第53話 カサイ砦の攻防
トロルを始末して町に戻ると、アーノルドたちも町へ戻ってきていた。彼らはドラゴン退治移行、命を大事にするようになって身の丈に合った依頼を受けるようになっていた。
今回のようにギルドから依頼があっても自分たちよりもランクが高い人たちがいないと参加を見送るらしい。今回は俺が参加すると聞いたので安心して依頼を受けたとのこと。
仕留めたオークをギルドに渡し、俺たちは報酬をもらったのだが、やはりシェリルのランクがEからDに上がった。まぁ、トロルを仕留めたから当たり前だろう。
報酬を受け取ったので家へ戻ろうとしたところ、ギルドの中が騒がしくなった。俺は逃げるようにギルドを後にしようとしたのだが、ギルド職員が俺の名前を呼びやがった。
何が起きているのかだけ確認して、断って帰ろうと考えを巡らせる。
「カサイ砦の第一城壁が突破されました! トウキョウ都の王宮から応援要請が入っております!」
はい厄介ごとです! これは逃げるが勝ち! 俺は聞こえないフリをして家へと向かおうとすると、ルノが腕を引っ張って引き止めた。
「ご主人さま、町が危ないんですよ! どこへ行くというんですか!」
「そうよ! 砦が突破されたら町までやってくるんでしょ!」
ルノの言葉にシェリルも同意する。
「そうなったら王宮の兵士が出動するだろ。無理に俺たちが行く必要はないって」
「知っている冒険者さんたちがどうなっても良いんですか!」
痛いところを突くなルノ。
「シノミヤ、俺たちからも頼む……」
ラインハルトのオッサンが頭を下げてきた。ここまでされたら行くしかないじゃないか……。俺はスローライフを過ごしたかったのに。
「俺たちが行っても何ができるわけじゃないが、取り敢えずオッサンの顔に免じて行ってきてやるよ」
ギルドが馬車を何台か用意してくれたらしく、メタルプレート以上の冒険者と言っても、シルバーランクは俺しかいないので本当に数組のパーティが馬車に乗り込んでカサイ砦へと向かった。食料などはギルドの方で用意してくれた。
砦へ向かっている途中、避難民と思われる人たちと遭遇することがありその人たちから砦の情報を仕入れることができた。
カサイ砦もイタバシ砦も城壁は三つあり、カサイ砦はその一つを突破されたということである。レッドブルの一匹が関わっているとのことで、第二城壁を落とされるのも時間の問題かもしれないとの情報も入ってきた。
この事態を重くみた王宮も兵士を投入することを決めたらしくカサイ砦へ向かわせているとの情報も入ってきたが、一般兵士たちは徒歩で向かうため、俺たちのほうが早く砦に到着した。
第二城壁に登ってこようとする魔物に対して槍で応戦していたり、弓矢で狙い撃ったりしていたりしており、砦は随分と騒がしかった。
休むまもなく俺たちは第二城壁の防衛に回され、ルノやシェリルは迫りくる魔物目掛けて魔導ガンを撃ち放っており、俺は何故だか医療チームの方に回されてポーション作りに勤しんでいた。
夜になると俺は与えられた部屋に行くとシェリルとルノが休憩していた。
「二人ともお疲れさん」
二人に言うとルノは俺に気が付き抱きついてきたが、シェリルは素っ気ない態度で挨拶を返す。二人がどれほど頑張ったのか確認するためステータスを開いた。
ステータス※奴隷
名前:シェリル 年齢:16歳
種族:エルフ
冒険者ランク:Dランク ブロンズプレート
ポイント:90
Lv:18
HP:40
MP:112
STR:30
AGI:49
DEX:78
VIT:30
INT:83
忠誠心:35
【魔法】生活魔法・ファイアーボール1 ファイアーウォール1・ウインドカッター2・ウインドシールド1
【スキル】剣術レベル3・射撃レベル3
名前:ルノ 年齢:18歳
種族:獣人ハーフ
冒険者ランク:Cランク メタルプレート
ポイント:354
Lv:25
HP:150
