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第51話 冬到来から春へ

 魔導ガンを完成させて一ヶ月が経つ頃には外はだいぶ寒くなってきていた。そう、冬の到来である。

 この時期になると猪の気性が荒くなるので、猪狩りの依頼が増える。また、ウサギも増えることもあり、新人冒険者へ調査の依頼が出されるほどだった。

 俺はようやく冒険者ギルドへ向かい、受け付けでギルドプレートを渡した。


「おめでとうございます。シノミヤ様」


「へ?」


「シルバープレートにランクアップです。本来であればゴールドプレートでも構わないと思うのですが……」


 以下略。前にも聞いた台詞を言われたのだが、俺は半年も経たずにシルバープレート成り上がってしまった。

 イタバシ砦から戻って来たラインハルトのオッサンが元気よく挨拶をしてきた。


「よう、シノミヤ!」


「オッサン、戻ってきていたのか……」


「半月前に……だがな。お前は何をしていたんだ?」


 この一ヶ月は魔導ガンのテストを行なっていたりルノたちに指導していたりしていた。なんて言うわけにはいかない。

 ドラゴンの死骸はトウキョウ都へ運ばれたらしいが、先に魔石だけは回収しておいて良かった。


「色々だよ。で、今回は何かようか?」


「シルバープレート昇進おめでとうさん。では本題に入るんだがビッグボアの討伐をお願いしたいんだ。この時期は稀に現れて畑を荒らすんだ」


「――ビッグ……ボア?」


「あぁ。簡単に言うと大猪だな。この時期は猪は気性が荒いのは知っているだろ?」


「一応話は聞いてる。取り敢えずその依頼を受けるよ」


 という訳で寒空の下、俺たちはワカマツの森に来ている。


「寒い……」


「寒いわね。こんな薄着で彷徨くなんてバカじゃないの?」


 俺の言葉にシェリルが反応した。


「主人に向かってバカとは……酷いやつだな。おっと、獣の気配がする」


 気配がする方向にスコープ向けて覗いてみる。目的の獲物が闊歩していた。


「あいつの毛皮でコートでも作ろうかな……」


 そう言って俺はスコープ越しに見えるビッグボア目掛けてトリガーを引くとビッグボアの頭を貫通して倒れた。

 死骸を回収して町へ戻り冒険者ギルドへ向かう。考えてみたら商業ギルドに顔を出していないのでギルドランクはEのままだ。

 たまには顔を出したほうが良いだろうが、今は冒険者ギルドに顔を出して依頼達成の報告して、さっさと家に帰ろう。

 ギルドに到着して中に入ると、丸テーブルを囲むようにアーノルドたちが座っていた。


「よう、アーノルド」


 知らない仲ではないので声を掛けると、アーノルドは手を降って応えてくれた。何か大切な話でもしているようだった。

 受け付けで依頼達成の報告をすると、死骸の提出を求められた。もったいないが依頼達成の報告書代わりなので仕方がない。

 報酬を受け取ってギルドを後にしたのだが、外は冷たい風が吹いている。体の芯まで冷える。

 家にたどり着き中に入ると、俺は直ぐ暖房器具にスイッチを入れた。

 こっちの世界に来てわかったことがある。こっちの世界では香辛料がバカ高い。しかも質が悪すぎるのに高い。俺は胡椒の実調合することで良質な胡椒を手に入れることができる。しかし塩は取りに行かなければならないため、今は質が悪い塩を買わなければならない。

 塩は一キログラム金貨一枚もする。海に行ったことがあればテレポートできるのだが、行ったことがないためテレポートできない。

 翌日になり商業ギルドへ行ってみると、掲示板には胡椒や塩などの買い取り依頼がたくさん貼られていた。どうやらこの時期は需要が多いみたいだ。日本で生活をしていると不便なことは何もないが、異世界に来て現代科学の良さを痛感させられる。

 一応、胡椒の実はワカマツの森で採取することができるから大丈夫だし、他の香辛料もシブヤ大森林でも手に入る。しかし、塩だけは海でないと手に入らなかったというか、海に近い湖で採取ができる。

