第47話 砦の夜襲
ネリマ山はトウキョウ都では大事な山の一つである。何故ならネリマ山には鉄鉱山があり、そこで沢山の鉄を採集している。一応、銀鉱山や金鉱山もあるのだが、そんなに採取することはできないので国に管理されている。
金や銀が欲しければ海外のアフリカ地方か、中東に行かないと手に入らない。ミスリルやアダマンタイトはヨーロッパにある。
クリスタルなどは南米に行かなければ手に入らない。宝石類は北中米で手に入る。資金に困ったら宝石類を売り払うつもりだったが、お金は腐るほど持っているのでグータラ生活が送れるが、シンジュクの町のギルドは俺を放っておいてくれないようだ。
ギルドで聞くところによるとエルダードワーフは歳を取らないと言うか、永遠を生きていくらしい。まぁ獣人やエルフも長い年月を生きるらしいが、エルダードワーフは見た目も変わらないとのことだ。ヒューマンは寿命が短く、長くても80年との話である。ルノはハーフなので長くても250年生きられれば十分だろう。
話はそれたがネリマ山に関してルノに説明すると、鉄鉱山と聞き少しだけ身震いをさせた。
どうして身震いしたのか分からないが、鉱山があると言うことはそこに村は存在している。今回はその村の住人が山奥でドラゴンを発見したとの報告があり、調査へ行くこととなった。
休憩と補給のためにイタバシ砦へ立ち寄る。ここで二日ほど休憩してからネリマ山へ向かうのと、イタバシ砦にいる冒険者たちも合流して討伐にあたるとのことだったが、少し様子がおかしい。
イタバシ砦にたどり着くまでにオークやゴブリンなどに出くわしたが、ルノやアーノルドたちが無難に対処してくれた。俺はただ眺めているだけだった。
「イタバシ砦もカサイ砦と同じで、ここ最近魔物の襲撃を受けており俺たちはこのメンバーのままドラゴンの調査へ行くことになった。補給もできないとのことだ」
ラインハルトのオッサンが難しい顔で説明してきた。魔物の活発化にイタバシ砦も困っているようだ。
「今日はこの砦で一泊するが、明日はネリマ山へ向かうぞ!」
みんなは返事をして砦の外でキャンプをはる。俺たちもキャンプをはるためテントをストレージから取り出す。ルノは手伝い始めるのだがシェリルは全く手伝わない。シェリルに手伝うように言うとようやく手伝い始めるのだが、何からしてよいのか分からなかったらしい。
その夜、寝ているときに事件が起きた。砦から鳴り響く鐘の音。
それは魔物の襲来を知らせる音だった。
「起きろ二人とも!」
俺は隣で寝ているルノとシェリルを叩き起こす。
「うるさい音いですね……。この音、どこかで……」
目を覚ましたルノが目をこすりながら耳を傾けている。
「魔物の襲来だ! 起きて準備しろ!」
魔物の襲来と聞いてルノは慌てて起きて準備を始めるのだが、シェリルはすでに準備を終えていた。他の冒険者も準備を終えて駆け出している。
砦は大騒ぎ。魔法を使える者たちは詠唱している。もちろんシェリルも魔法を詠唱していた。
魔法を使えない者たちは砦の外で魔物を押し返していた。
「魔物を砦に近づけさせるな!」
ラインハルトのオッサンが声を上げて冒険者たちに指示を出している。魔物たちは砦に取り付こうとして押し寄せてくる。ここで魔物を抑えなければ国境を越えてトウキョウの土地まで押し寄せてくる。
「あわわ……。あんな数の魔物が!」
怯えるルノ。沢山の魔物を見たことがないため仕方がないだろう。
「落ち着け。ルノは俺が与えている武器を使えば近くで戦う必要は無い。シェリルは魔法で迎撃しろ」
「言われなくても!! 大いなる風の力よ敵を斬り裂け『ウインドカッター』!」
風の力によるかまいたちのような刃が魔物に襲い掛かる。ルノはストレージからベレッタを取り出して魔物に向けて撃ち始める。見たことのない武器に驚く冒険者たちもいるが、今はそんなことに構っている余裕はない。
魔物の襲撃は明け方まで続き、日が昇り始めたら魔物が引いていく。
ラインハルトのオッサンたちはドラゴン騒ぎよりも先ずはこの騒ぎを収める必要があると判断したようで、ここにとどまる話をしていた。
「オッサン、ここに留まる理由は分かったが……ドラゴンはどうするんだよ」
作戦会議をすると言われ、俺は眠いのを我慢して参加していた。
「ドラゴンは少数精鋭で行ってもらう。俺とAランク冒険者数名、それとお前らだ」
少数精鋭で行くのは分かったが、俺たちが行く理由はよくわからない。
「なんで俺たちが行くのさ? 俺たちはメタルプレートとアイアンプレートの三人パーティだぞ。たしかに少数で行くのは理解できるが、俺たちが行く理由にはならない」
「坊主たちのパーティも行かせるんだ。誰があいつらを護衛するんだよ」
「ちょっと待て、なんでアーノルドたちをドラゴン退治に行かせるんだよ!」
「坊主たちが行きたいと言っているんだ。俺には止められねーよ……」
言われなくっても分かっていると言った顔をしているラインハルトのオッサンとAランク冒険者たち。俺は深く溜め息を吐いてしぶしぶ了承する。セリナは砦に残り怪我人の治療にあたるとのことだった。自分の実力を把握しているということだろう。
「ドラゴンの調査が終わったらここへ戻り、砦へ戻って魔物の襲撃原因を調査に戻ってくるぞ」
砦に関してはレッドブルがけしかけているだけだろ。レッドブルの一匹でも仕留めれば落ち着くと思うが……倒せる奴がいないのか?
