第54話 これからどうするのよ
アホのように傷ついて戻って来るローラーさんたち。持っている武器もボロボロになっており、これ以上の突撃は難しい状態となっている。
第二城壁が破られるのは時間の問題となっており、冒険者たちも第三城壁へ避難するよう指示が出され始めていた。
夜通し攻めてくる魔物。どこからこんなに攻めて来るのか分からないと言われているが、ゲーム通りならオオミヤ洞穴からだろう。あそこにはレッドブルの住処となっているので、レッドブルが指示を出していると考えられる。
ゲーム時代ではこんなことは起きなかった。何故ならプレイヤーが強いから、魔物の群れを蹴散らすことができたからである。
それにこのような出来事が起きたら、プレイヤーはお祭りだと騒ぎながら嬉々として討伐するだろうし、ついでと言ってレッドブルすら撲殺しに行くだろう。
レッドブルとは、赤いミノタウロスの集団である。
真っ赤な体の牛野郎だがものすごい筋肉で、レッドブルの角はレアアイテムとして扱われており、リスポーンされるたびに狩りに行かれるボスである。簡単に言えば初級のボスキャラなのである。
だが、そのボスですら倒すことができないのがこの世界の冒険者たち。どうやってクリエイターの人は世界を見て回ったのだろうか。
昼はルノたちが魔導ガンで魔物を狙い撃って、夜は交代で弓矢隊や魔法使いが魔物を追い払うように打ち放つ。
「ご主人さま、このままだと第二城壁が陥落してしまいますけど、大丈夫なんですか?」
「大丈夫じゃないだろな。仕方がない、ちょっとだけ力を貸してやるか……」
窓を開け外を見渡す。冒険者たちが追い返そうと奮起しているなか、俺は魔物だけ狙いをさだめサンダーストームを唱える。
大体千匹を一瞬で仕留めると、冒険者たちは何が起きたのか理解できず驚いた顔をしていたが、魔物たちは第一城壁のところまで撤退する。
「そんな場所に固まったら一網打尽にされちまうぞ」
第一城壁に集まった魔物に向かってコメットの魔法を放つ。すべて無詠唱だから直ぐに魔法が発動され、城壁に向かって隕石がの群れが落ちていく。
魔物からしたら何が起きているのか理解できていないだろう。魔物は恐怖のあまり撤退を開始した。魔物も様子をみているのか攻めてこなくなり、そして夜が明けた。
陽の光に照らされ、ようやく何が起きたのかがわかる冒険者たち。丸焦げになっている魔物や隕石が落ちた跡がたくさん残っており、あれだけいた魔物の姿はほとんど見えなくなっていた。
砦の防衛は成功し、第一城壁の復旧作業を行い始める。
冒険者の一部は魔物の追撃隊を編成しており俺たちも編成に加わるよう言われたが、もちろん断った。ここから先は俺の仕事ではないし、そんな依頼を受けたわけではないから。
砦にも冒険者ギルドがあって今回の功労者を探していたのだが、俺は名乗り出るようなことをしない。こんな場所で名乗り出たらレッドブルの討伐隊に組み込まれてしまう可能性が高いからだ。
シンジュクの町へ戻る準備をしていたところ、ローラーさんたちが俺たちの部屋にやってきた。
「シノミヤ、シンジュクの町へ戻るのか?」
「はい。俺が受けた依頼は、砦の防衛ですから。第一城壁を取り戻したのなら俺たちは用済みですよ。復旧はほかの人たちに任せることにします」
「俺たちも武器がこんな状態だから一度町へ戻ることにしたのだが、お前らはトウキョウ都へ行こうとは思わないのか? シンジュクの町よりも良い武器や防具が売られているぞ」
「俺の武器はお手製ですから買ったことはありません。それにほら、彼女が持っている武器はミスリルロッドなんで、俺たちはそこまで武器に困っていないんですよ」
ミスリルロッドと聞いて驚くローラーさんたち。どうやって手に入れたのかと聞いて来るのだが、昔オクタマの洞窟で手に入れたと言ったら納得してくれた。オクタマの洞窟は未開の土地にあると言われているらしい。
「シノミヤは武器を作ることができるのか?」
「まあ、一応……。武器や防具は自分で作った方が信用できますからね」
「そういえば、嬢ちゃんたちは不思議な武器を使っていたな。あれは何だ?」
「あれは魔法の武器です。素材が高級品のため譲ることができませんよ」
