第60話 オークの集落
翌朝になり朝食を食べているのだが、カミュの顔が真っ赤だった。
「どうしたんだカミュ。顔が赤いぞ?」
「な、なんでもないっス……」
そう言ってそっぽを向くカミュ。何か変だな。まぁいいや。
今日も商業ギルドへ行き商売をしようかと思っていたのだが、昨晩頑張り過ぎてしまったため在庫がないのと鉄鉱石をもっとたくさん手に入れなければならないので今日は鉄鉱石を取りにナガノの採掘場へとやってきた。
ルノとカミュに魔法の鶴橋を渡し三人で鉄鉱石を掘り始める。ザックザックと鉄鉱石が出てくる。ルノとカミュは初めて採掘をしたため「フォォー! ものすごくやわらかくて良く掘れるぅ!」と興奮しながら掘っていた。夕方まで掘りまくり、テレポートで家に帰り鍜治場でインゴッドを大量に作った。
その後、夕飯を作るのが面倒くさくなって昨日と同じよう冒険者ギルドに併設されている酒場で食べることとなった。だが、昨日とは違う意味で冒険者ギルドは騒がしく何か良くないことが起きているようだった。
「――ご主人さま、どうやらオークの集落を襲撃したらしいッスけど、失敗したようッスよ」
カミュが小声で教えてくれた。
「失敗?」
「はい、襲撃しに行ったらしいッスが、返り討ちに遭ったらしく、二つのパーティが殺られたそうッス」
「二つも? 相手はオークだろ? そんなのに返り討ちにあったというのかよ?」
「そう噂されているッス」
トウキョウ都の冒険者は大したことないのか?
それとも相手の数が多すぎたのか?
しかしオークの巣を突いたのだから何かしらの報復がありそうな気がする。
「ご主人さま、再び討伐隊を編成するようですけど……」
いろんなところにアンテナを張り巡らしているのか耳を動かしながらカミュが言う。器用な耳の動かしかただな。
「オークの集落ね……。まぁ、第二陣が組まれるのなら問題ないかな」
気にしても仕方がない。だが、オーク如きに後れを取るというのはどうなんだろうか。
「ご主人さま、ここの冒険者ギルドには訓練場があるらしいっスよ。そこの訓練を見て仲間を探したり鍛えたりしてるようっス」
「訓練場? たしかに地価へ行く入り口があるけど、そこにつながっているというのか?」
訓練場があるのなら二人を訓練するのもありだな。
食事を終わらせて地下の訓練場があると言われている場所へ移動すると観客席のような場所があったので、そこに腰かけていると訓練している人が何人かおり、スカウトしようかどうか迷っているパーティがいた。トウキョウ都ではこうやって仲間を探すのか。
「カミュ、ルノに剣を教えてやれ」
「「え?」」
驚く二人。そんなに驚かなくっても良いと思うんだが……。
カミュは言われたのだから仕方がないといった表情になったのだが、ルノは絶望に満ちた表情をしていた。なぜに?
