第63話 驚き
家に帰る途中に冒険者ギルドへ立ち寄る。
なんで冒険者ギルドに寄るのかと二人に聞かれた。
「鉄の剣を納品するためだよ。すでに100本は生産済みだからな。帰ってからポーションを作る。明日には納品するから問題ない。あとはいくらもらえるかが問題だな」
「ふぉ! すでに用意してあったんですか!」
ルノが驚きながら言う。
「俺のストレージに仕舞われているからな。いったい幾らになることやら……」
ギルドの中に入ると室内はざわつく。
理由は先日メイスをへし折ったから。
俺は気にする事なく受け付けに行くと、女性職員が怯えたような声で対応してきた。別に俺が悪いことをしたわけじゃないんだけど……。
「王宮からの依頼で鉄の剣を納品しに来たんだけど」
言われている意味が理解できていないのか、何度も聞き返された。だけど俺は剣を納品しに来たとしか言えないので、無理矢理納得してもらい料金は後日もらいに来ることにして受けてもらい、納品書を受け取った。
これで依頼の一つは完遂したことになる。
ポーションを作るためにメニュー画面を開き、調合でポーションを選び個数を入力する。
ストレージにポーションが100個が出来上がる。
これは明日にでも納品すれば良いだろうと思い家へ帰ると、家の前には兵士が数人立っていた。
聞くところによると俺たちが逃げないように見張りだとか……。失礼な奴らだな。
「すでに鉄の剣は納品済みですよ。ギルドに確認してください」
そう言って俺は納品書を見せると、兵士の一人は確認しに何処かへ行ってしまった。
俺たちは家の中に入ると誰かが入った形跡があり、室内の整理や掃除をしてから食事をすることとなった。
翌日、俺たちは昼頃目を覚ました。
別にルノとイチャイチャしていたわけではない。
旅の疲れがたまっていたからである。
朝食代わりに昼飯を食べてから商業ギルドに顔を出すと、商業ギルドには王宮の兵士と思われる人が数名立っており、何故だかギルドにきている商人たちは緊張した面持ちだった。
別に悪いことをしているわけではないので俺たちは受け付けに行き、ポーションを納品して納品証明書をもらった。これで王宮からの依頼は完遂だ。
あとは報酬をもらうだけだが、報酬は後日と言われた。
家に戻るとまるで家を警護しているかのように兵士が立っており、なんだか申し訳なくなってきたので兵士の皆さんに簡単な食事を用意してあげた。
食事を与えたら兵士は饒舌になった。
「夜は交代で別の者がやってきますよ」
「監視は大変そうですね。すでに納品は終わっているから問題ないのに」
「「え?」」
「ほら、これがポーションの納品証明書ですよ。材料はすでに持っていたのであとは作るだけだったんです」
戸惑った顔をしながら兵士は「なるほど……」と言っていた。
夕方になり、交代の兵士がやってきた。
夜は寒いのでと言って家の中に招き入れると一人は外でと言って中に入らず、もう一人は中に入って俺たちとくだらない話をしていた。
寝る頃になると兵士は仕事に戻ると言って外に出ていき、仲間とくだらない話をしながらこの日を過ごしていた。
それから二日が過ぎたころに家のドアがノックされたので、カミュが返事をして玄関を開ける。
「シノミヤ殿は居るか?」
いつもの兵士ではない声。
「い、いるッス。ご、ご主人さま!」
俺を呼ぶカミュに対しルノが不審に思ったのか、ルノが先に玄関へ見に行って戻ってきた。
「ご主人さま! 王宮の騎士様が起こしになられております!」
「中へ入れてやって。俺は朝食を食べてるからって」
俺たちの会話を聞いていたカミュが騎士に説明をすると、外で待つとのことだった。
仕方がないので朝食を食べるのを切り上げ、外に向かう。すると、豪華な馬車が家の前に停まっていた。
馬車の前には先ほどの騎士が立っていた。
「シノミヤ殿で間違いはないか?」
「間違いないですよ。貴方は?」
どうやら俺の俺を迎えに来た騎士らしく、ライニングという名前らしい。
俺たちは馬車に乗り込み再び王宮へと向かった。
数時間後には前に通された応接室のような部屋へ案内された。
待つこと一時間、俺たちは兵士に連れられて再び王の御前へとやって来た。
前回とは異なり、俺はルノを真似るように片膝立ちして頭を下げる。
「面をあげよ」
言われたとおりに顔を上げる。俺のマナーが悪くて二人に迷惑をかけられない。
「期日前に納品したそうだな」
「はい、在庫がありましたので……」
王はご苦労と言って俺たちは別室に行くよう言われ、応接室へと案内された。
すると、しばらくして王様が応接室へとやってきて、ルノとカミュの二人は慌てて片膝をついて頭を下げた。俺は公式の場ではないので頭を下げずに王を見つめる。
「頭が高い! 王の御前であるぞ」
「俺は報酬をもらえれば王だろうが客だろうが頭を下げるつもりはないよ。それで報酬はいつごろ貰えるんですかね? 金貨にして2,000枚だと思うんだけどね。ポーションは銅貨1,000枚だね」
「鉄の剣ごときで金貨2,000枚だと!」
ジルマールが血管を浮き出しながら言う。
「なら、サービスして1,000枚でいいですよ。ちなみにこの鉄の剣はいくらで買い取ってもらえますかね。王様」
そう言って俺はストレージから鞘に仕舞われた鉄の剣を取り出してルノに渡すと、ルノは礼儀正しく側近の近衛兵に剣を渡す。
近衛兵は鑑定の魔法を使って驚いた顔をした。
何故なら、手渡した剣は10個エンチャントが付与されているからである。この世界では最大2個までしかエンチャントが付与されていないのである。
それなのに目の前には10個も付与されている剣がある。これは間違いなく伝説上の武器になってしまう。
「それは『いくら』になりますか? 俺からすればただの鉄の剣ですけど、この世界からすればどうなんでしょうかね」
鑑定した近衛兵が付与されているエンチャントを読み上げていくとジルマールは時が止まったかのように動かなくなった。
「誰が三つしか付与できないと言いましたか? 鉄系だったら最大で10個までなら付与することが可能ですよ。防具だって同じですけどね」
そう言って鉄の盾を取り出して近衛兵に渡す。
「その盾は無償であげますよ。ですけど納品した武器やポーションのお代は支払ってくださいね」
誰も口を開くことができず、俺を見つめている。
「エリクサーもありますけど買い取ってくれますか?」
完全に馬鹿にした言い方をした。
しかし動揺していない人が一人だけいた。それはこの国を治めている王様であるルイスだけだった。