「なぁ、俺たちの武器を手入れしてもらうことは可能か?」
「できなくはないですが、鍜治場が無ければできませんよ?」
「なら、俺たちもシンジュクの町へ戻るとするか!」
ローラーさんがアッキーさんたちに聞くと、二人はリーダーの指示に従うと言った。
乗り合い馬車でシンジュクの町へ向かっている最中、大勢の兵士とすれ違った。多分王宮の兵士がカサイ砦へ向かっているのだろう。
それから二日が過ぎたころに俺たちはシンジュクの町へ戻り、冒険者ギルドへ立ち寄った。
「おう、シノミヤ! カサイ砦はどうだった」
「何とか第一城壁を取り戻しましたよ。今は復旧作業と追撃隊の編成をしているところだと思われます」
ラインハルトのオッサンは何かを考えこむかのように頷き、俺たちに労いの言葉をかけた。できることなら余計な仕事を持ち込まないでくれ。
ローラーさんの姿にも気が付いたラインハルトのオッサン。ローラーさんたちのもとへ駆け寄り何かを話ている。ローラーさんとオッサンの話は長そうに感じたが、すぐに終わってローラーさんは俺に武器を作るよう言ってきた。
まだ覚えていたんだな……。
「なら俺の家へ来てください。武器と防具を新調しましょうか……」
「頼む」
ローラーさんたちを連れて家へ戻ると三人は驚いた顔をしていた。
「な、なんだ……この家は……」
「俺の家ですけど? 何か変ですか?」
「い、いや……」
明らかに動揺している。たしかにこんな現代風の家はどこを見ても無いだろう。
家の中に入っても驚きの顔は変わらず落ち着かない様子だ。
「ローラーさんの武器は斧でしたっけ? アッキーさんの武器は剣で、ルナさんはモーニングスター」
「そうだ。どれ程で作ることができる?」
「そうですね……明日にはギルドへ持っていきますよ」
了承したローラー。
「ローラー、これからについて話し合う件はどうするの」
アッキーさんが唐突に話を切り出してくる。ここで話をする内容なのだろうか?
どうやらトウキョウ都に行って仲間を探していたらしいのだが見つからず、三人だけで依頼をこなしていたらしく、そろそろ限界が違づいていたとのことだった。そのため、カサイ砦で仲間を探しに行ったところあの襲撃事件が発生したとのこと。
このような話を俺の前でしないでほしい。俺たちには関係のない話だ。
「じゃあ、俺は武器や防具の新調してきますんで……。ルノとシェリルは三人に食事や飲み物を出してあげてくれ」
俺は逃げるように鍜治場へと向かい、ローラーさんが使う武器である斧を作成していく。ローラーさんが使用していたのは鉄の斧だったので、鋼を使ったハルバートをなどがよさそうだと思い、鋼のハルバートを作成、次はアッキーさんの武器である鉄の剣だったが、ルノと同じ鋼の剣にしておこう。ルナさんはモーニングスターだったが魔法をメインとしているため、魔石を使った鋼の槍をにしよう。
三つの武器はメニューから作ることができるので物の数分で作ることができたが、今戻っても厄介ごとに巻き込まれると思い、俺は三人の防具も作ることにした。
ローラーさんは鉄の胸当てを装備していたので鋼に変えて、アッキーさんは鋼の鎧、ルナさんは鋼帷子を作成。これもメニューから作れるためアッという間に作成してしまい、俺は時間つぶしのために台所へ行って何か食事でも作ろうとしたところ、居間が何やら騒がしい。
何が起きているのかコッソリ覗いてみると、アッキーさんが興奮してテーブルを叩いており、ルノとシェリルは食事の準備どころではなくアッキーさんの声に気おされていたのだった。
「これからどうするって言っているのよ!」
この言葉を聞くことからスタート地点から全く動いていないことが明らかだ。
「だから仲間を探すと言っているだろうが!」
テーブルを強くたたくローラーさん。テーブルが壊れてしまうから強くたたかないでもらいたい。
ルノが俺に気が付いたらしく、俺のもとへやってきて教えてくれた。話は平行線のままだといことを……。そして、どうにかしてもらいたいとも言ってきた。
「あのぉ……。ご所望の武具が完成したんですけど……」
俺の言葉に一時話を中断して武器を見に三人は鍜治場へと向かったのだった。




