ルノたちのパーティードレスを作るために洋服の生地を買いに行く羽目となったのだった。

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