第61話 逃げた
ジェジェウの推薦により俺はサーラと名乗る女性を連れてオークの集落を目指していた。
ギルド曰く、彼女は王宮の騎士見習いらしく今回のオーク討伐に関して情報収集を命じられたようで、ギルドに情報収集に来ていた。
その際、俺を見つけたらしく酔っ払いとのやり取りで実力を知り、付いて行けば必ずオークの情報を手に入れられると思ったようだ。
俺としてはルノとカミュの三人だけで行きたかったのだが、ギルドマスターから直々にお願いされたので仕方なくサーラを連れて行くことになった。
「あと少しで地図に記された場所にたどり着くぞ」
カミュは「了解っス」と気にした様子もなく返事をするのだが、ルノとサーラは嫌そうな顔をしている。サーラは調査のためについてきたんだから嫌そうな顔をするんじゃねーよ。
途中まで車で移動してきたのだが、初めて車に乗ったサーラは物すごくうるさかった。夜襲をかけるにはタイミングの良い時間帯だ。だって夜中の二時だからね。
カミュがオークの集落を発見し、俺たちは離れた場所から集落を確認していると、城壁の代わりに柵が設けられていて二匹のオークが入り口を守っており、しかもこん棒ではなく槍を装備している。
「たしかにオークの集落ですが、持っている武器は普通のオークとは異なりますね……」
スコープを覗きながらルノが言う。
「なんですか? その変な筒」
スコープを見るのが初めてなのかサーラが不思議そうに聞いてきたが、ルノやカミュの二人が説明できるわけでもないので二人は俺の方を見る。
「遠くをみるアイテムだよ。俺のお手製だから流通してない。そんなことよりもオークはどれほどいるのか分かるか?」
「うーん……。音からするとかなり沢山のオークがいるとしか分らないっスね」
カミュが耳を凝らしながら数を確認するのだが、多すぎるため数が分からないようだ。俺の気配察知だとおおよそ100匹ほどいると思われる。
「ルノとカミュは入り口にいるオークを仕留めろ」
「了解です」
「了解っす」
二人は銃をストレージから取り出して狙いを定め、入り口を守っている二匹のオークに向けてトリガーを引いた。サーラは何をしているのかと二人に聞いていたが、二人は原理すら分かっていないので答えることができなかった。
しつこく聞くサーラ。
「これは弓矢の強化版とご主人さまから聞いてます。お店とかでは見たことはないですが、物すごい威力ですよ」
自分が分かる範囲でルノはサーラに説明するが、原理を聞いてきても答えることできなかった。俺が代わりに答えればよいのだがそんな時間はない。
俺たちはゆっくりと近づき柵の中を確認すると沢山のオークが生活しているらしく、生活感が溢れている。
「ずいぶんと生活感があるな。小屋なんかもある」
なんだか攻め難い。
どうするのて言った顔をする三人。
どうするのと言われても困るのだが、あの焚火のそばにあるのはどう見たって人骨だ。俺はストレージから剣を取り出してゆっくりと中に入っていくと、ルノとカミュも続くように中へ入っていく。
単純にオークの群れが100倍になった程度である。まるでシューティングゲームのように迫りくるオークに向かってルノとカミュは魔導ガンを連射してオークの群れを射殺していき、俺は後ろからくるオークを切り捨てるだけの簡単なお仕事をしているのだが、サーラは頭を抱えながら俯いて震えているだけだった。
明け方になってオークの小屋の中を調べることができると、オークに乱暴されたと思われる女性たちがいた。カミュとルノはオークの体液だらけになっている女性たちに生活魔法を使って綺麗にしてあげているが、みんな目が虚ろな状態になっていた。サーラは異様な光景に口から食べた物を吐き出していた。
精神的にキツイのだろう。
俺が他の小屋を調べると骨の山があったり、子供のオークが震えていたりしてしていた。もちろんオークの子供は始末した。
乱暴された人たちにポーションを分け与えるのだが、ほとんどの人が精神崩壊している。
これでは連れて帰ることができないためテレポートの魔法を使ってトウキョウ都の前に戻ると、サーラは急いで冒険者ギルドへ向かった。精神崩壊していると思われる彼女たちをどうにかしないと行けないらしい。俺は門の警護してる兵舎へ向かい事情を説明すると、兵舎にいた兵士たちがたくさん出てきて保護をした。ギルドに報告するより早いだろ、普通に考えたら。
サーラが連れてきた冒険者ギルドの職員たちも協力して連れて行こうとするのだが、精神崩壊してしまっている彼女たちを連れて行くのは大変そうだった。
俺はそれを横目に冒険者ギルドへ向かった。依頼達成の報告をするため。
ギルドに報告するとジェジェウのところへ案内され、オークの集落について質問された。
こと細かくは説明しなくとも連れ帰った女性たちの話をしたら、ジェジェウは難しい表情で黙り込んでしまった。
それからしばらくして、ジェジェウは口を開く。どうやら魔物の大襲撃があったときも同じような事案があったらしく、その時は冒険者たち100人ほどで対処したとのことだった。だが、今回はたったの四人。しかも一人は震えて何もしていなかった。
だが問題はそこでは無かった。
俺が作って売り捌いた武器に問題が発生したのである。
簡単に言えば武器には二個までしかエンチャントできないと言われている世界で、三つもエンチャントが付与されている武器が販売されたのである。これは国を揺るがす大事件となっており、販売したものを探せと国から王宮から指示が出ているとのこと。
マジで何なのよ……。
冒険者ギルドでその話を聞き逃げるようにして急いで俺たちは家へ帰るのだが、時はすでに遅かった。
家へ帰り着くと、俺は二人に荷物をまとめるよう指示したのだが、玄関のドアが叩かれて二階から外をチラ見すると、兵士たちが家の周りを囲んでいた。
帰ってくるまで近くに潜んでいたのである。それに気が付かずに俺たちは家の中へ入ったことで、家は包囲されてしまったのだ。
「ど、どうするんですかご主人さま!?」
慌ててふためく二人。二人は俺の奴隷だから俺を置いて逃げるなんてことはできやしない。
兎に角俺は荷物をまとめるように指示して、テレポートの魔法でシンジュクの町へ逃げた。
当分は帰ってくるつもりはなかったが、仕方がないことだと思いつつ、俺たちは街の宿屋に泊まることとなった。
「当分はトウキョウ都へ行くことができないだろうな」
部屋に置かれてあった椅子に腰掛けながら言うと、ルノは深い溜め息を吐いた。
「冒険者ギルドにも顔を出せないですよ。もちろん商業ギルドにもです!」
「どういう意味だ?」
するとカミュが答えた。
「冒険者ギルドは全ての町のギルドとつながっているんス。もちろん商業ギルドも同じっス。だからルノ先輩が言うようにギルドに顔を出すことができないって言うことっス」
「それが何の問題があるっていうんだ?」
「簡単に言うとギルドは国が管理している機関なんスよ。だからギルドに顔を出したらすぐに王宮へ連絡が行ってしまうということっスよ」
「え? と言うことは、ギルドが敵になったということなのか?」
「ご主人さまからしたらそう言うことになりますね」
残念そうな顔をしながらルノが言った。
今の俺は残念そうなやつなのか?
「もしかしたら手配書が出回るのも時間の問題かもしれないっスよ」
荷物の整理を行っているカミュが言う。
素直に出頭した方が面倒が少なくて良いのかもしれないが、できれば王宮と関係を持ちたくない。
「どうすればよいと思う?」
二人は首を振る。思いつかないようだ。
よし! 一か月間町の外で生活をしよう! このまま町にいても良いことはないからね!