訓練場へ二人が移動してしばらくすると俺の隣に誰かが座った。別に俺の隣じゃなくても席は沢山空いているのに……だ。
「——探しましたよ。シノミヤさん」
俺は隣に座った人を見るのだが全く記憶にない。
「誰かと間違えてませんか?」
他人のふりをしてみる。
「間違ってませんよ。私はトウキョウ都のギルドマスターで、ジェジェウと言います」
ギルドマスターということはシンジュクの町にいるあの糞エルフと一緒ということか……。
椅子に腰かけているので背の高さは正確に分からないが、見た感じからドワーフのようだ。
「そのギルドマスターが何ようですか?」
「君にオークの集落を討伐してもらいたいんだ」
「——お断りします」
「そう言うと思ってったよ。ところで最近凄い鉄の剣や銅の剣が出回っているらしいんだけど、君……でどこを知らないか? まぁ、商業ギルドで調べれば一発なんだけどね」
「それで調べたところで何になるんです?」
「もれなく王城にご招待となる」
俺が嫌な顔をしたのを見逃さなかったのか、ジェジェウがニタニタと笑っている。
「で、行きたくなければオークの討伐に行けと?」
「そう。前回集落へ行ったパーティはメタルプレートばかりのパーティだったのに、ほとんど全滅してしまったんだ。だからその原因を調査してもらいたい」
「討伐を目的ではなくて調査が目的と?」
「できることなら討伐をお願いしたいが、難しければ調査のみで構わない」
構わないと言っているくせに目は違う。討伐してこいと言った目をしている。
「王城へ行かなくて良いのであれば引き受けるしかないね。仕方がない……」
「物わかりが良くてありがたい。だが、君はいずれ王城に行く羽目になると思うよ」
そう言ってジェジェウは席を立った。
このトウキョウ都には沢山の人が住んでいるのだが、どうして俺のことを知っているのだろうか謎だけは残ったが、今はそんなことを気にしている余裕はない。
二人の訓練を途中で止めさせ、俺たちはギルドの掲示板にオークの集落について依頼が出ているのか確認したが、依頼は張り出されていなかった。
もしかしてすでに誰かが受諾してしまったから依頼が無いのかもしれん。
仕方がないのでギルドの職員に声をかけてギルドマスターに依頼されたことを告げると、ギルド職員はマスターのところへ確認しに行ってしまった。
「ようよう兄ちゃん。可愛い獣人の女を連れているじゃねーか!」
ギルドは酒場と併設されているため酔っ払い24時間いるが、まさか俺が絡まれるとは思ってもみなかった。
一瞥してシカトした。大したことなさそうな相手だったから。
「他所見とは良い度胸じゃんか!」
そう言って男は俺に殴りかかってきたが、軽く躱して足を引っ掛け転ばせると、周りからは苦笑の嵐で男は面目丸つぶれの状態だった。
怒り狂っている男はメイスで殴りかかってきた。俺は素手で受け止めてメイスをへし折った。
「まだ……やるつもりですか? 次は貴方の首がメイスのようになりますよ」
見下すような目で男を見ると、男は首を左右に振って逃げていった。俺は周囲に目をやると皆は視線をそらしてヒソヒソと会話をしていた。
ルノは「流石ご主人さまです!」と言い、カミュは「すっげー!」と声を上げて驚いていた。
それからしばらくしてギルド職員がやって来て、集落があると思われる場所を示してある地図を受け取った。オークの集落があるのはタイトウの森で近くには川があるようだ。
歩いて半日と近い場所にあるのでギルドとしては早めに潰してもらいたいのだろう。
時間的には遅いのだが、明日になればどこかのパーティが襲撃に行くかもしれないため今から行かねばならない。カミュは欠伸を堪えながら付いてきており、少しだけ申し訳なさを感じてしまう。
俺たちはギルドから出ようとしたところ、一人の女性が目の前に立ちはだかった。
「ちょっと待ってもらえますか!」
栗毛色をしたポニーテールの女性だ。何か用なのだろうか?
「これからオークの集落へ向かうんですよね!」
「どこからその話を?」
「ギルドの人と話てるのを聞きまして……。盗み聞きは良くないとは分かっているのですが……」
かなり可愛いくて、どストライクだが何を企んでいるのだろうか?
「わ、わた……」
「綿?」
ずいぶんと顔が赤く緊張しているのが分かるが、何を言いたいのだろうか……。
「私も……私も連れて行ってください!」
ギルド中に響き渡るかのように叫び、みんなの注目浴びている。できれば変に目立ちたくないのに……。
「あのね……。これから危険な場所へ向かおうとしているんだよ。そのこと分かってるの?」
「わかってます! ですが……お願いします!」
これ以上何を言っても無駄そうだった。どうすれば良いのか考えていると騒ぎを聞きつけたギルドマスターのジェジェウがやって来た。
「どうしたんですか? この騒ぎは……。おや、シノミヤさんにサーラ嬢じゃないですか」
するとギルド職員がマスターに耳打ちして状況を説明すると、ジェジェウは苦笑いをした。




