第57話 移動手段
どうしようか悩んでいるうちに勝手にイタバシ砦まで行くことが決定していた。
当日までの間、食料をたくさん用意する必要があるとのことで、動物を狩りに行くこととなり、カミュは銃の練習を繰り返すかのように狩りをした。
当日になり俺たちはギルドへ向かうと馬車が数台用意されており、俺たちはできるだけ沢山の水や食料をストレージに詰め込み出発した。馬車に揺られながら進んでいき夜は成子を張って野営をして二日が過ぎたころにイタバシ砦に到着した。
イタバシ砦は城壁を増築しておりそこに都市を作ろうとしているらしく、かなり沢山の人たちが作業しており、イタバシ砦は賑わいを見せていた。
俺たちの護衛はここまでとなっておりこの先は城塞都市が完成してからトコロザワに町を作りに行くとのことで、先ずはイタバシ砦で護衛が俺たちの任務に代わる警護だけしているわけではなく、町づくりを手伝うこととなり、俺は自分たちが住む家を作り始めた。
何度も家を作らさせられているのでルノも手際が良くなっていて作業が捗っていたが、カミュは初めての事ばかりだったのでルノに聞きながら手伝ってくれた。こういう所はシェリルとは大違いである。もうあいつのことを思い出すのは止めよう。カミュたちに失礼だ。
着々と家は完成していくなかで、カミュがかなり力があるのには驚いた。
家を建て始めて四日が過ぎた頃に完成した。今回はログハウスタイプの家で周りから見ても浮いてはいない……屋根以外。
屋根は太陽光パネルが設置されており、みんなに何の板か聞かれたのだが、説明しても理解してもらえなかった。
家の横に鍛冶ができる場所を作り、裁縫室も設置、これでシンジュクの町と変わらず武器や防具、服などを作ることができる。
だが、服を作るための生地がストレージの中にしかなく、作ってくれと頼まれても作ることができない。
ネリマ山にある洞窟にいる桜蜘蛛の糸があれば生地を作ることが可能となるが、今の状態でこの場を離れても良いのか分からなかったため、ラインハルトのオッサンに話をした。
「ネリマ山の洞窟だと?」
「桜蜘蛛の糸が欲しいんだ。行っても良いか?」
「人を割くことはできん。もうしばらく街ができるまで待ってくれないか」
そう言われたら仕方がない。考えてみたら移動手段が無いので移動手段も考える必要がある。
OKが出るまでに移動する手段として乗り物を作ることにしよう。
材料は沢山ストレージ内にある。実際のところ車はゲーム内でも作っていたため、鍛冶スキルで作ることは可能だが、問題はタイヤとエネルギーであるガソリンだ。
タイヤはゴムの木から作ることができるが、ガソリンは作ることができないため、ガソリンに代わるエネルギーが必要になる。ゲーム内ではガソリンがなくても走らせることができたが、ここは現実の世界のためエネルギーが必要になる。
そんなことを考えているとラインハルトのオッサンから食料となる獲物を仕留めてきてほしいと言われ、俺たちは動物狩りを行う。
その時に気が付いたのが魔石である。魔力を流して弾丸を発射させる仕組みとなっている銃。この技術を車で使えないかと思いながら狩りを終わらせ、オッサンに仕留めた獲物を渡し急いで家へと帰った。
研究すること三日、ようやく軽自動車型のエンジンが動くまでとなり、残りはタイヤだけである。
ゴムの木はトシマの森周辺に生えている。トシマの森は歩いて半日ほどの場所だ。この距離ならばオッサンの許可無くても行ける範囲だろう。
だが勝手に出かけて文句を言われたら困るので狩りに行くと言ってゴムの木を採取しに行く。もちろん行く途中に狩り行う。獲物を一匹でも仕留めておけば文句を言われないから。
トシマの森に到着してルノとカミュの二人に狩りをしてくるよう指示を出し、何かあった場合は俺のところへ逃げるように言った。森の中を少し彷徨うとゴムの木を発見して、何本か採取してストレージ内でゴムと分別を行う。これで目的のものが作れる。