 シナガワ湖は海に近いが塩は取れない。行くのならミナト川に行かなければ手に入らない。ミナト川は海に繋がっているため塩が取れる。

 東北に行けば米が手に入るが陸路で行くのは難しい。何故ならサイタマ地方は魔物の巣となっており、レッドブルという魔物が支配している。

 チバ地方にはラットの王国で通行証が必要となる。これはトウキョウ都の王宮で貰わないとならないが、貴族しか貰うことができないらしく今の俺ではどうしようもできない。

 陸路が無理なら海路で行けば良いが、こちらも乗船券が必要となるが、乗船券を発行しているのはカナガワ地方のショウナンという町になるためかなり大変な旅になる。

 早く米が食べたいなぁ。

 胡椒は沢山持っているため商業ギルドに卸して報酬を貰い、ギルドを後にした。

 空を見ると曇っており、今にも雨か雪が降りそうな感じがするため今日はこのまま家へと戻り防寒着を作ることにした。拡張した際、裁縫部屋も作ったので服の生産が可能となった。

 取り敢えずウサギの毛皮を使ってコートを作り、ルノとシェリルの二人に渡す。

 二人はよほど嬉しかったのか家の中でも着ていた。

 夕方になるとシェリルが食事を催促してきた。

 たしか、こいつは家事全般やるために貰った奴隷のはずだが、今ではすっかり俺の仕事となっている。

 奴隷ってどう言う意味だったっけ?

 最近は家畜として豚なども育てられており、ラードが安く出回るようになっていて、卵も少しずつ流通し始めていた。

 寒くなると人だけではなく魔物も活動を抑えるらしく、まるで動物と変わらない。

 そのためカサイ砦の砦を修復する作業に人が駆り出されており、シンジュクの冒険者たちも駆り出されていた。

 もちろん俺にも声が掛かったが断りを入れたのは言うまでもない。雪が降り積もったときはルノが犬のようにはしゃいでいたが、俺とシェリルは家の中でのんびりしていた。

 そんな日々がずっと続けばよいのだが、さらに二カ月が過ぎると徐々に暖かくなり、街を歩いていると魔物による被害などの報告がギルドに入っているとの噂話を耳にした。

 本格的に魔物が活発になり始めたらギルドへ行こうと思っていると、突然声をかけられた。


「もしかして貴方がシノミヤ様ですか?」


 何処かで見たことがある人だったが誰だろう?


「そうですけど……貴方は?」


「ギルドの者ですシノミヤ様、探しましたよ!」


 ギルドに人が何用だろうか?


「直ぐに冒険者ギルドへ来てください!」


「え? あぁ、はい……」


 俺は連れられるようにして冒険者ギルドへと向かい、中に入った。


「待っていたぞシノミヤ!」


 地図のようなものを広げて何かを話ている中にいた、ラインハルトのオッサンが呼ぶ。


「いったいどうしたんですか?」


「オークの上位種であるトロルが現れたんだ!」


「トロル?」


 雑魚モンスターだが、オークよりは強い。俺からしたらただのカモにしかならない。

 ちなみに俺もレベルが上がっていたのだが、たった1しか上がっていなかった。レベル110。ポイントは5ポイントしか手に入らなかったが、無いよりはマシだろう。


「現在メタルプレート以上の冒険者はお前しかいない」


 聞くところによると、他の冒険者はイタバシ砦やカサイ砦へ向かったらしく、シンジュクの町でランクが一番高いのは俺だけらしい。


「トロル一匹程度だったらメタルプレートの冒険者でもどうにかなるんじゃないか?」


 行きたくない訳ではないが、緊急性が感じられないだけである。


「トロルがここらで現れるのは異常事態なんだ。しかも一匹ではなく四匹だ! アーノルドたちと共に討伐へ向かってくれ!」


 討伐するのは構わないがアーノルドたちを連れて行く意味が理解できない。ドラゴン騒ぎのあとアーノルドたちは地道に経験を積むことにしたらしいのと、ロロッソたちの代わりに三人ほど仲間に入れたらしい。

 アーノルドは顔が良いから女性にモテる体質らしく、今回仲間になったのも女性だという話だ。ある意味ハーレムだな。羨ましい。

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