第50話 拡張
乗り合い馬車での帰り道は順調で、魔物が襲ってくることなくシンジュクの町へと戻ってくることができて、俺たちは冒険者ギルドへは寄らずにまっすぐ家へ戻って布団へ直行した。
いくら魔物が出なかったとはいえ、家に帰るまでが遠足であり、帰りつくまで気を張っていたのである。もちろんルノだけではなくシェリルも同じだったらしく、馬車の中で何度も欠伸を堪えていた。
翌朝目を覚ますと、体が軽く感じた。
久し振りにベッドで寝ることができて安心したと言うのもあるが、仕事がようやく終わったという安堵の方が強い。
二人はまだ寝ているため取り敢えず朝食を作るか……。
朝食を作り終えると二人が下着姿でやってきたのだが、シェリルは油断していたらしく慌てて自分の部屋に戻って着替えてきた。
ルノはそのまま下着姿で朝食を食べ、顔を洗いに洗面所へ向かった。
うちの奴隷は自由気ままな生き物だ。
今日は一日ゆっくりする予定なので、俺は二人のステータスを確認した。
ステータス※奴隷
名前:シェリル 年齢:16歳
種族:エルフ
冒険者ランク:Eランク アイアンプレート
ポイント:60
Lv:12
HP:29
MP:87
STR:25
AGI:38
DEX:61
VIT:20
INT:63
忠誠心:30
【魔法】生活魔法・ファイアーボール1 ファイアーウォール1・ウインドカッター2・ウインドシールド1
【スキル】剣術レベル3
シェリルはレベルが4も上がっていた。
よくみるとウインドカッターもレベルが上がっているが、たった1だけだ。忠誠心は無いに等しいのが気になる。
名前:ルノ 年齢:18歳
種族:獣人ハーフ
冒険者ランク:Cランク メタルプレート
ポイント:319
Lv:18
HP:110
MP:15
STR:67
AGI:78
DEX:55
VIT:70
INT:20
忠誠心:90
【魔法】生活魔法(清掃・掃除)
【スキル】剣術レベル4・射撃レベル3
剣術レベルが4になっているし射撃レベルも3に上がっている。何よりレベルが18まで上がっているのは凄い。イタバシ砦の防衛戦に参加はしていなかったが、オークやゴブリンを倒しているからここまでレベルが上がったのだろう。
忠誠心も上がっているためルノを信頼できるだろう。
「ご主人さま、このあとは何をするんですか?」
下着姿のままルノが聞いてくる。二人きりだったら襲っていたかもしれない。
「二人の訓練でもするかな」
「訓練……ですか?」
不思議そうな顔をしながらルノは聞く。可愛いなぁおい。
「あぁ。二人にはもう少し戦力になってもらいたいし、シェリルには弓というか、銃を使えるようになってもらいたい。イタバシ砦では正直戦力外だったし」
シェリルの魔法は止めをさせるのかと聞かれたらNOである。多少ダメージを負わせる事ができる程度の魔法のため、止めを刺せる武器が必要だ。
「私は重たいものが持てないわよ。持ってもレイピア程度、弓なんて扱ったことすら無いわ」
ステータスを見ているのだからその程度分かっている。エルフのくせに弓が使えないとは情けない限りだ。
「練習すれば良いだけの話だろ。それに扱うのは弓じゃない」
俺はストレージからベレッタを取り出してシェリルに向けて構える。
「なにそれ? たしかルノも使っていたわね」
銃の威力を知らない人から見たら仕方がないだろう。それに火薬の原料となる硫黄が心もとないので取りに行く必要がある。
ここから一番近い場所はハコネ山になるが、カナガワ地方へ行かないといけないがもう少し改造できないかチャレンジが必要だ。
武器に魔石が使われているのでそれを応用した銃が作れれば問題ないが、研究するにしても鍛冶場を作らなければどうしようもない。
毎度ギルドに金を払うのも馬鹿らしいので、どこか鍛冶場を借りるか部屋を作るしかない。