採取が完了して二人を探そうとしたら、二人が走って俺のところへやって来た。何かがあったのだろう。
「何かあったのか?」
「り、リザードンの群れに追いかけられてるんです!」
その程度ならカミュ一人でどうにかできるのではないかと思ったが、二人から話を聞くところによるとどうやら数十匹だったらしく、どうやらこちらの方へ向かってきているらしい。
テレポートの魔法でイタバシ砦の家へ戻ることにし、二人は俺に掴まり魔法を発動させる。
「こ、ここは……」
初めての出来事にカミュは辺りをキョロキョロさせる。
「イタバシ砦にある俺たちの家だ」
「も、もしかして空間魔法ッスか!」
「ご主人さまは大魔法使いなんですよ!」
何故かルノが自慢げだ。
ギルドに狩りをしたときに手に入れた食料を持っていき、オッサンはお礼を言ってきたが、言われるほどのことはしていない。
それに肉料理ばかりなのでできたら魚料理や野菜などもたまには食べたいし、できる事なら米が食べれたら最高なのだが……。今度川に行って魚でも釣るか。
家へ戻り車の作成に着手したが、時間的に遅いので翌日にやることにして城壁の改修を手伝うことにした。
翌日はルノとカミュの二人を手伝いに向かわせて俺は車の作成を続けることにした。
タイヤを作成して完成だ。エネルギーの代わりになる魔石に魔力を注ぐことによりガソリンの代わりとなりエンジンが掛かる仕組みだ。
エネルギーチャージはガソリンを入れるところに手を添えることで魔力を注ぐ事ができる。軽量化を図るためにオリハルコンで骨組みを組んでおり、エンジン部分は魔力の伝導率を良くするためミスリル使っている。サスペンションはアダマンタイトを使っていて外装にはプラチナ鉱石を使用している。
試乗した際は問題なく動いたため完成と言って良いだろう。
周囲からは変なものをみる目で見られているが気にしない。どんな乗り物だってはじめは変な目で見られたものだからね。
試運転をかねてネリマ山に向かいたいが、勝手に動くとラインハルトのオッサンに怒られそうだったので止めておこう。
その日の夜、ルノとカミュの三人で寝ていると大きな音がして目が覚めた。
「何ごとだ!」
服を着替えて外に出てみると、冒険者や王宮の兵士たちが慌ただしく駆け回っていた。
その中の一人を掴まえて何が起きたのか聞いてみると、どうやら魔物が砦に襲撃をしてきたようだった。
魔物の中には地竜もいるらしく、近くに寄るとブレスを吐かれてしまうので遠距離攻撃の魔法で攻撃したり、弓矢で攻撃したりして足止めをしている。
ラインハルトのオッサンがやって来て遠距離の武器を持っているルノとカミュを貸してもらいたいと言ってきた。俺だって持っているし、俺一人でこの程度の魔物を仕留めることは可能だが、二人の経験値を稼ぐのに良いかと思い二人を送り出した。
俺はと言うと、ポーションづくりをお願いされたので建設中の神殿でひとり寂しくポーションを作るのだった。
魔物はゴブリンやオーク、リザードンにハーピーなどが攻めて来ているらしく、空から攻撃してくるハーピーに手こずっているらしい。
魔物も知恵を付けているのか城壁に梯子をかけて登ってこようとしている奴もいるらしい。
いざとなったらラインハルトのオッサンが俺を呼びにくる……。
「シノミヤは居るか!」
ほらね。
「ここに居るよ。何か問題でも起きたのか?」
「ドラゴンをどうにかできないか! やつ一匹だけでかなりの損害が発生している!」
「地竜ね。仕留めれば良いのか?」
このステータスで出来ないことは少ない。俺は重い腰を上げてストレージから鋼の剣を取り出して城壁のそばで暴れているドラゴンのところへ向かったのだ。