休むこともなくドラゴンの調査へと向かうことになった俺たち。俺たちの存在がイラついているのかアーノルドが俺を睨んでいる。
「アーノルド、俺が何をしたと言うんだよ……」
睨んでいるアーノルドに聞いてみた。
「実力を隠しているのが気に入らないんだよ!」
「別に隠してなんてないだろ。プレートのランクはギルドが決めるんだ。俺がとやかく言う話じゃない」
「彼女たちの武具は君が揃えたものだっていうじゃないか」
なんだよ、武具がうらやましいとでもいうのか? お前だって鉄の鎧や剣を装備しているじゃないか……何か付与されているのかは知らんけど。
「ミスリルなんてどうやっててにいれたんだ! ミスリル鉱山は国によって管理されているんだぞ」
「山奥で。貴重品だっていうのは知っているが国が管理していない場所だってあるんだよ。それに俺が持っていても仕方がないだろう。魔法に長けたエルフが持っていた方が良いだろ。それで俺を恨んでいるのかよ」
「僕らは君を気に入らない。その実力は国のために使うべきなんだ」
「俺はのんびりしたい。国に使えるつもりなんてまっぴらごめんだよ。今回でお前らを助けるのは最後だからな、次からは知らねーぞ」
俺はアーノルドたちと仲違いになった。彼らの目標は俺でなくても構わない。
険悪ムードのまま先に進んでいくと、魔物の気配を感知した。当然ルノも感知したらしく、ストレージからベレッタを取り出してグリップを握りしめた。
「魔物がきます! 武器を構えてください!」
オークやゴブリンであれば問題なく彼らでも仕留められられるだろうが、この感覚は雑魚モンスターとは違う。
「オーガの群れだ! お前たちは後ろに下がれ!」
そう言って彼らが引き下がるとは思えなかったが、言わなければ前を歩いているオッサンたちに低評価をあたえてしまう。いや、言わないで低評価を貰った方がよかったのかもしれない。
そして奴らは姿を現す。やはりゲーム時代と同じではなかった。落ち武者のような格好で頭には二本の角が生えている。鎧は鉄の鎧で、肌の色はまるで血に染まったかのように真っ赤だった。
ルノは持っていたベレッタで発砲して弾は鎧を貫くのだが、赤い血を垂らしながらオーガは持っていたこん棒を振り上げて地面を割るかのように叩きつける。
この一連の行動によって前を歩いていたオッサンたちも気が付いてやって来た。
「坊主どもは下がっていろ!」
オッサンは剣を抜いて構えオーガの攻撃を躱しながら腕を斬りおとそうとして攻撃をするのだが、オーガの体は想像よりも硬く、オッサンの刃は弾かれてしまう。
「えぇい! 鉄の剣では斬り裂けんか!」
違う。技量の問題だ。この程度が元Aランクだと言うのは信じられない。ルノは鋼の剣を抜いて構えているのだが、手が震えているのが分かる。
Aランク冒険者たちも駆けつけオーガと対峙するが、Aランク冒険者たちは驚いた顔をしてた。
「こ、こいつらはオーガじゃない! 奴らはハイオーガだ!」
ハイオーガはオーガの上位種であり、通常の武器では太刀打ち出来やしない。オッサンの攻撃が効かなかったのも仕方がなかったというわけなのだろう。




