第46話 ミスリルロッド
食事の時間になったが俺たちの食事はなかった。何故なら、各パーティで自炊することとなったがアーノルドたちは自分たちで食事を作ると言って食堂のあるキッチンへ向かった。
「本来ならシェリルが俺たちの飯を作るんだが……」
「私、食事を作ったことなんてないわよ」
じゃあ、なんで俺の奴隷になりたがっていたんだよ。もちろんルノも食事を作ることなんてできない。
仕方がないので俺の調合で食事を作ることにした。本当に奴隷って何だろうね。
こんな生活が一週間続くとなると気が滅入る。
翌日になり訓練が始まるのだが、俺に訓練する必要は無いとラインハルトのオッサンが言い、主に訓練をするのはルノとシェリルの二人が筋トレを中心に訓練を行う。
「オッサン、俺は何をすればいいんだ?」
「お前は俺と一緒に剣の訓練を行う」
どうやらオッサンは現役時の感覚を取り戻したかったようで、その訓練に付き合わせたかっただけなのかもしれない。剣の練習に付き合うこと六日間。オッサンはかなり自信をつけたようで体もしっかりと締まってきた。
残りの一日は親睦会を行うこととなり全員でバーベキューを行う。仕切りはラインハルトのオッサン。俺のそばには何故かセリナがいて、ルノが不思議そうな顔して見ていた。
「なんでお前が側に居るんだよ。お前はアーノルドたちと共に行動することになったんだろ」
この一週間で仲良くなったらしく、アーノルドたちにヒーラーがいないので経験豊富のセリナに声をかけたみたいだ。しかし俺はアーノルドたちと仲があまりよろしくない。そのためアーノルドたちと距離を取っているのだ。
夕方になり馬車でギルド前まで戻るといったん解散となった。今夜はAランクパーティで作戦会議を行うらしく明日の朝に出発することとなったらしい。
俺たちは家に戻り装備を整えることにした。先ずはルノが着ている冒険者の服の上に皮の鎧と皮の帽子、それと皮の盾。もちろん色々なエンチャントを付与している。武器は鋼の剣を作成して、ルノに渡した。
「これは鉄の剣じゃないですけど……」
「鋼の剣だよ。鉄の剣よりも切れ味がよくて、オーガにもダメージが与えられるだろう」
「こんなすごい物を私に与えてくれるんですか!」
「ルノに何かあられても困るからな。オーガの力は半端ない。蹴りだけで木を倒してしまうほどの力がある。今回は皮系で揃えたのは力が分散するからだ。これなら怪我をしても骨折程度で済むはずだ。できれば怪我をしてもらいたくはないが、最悪のシナリオを想定しての話だ。シェリルは魔法が得意みたいだからこの杖を使ってくれ。お前は後衛向きみたいだからな」
基本的にエルフは弓矢が得意武器だ。ハーフエルフやダークエルフは弓矢よりも剣が得意武器となっていたはずだが、ステータスを見る限りだとシェリルは魔法が得意なのが分かる。
「なかなかの代物ね。いくらで買ったの?」
「俺が作ったんだよ」
「嘘でしょ? 使っている素材はミスリルよ! 一般人が手に入れるなんて!」
「海の向こうにはミスリルなんてゴロゴロ落ちてるんだよ。この大陸では手に入れ難いからね」
驚いた顔をしているシェリル。俺はゲーム時代にヨーロッパの方へ行ってクエストをクリアしている。魔王討伐するにも必ず通る道なのだ。
まぁ、今なら木刀でも魔王を討伐することは簡単だが、それだとただの撲殺になってしまう。それに俺は世界を救うつもりなんて全く考えていない。世界を救えとは一言も言われていないのだ。
シェリルに渡したのはミスリルロッド。ミスリルはこの大陸では超高級品で、一般的出回ることがない素材だ。
シェリルは恐ろしく上機嫌になって自分の部屋へ戻っていくが、ルノは羨ましそうな目でシェリルの後ろ姿を見送ったあと、俺の方を見る。
「ミスリルか……」
「なんだよ、ミスリルがそんなに欲しいのか?」
「――いえ、そう言う訳ではないのですが……」
少しだけ唇を尖らせて俺を見ている。もしかして甘えたいのだろうか?
