第62話 どうせ俺は田舎者
考えが甘かった。
逃げる算段をしていた最中に宿屋のドアが開かれて兵士がなだれ込んでくる。
兵士たちは剣を突き付けてきたので俺たちは降参するかのように両手を上げた。まさか宿屋にも手配が回っているとは思ってもいなかった。
俺たちはそのまま馬車へと連れていかれ、再びトウキョウ都へ向かうこととなった。野営をすることになっても俺たちは馬車の中から出してもらうことができず、トイレすら馬車の中でするように魔道具が置かれていた。俺は別に恥ずかしくはなかったが、ルノとカミュの二人は音を聞かれるのが嫌だったのか、恥ずかしそうな顔をしていた。
シンジュクの町を出て二日が過ぎたころにトウキョウ都へ到着した。相変わらず俺たちは馬車から降ろしてもらえずに王都の中心部までやってくると、ようやく馬車から降りるよう言われた。
「どこへ連れていかれるんだ? それくらい教えてくれても構わないだろ」
「貴様は何も知らなくてよい!」
兵士は高圧的に言ってきた。
それからどこかの部屋へと案内されて待つように言われる。
どのくらい待たされたのか分からないが二人のステータスを調べるだけの時間はあった。
ステータス※奴隷
名前:カミュ 年齢:16歳
種族:獣人ハーフ
冒険者ランク:Cランク メタルプレート
ポイント:200
Lv:40
HP:247
MP:34
STR:360
AGI:247
DEX:177
VIT:226
INT:48
忠誠心:70
【スキル】剣技スキル10・超回復レベル3・嗅覚感知レベル3・聴覚感知レベル3・射撃レベル5
【魔法】生活魔法(清掃・掃除)
名前:ルノ 年齢:18歳
種族:獣人ハーフ
冒険者ランク:Cランク メタルプレート
ポイント:359
Lv:29
HP:200
MP:24
STR:118
AGI:135
DEX:108
VIT:151
INT:38
忠誠心:90
【魔法】生活魔法(清掃・掃除)
【スキル】剣術レベル5・射撃レベル9
二人のレベルが上がっているので何かしらのスキルをつけておいた方が良さそうだ。
ここは王宮だから考えられるとしたら毒か麻痺だろう。
俺は両方に耐性を持っているから問題ないが、二人は何の耐性も持っていないから付けた方が良いだろう。
ステータス※奴隷
名前:カミュ 年齢:16歳
種族:獣人ハーフ
冒険者ランク:Cランク メタルプレート
ポイント:100
Lv:40
HP:247
MP:34
STR:360
AGI:247
DEX:177
VIT:226
INT:48
忠誠心:70
【魔法】生活魔法(清掃・掃除)
【スキル】剣技スキル10・超回復レベル3・嗅覚感知レベル3・聴覚感知レベル3・射撃レベル5・毒耐性5・麻痺耐性5
名前:ルノ 年齢:18歳
種族:獣人ハーフ
冒険者ランク:Cランク メタルプレート
ポイント:259
Lv:29
HP:200
MP:24
STR:118
AGI:135
DEX:108
VIT:151
INT:38
忠誠心:90
【魔法】生活魔法(清掃・掃除)
【スキル】剣術レベル5・射撃レベル9・毒耐性5・麻痺耐性5
これで問題ないだろうが、これ以上耐性レベルを上げるのはポイントが足りなくなってしまう。徐々に慣らせていくのが一番良いのだろうが、二人が苦しむのを見るは嫌だな。
ようやく兵士が俺たちを呼びに来たと思ったら案内された場所は大きな扉の前だった。
「中に入るんだ」
すると、扉はギィー……っと、音がしながら開く。扉の奥は謁見の間になっているらしく。近衛兵らしき人たちが並んでいおり奥には偉そうな人が座っているように見える。
俺たちは兵士のあとに続くよにして中へ入っていく。すると、玉座っぽい椅子に座っている男が咳払いをした。
どう見ても王様だろう。ルノとカミュは片膝を付けて頭を垂れる。奴隷が王に謁見するなんてとヒソヒソと話す声が聞こえてきた。
「頭を下げよ! 平民が!」
何かしらの役職を持っていると思われるオッサンが威圧的に言ってきた。