俺はストレージに銃を仕舞った。
「うーん、やることが多すぎる。シンジュクの町から出ていき何処かに家を建てるか」
「訓練はどうするんですか?」
「鍛冶場があればもっと良い武器を作れるはずなんだよ」
「鍛冶場と訓練、何か関係あるんですか?」
「弾丸が心もとない。うーん……」
ルノに渡している弾丸も100発くらいしか無い。俺の弾丸も1,000発ほどしかないので本当にやばい。
椅子の背もたれに寄りかかりながらストレージ内を見ていると、磁石が目に入った。レールガンの弱点は熱処理と耐久性だが、オリハルコンとミスリルを使った武器が作れないだろうか。
魔力を火薬の代わりにして……オリハルコンを外装に使ってミスリルを導体レールにして……。
うーん、作ってみないとどうにもならんが、どうにかならんものかねぇ……。
もう少し家を拡張できれば良いんだが何かあったかな……。やっぱり不動産屋に相談するしかないな。
ルノに出かけることを伝えると、急いでルノは支度を済ませて出かける。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご要件でしょうか?」
俺は家の拡張ができないか相談するため、不動産屋へやってきたのだ。
「現在住んでいる家なんですけど、拡張できますかね?」
「えっと……先ずはお名前を教えていただいてもよろしいでしょうか?」
俺名前を名乗る。店員と思われる人は資料を取りに行き羊皮紙を持って戻ってきた。
「シノミヤ様ですね。この区画にお住まいになられてますね。おや、今はメタルプレートなんですね」
「はい、メタルプレートになりました」
「ならば金貨500枚で今の家を購入可能ですね。拡張するのであれば家賃は銀貨5枚になりますが、購入するにはシルバープレート以上になるか、1年以上の居住歴が必要になります」
「じゃあ、家賃を支払いますので拡張でお願いします」
「承知いたしました。では……」
俺はストレージから金貨を一枚取り出して店員に渡し、店を後にした。
家に戻ると拡張する準備に取り掛かる。もちろんルノとシェリルの二人にも手伝ってもらう。
鍛冶場は使う人の好みによって作りは異なる。炉を作り金床なども用意しなければならない。特製のハンマーはストレージに納まっているから問題ない。
三日三晩かけて鍛冶場を作り上げたのだが、何を目的に鍛冶場を作ったのかを思い出すのに一週間後だった。
ストレージからアダマンタイトとミスリルを取り出して特製ハンマーやノミを使い試作品を作ってみたのだが思っていたよりも重い。
もう少し軽量化が必要だろうが、先ずはこの試作品が使えるのか確認することが大事だろう。
町の外に出てワカマツの森へ向かう。ワカマツの森はシンジュクの町から歩いて30分ほどの場所にある。
「こんな森に何をしに来たのさ?」
シェリルが疑問に思ったのか聞いてきた。
「試作品の試し撃ちだ」
俺の言葉にシェリルとルノは首を傾げた。
弾丸はパチンコ玉で狙った木を魔力伝導で発射させてみると音はせずに弾丸が飛び出したのだが、目にも止まらないスピードで木を三本貫いた。
魔導ガンの完成だ。しかし、ルノが使うには魔力の消費量が多すぎる。もう少し抑える必要があるが、魔力の代わりになる物が必要になる。
俺はテレポートを使って自分の家に戻り、再び鍜治場にこもる。
アダマンタイトの代わりにオリハルコンを使い重さを改善、魔力の代わりに魔石を使うことで魔力の消費を抑えることに成功し完成した。魔導ガンの威力は木を三本貫くほどだった。
これで新しい武器作り上げることに成功した。鍛冶に魔導ガンが追加されてあった。弾丸はパチンコ玉で十分のため鉄さえあればいくらでも量産することができるのだ。