MP:19
STR:96
AGI:99
DEX:66
VIT:94
INT:31
忠誠心:90
【魔法】生活魔法(清掃・掃除)
【スキル】剣術レベル4・射撃レベル7
二人とも結構レベルが上がっているのと、射撃のレベルも上がっている。しかしルノの知性がほとんど上がらないためMPも上がっていない。
ポイントを使ってMPを上げるか? いや、まだ様子を見た方が良さそうだな。
「ご主人さまは何をされていたのですか?」
「主にポーション作りだな。俺も戦うのかと思っていたけど、どういう理由か分からんが裏方に回されている」
俺が一人で蹴散らしてしまえば早いのだが、どういう訳か裏方でポーションを作らされている。まぁ、怪我人が多いと言うのも関係しているのかもしれないが……。
シェリルは生活魔法を使えるため、自身の汚れを落とすことができ、風呂に入ることなく眠りに就くという。ルノは魔力が少ないため風呂に入ってから眠ると言って、風呂場へ向かったのだが、風呂はお湯ではなく水だったため魔法を使って眠りについた。
俺は外の様子が気になったので見に行くと、怒号が飛び交いながら戦いが続けられており、このままだと本当に第二城壁が突破されるかもしれなかった。
「おーおーヤバそうだな」
安全そうな窓から眺めていると、複数の冒険者が地上戦を行い始めた。
「大丈夫なのか? 地上戦なんかやっても……」
そう呟きながら戦っている人を見ると、見知った顔の人がメンバーの中にいた。
「もしかしてローラーさんか?」
元銀翼の剣のリーダーで、シルバープレートのローラーさんと、ルナさん、アッキーさんが戦っている。
「大丈夫なのか?」
窓から見ているとローラーさんは危なっかしい戦い方をしており、ケガをした矢先にルナさんが回復魔法を掛けるといった戦い方をしていて、見ているとハラハラしてしまう。
剣士のアッキーさんの指示で三人には撤退を始めるのだが、少しだけ遅く敵に囲まれてしまった。
「やれやれ、見ちゃいられん。取り敢えずあそこに魔法をぶち込んでおこう」
ファイアストームをローラーさんたちのそばに放つと、突如として現れた火柱に魔物たちは巻き込まれる。その隙にローラーさん達は撤退することができ、俺はローラーさんたちがいる場所へ向かった。
ローラーさんたちのところに着くと、ローラーさんたちはボロボロの状態だった。俺はポーションをストレージから取り出して三人にぶっ掛けると、三人の傷は一気に治る。
「大丈夫ですか?」
俺は心配そうな声で三人に問いかける。
「おぉ、キョースケか! 助かった。お前もこの砦に来ていたんだな……」
俺に気がついたローラーさんが言う。
「はい、応援に駆け付けました」
「応援に駆け付けてくれたところ悪いが、この第二城壁は持たんかもしれん」
「ちょっと魔物の量が多過ぎる」
ローラーさんとアッキーさんが言う。
たしかに朝から晩まで魔物は休憩もせずに攻撃を仕掛けてきている。しかも、ゴブリンシャーマンやオークシャーマなどもいるため遠距離から攻撃してくるしまつだ。
「あきらめちゃ駄目よ! この砦が落とされたらトウキョウ都に魔物が侵入してしまうわ!」
弱気になっている二人にルナさんが言う。戦況的に厳しい状況なのに結構無茶なことを言うな……。
「王宮の兵士が来るまで持ちこたえれば我々の勝利よ! それまで頑張りましょう」
精神論を言ってきた。
王宮の兵士はどれ程で到着するのか分からないのに、どうやって凌ごうとするのだろうか。
ローラーさん以外の突撃隊が戻って来たがみんな傷だらけで見た目からして痛々しい。俺は戻ってきた突撃隊のみなさんにポーションを配る。
「傷も癒えたからもう一度押し返すぞ!」
ローラーさんたちが言う。脳筋とはこういう奴を言うんだな。俺は止めようとしたのだが、聞く耳を持たないローラーさんたちは再び突撃しに行くのだった。