「おいでルノ……」
呼ばれたルノは顔を赤らめながら近寄ってきた。
「ご主人さま、新しい装備品……ありがとうございます」
そう言ってルノは俺の唇を塞ぐようにしてキスをしてきた。腕を首に回して舌を絡めてきたので、ルノを膝に座らせて胸に手を添える。
ルノは俺の顔を舐め、俺はルノの首筋をキスするとルノは息を荒くして……。最終的には一緒に風呂に入ってめちゃくちゃ絡み合った。
翌朝になり、着替えを済ませたあと朝食を作ってルノとシェリルを起こすと、何故だかシェリルは顔を赤らめながら朝食を食べる。
「熱でもあるのか?」
「無いわよ!」
そっぽを向きやがった。変なやつ。
朝食を食べ終わるとルノは俺が新調した冒険者の服を着て、皮系の装備に身を包む。
「いっぱしの冒険者だな」
「はい! ありがとうございます!」
お礼なら昨日の夜に沢山頂いたから良い。
シェリルも魔道士のローブを身に纏い、両手でロッドを大事そうに握っている。相当ミスリルのロッドを気に入ったのだろう。
「さて、冒険者ギルドへ行くか……」
俺はやる気が無さそうに言うとルノは元気よく「はい!」と返事をした。シェリルは無言だった。
冒険者ギルドの前に到着すると、ラインハルトのオッサンが声をかけてきた。
「よう、嬢ちゃんたちは武具を新調したみたいだな。で、お前は武具を新調しなかったのか?」
「当たらなければ必要ないでしょ。武器はストレージに仕舞ってあるだけだ」
「オーガは素早いぞ。大丈夫……と言っても、お前は言うことを聞かんだろう」
俺は口元を緩ませながら言っている意味が理解できないという風に首を傾げた。
それからしばらくして、アーノルドたちもやってきたのだが、セリナがシェリルのロッドを見て声を上げた。
「その色と輝き……もしかしてミスリルでは無いですか!」
「一流の冒険者は武器だって一流なのよ」
一流といっても、世界で見たらそこまでの武器ではない。一般的なロッドだ。
セリナが持っている杖は樫の杖で、一般的に武器屋で売られている汎用の杖。多少魔法伝導率が良くなるが、ミスリルは魔法伝導率が大幅に上昇する効果があり、この大陸の武器屋などでは先ずと言って良いほどお目にかかることができないだろう。
もちろんマリアンヌさんが持っている杖も樫の杖。二人は羨ましそうな顔をしてシェリルの持っているミスリルロッドを見つめていた。
この大陸で手に入れられる杖で最高ランクがミスリルだとして、世界で手に入れられる最高の杖は神魂の杖。神々のアイテムと言われておりオリハルコンとミスリル、アダマンタイト、クリスタルの四種類を合成しすると神魂といわれる素材が出来上がる。これは高い鍛冶能力がなければ作ることが不可能な合成アイテムで、世界中のどこにも売っていない素材となっている。もちろん俺のストレージ内に収納されているが、この大陸でSランクにならない限り持たせることはできない。もしくはそれに相当するレベルにならなければ渡すことはないだろう。それだけ高級品だということだ。
ラインハルトのオッサンが人数を数え、馬車に荷物を載せてからようやく出発することになった。しんがりはアーノルドたちのパーティが務めるため、俺たちも側に配置されることとなった。
イタバシ砦を西に向かったところにネリマ山はある。ネリマ山の街道を北に進めばサイタマ地方に入ることのできる。だが、サイタマ地方はレッドブルという魔物が支配しているらしい。その魔物たちがカサイ砦を攻めているという話だ。
まず最初に目指すのはイタバシ砦になる。イタバシ砦までは徒歩で二日ほど行ったところにある。そこで水と食料を補給してからネリマ山へ向かう。
「ご主人さま、ネリマ山とはどんなところになるんですか?」
俺の腕を引っ張りながらルノが聞いてきた。
ネリマ山はサイタマ地方につながる道のほかにオクタマの迷い森につながっている。オクタマの迷い森には強力な魔物が生息しているが、レベル300くらいではないと死んでしまうだろう。オクタマの迷い森には精霊族が生息しており、精霊族は人族との交流はほとんどないため知らない人が多いだろう。