「無理矢理連れてきてそういう態度は無いと思うんだけど? 俺は頼んで連れてきてもらった訳では無い」
俺はNOと言える日本人。実力に差があるので言えるだけなんだけどね。
「それに俺は礼儀作法ってやつを知らない田舎者でね。勘弁してもらえると助かるんだけど」
「良い良い。山奥で暮らしていた……そうギルドから報告を受けているが間違いはないか?」
玉座に座っているオッサンが言う。
「えぇ……。そうですね。山奥育ちで世間のことは何も知らないんですよ。申し訳ないですね」
「私はルイス=フォン=テンノウ415世。このニホンを治めている国王である」
ニホンとはトウキョウ都だけではなく本当に日本を治めているという意味だ。その国の王様が俺の前にいるということになる。
「これはこれは王様でしたか。初めまして。俺の名は姓はシノミヤ、名はキョウスケと言います。どちらでも好きな方でお呼びください」
「なるほど、シノミヤというのか……。して、今回は呼びつけた理由だがシノミヤが販売した剣の付与が、三つ付いていたという話だがどこでその剣を仕入れたのかという話だ」
やはり剣に付与されていたエンチャントが三つだったことが問題だったようだ。
「あれは俺が作ったものです。代々家に伝わる技術で作られた剣です。門外不出のため人に教えることはできません」
「さようか、ならばその剣を100本……納品してもらえないだろうか」
「しっかりと報酬がいただけるのであれば納品いたします」
さすがに無礼だとかいろいろと言われているが、対価をもらえないと意味がないでしょ。
「他にも……。ポーションで病を治したとの話を聞いておるが?」
「さすがにポーションで病を治すことはできませんが、深手の傷くらいならそれなりに治るかと思います。どこまで話が誇張されているのか分かりませんが、ギルドで確認していただけると幸いです」
「ならばポーションを一つ貰えるかな?」
「構いませんよ」
俺はストレージからポーションを一つ取り出して、近くにいた兵士に渡す。兵士は魔法つかいと思われる人にポーションを渡し、魔法使いはその場から退席した。
「付与が三つされた鉄の剣を100本を今週中に納品すれば良いんですかね?」
「なるべく早くに納品してくれると助かる。後のことはジルマールと話をしてくれ」
ジルマールとは、王の隣にいる側近のことらしい。先ほど俺にひれ伏せと言ってきた輩だ。
兵士に連れられ、俺たちは再び別室へと案内された。
ソファーに腰掛けるとかなり上質な物というのがわかる。ルノやカミュはソファーに座らず立っているので、俺が座るように言うと二人はそれはできないと拒否した。奴隷は立っているものなんだってさ。
しばらく待っていると扉が開き、先ほど王の隣にいたオッサンが入ってくると、ルノとカミュの二人は片膝立ちして頭を下げた。
「そこの従者の方が礼儀を知っているな」
見下すような目でジルマールは言う。
「俺は山育ちで礼儀作法なんて習ってませんからね。王様ですら理解してくれたのにジルマール殿は理解してくれないんですか? それに俺は来たくて来たわけでは無いということを理解してくださいよ」
売り言葉に買い言葉。
「ふんっ……。田舎者が。期日は一週間。ポーション100個に鉄の剣を100本。付与内容は街で売っていたものと同じものを用意しろ」
「承知いたしました。ポーションは先ほど渡したものと同じもので良いんですかね? 先ほどはポーションを作るようには言われてないものでね」
「状況は刻一刻と変わる物だ。先ほど提出したポーションで構わんからさっさと作って来い。間に合わなくなっても知らんぞ」
間に合わないことなどありえない。待っている間に鉄の剣は作り終えてありストレージ内に収められているのだ。あとはポーションを調合すれば問題ない。
「届け先は何処にすれば?」
「冒険者ギルドに届け出ればよい。ポーションは商業ギルドだ」
「分かりました。そのように致しますよ」
ソファーから立ち上がって部屋を出ようとすると、ジルマールは「田舎者が!」と吐き捨てるかのように言うのだった。




