第43話 屋根の修理
オッサンとの話が終わりギルドをあとにしようとして出入り口の方へ向かうと、ジョアンのところに居た屈強な男が入ってきた。
「ここに居たのか……」
どうやら俺を探していたようだが、何のようだろうか?
「明日の人出はギルドの人を使わないでもらえないだろうか」
突然すぎる話だな。
「パーティに所属してない奴も駄目なのか?」
セリナに声を掛けてしまったし、アイツの生活力を考えると、適時に仕事を与えてやらないと死んでしまうと思う。
「ジョアン様が『ギルドに所属している人は信用できない』と言っておられたので、駄目だな」
セリナになんて言って断ろうか……。
「一応、そいつは俺の仲間なんだけど……それでも駄目か?」
「おかしいな。お前の仲間はそこの奴隷だけのはずだ」
よく調べてやがるなぁ……。
「あそこに座っている女だよ。おい、セリナ!」
待ってましたと言わんばかりにセリナは立ち上がって俺たちの方を見る。
「どうしたんですか? シノミヤさん」
呼んだら物凄い勢いでやって来やがった。
「彼女はセリナ。なぁ、お前は俺たちの仲間だよな?」
「仲間! そうです仲間ですよ!」
セリナは目を見開いている。仲間に飢えているんだな……。
屈強な男は信じられないといった表情で俺を見ている。セリナは何故か俺の腕を抱いている。胸が当たっている。ルノの視線が痛い。
「一緒のパーティでシナガワ湖へトゲトゲ草を取りに行ってるよ」
ギルドに確認してもらえば分かるが、その一度っきりしかパーティを組んでいない。先日の魔物襲来時に神殿で治療にあたっていたのは確認済みだ。それからどうしているのか不明だ。
「わかった。彼女は仲間なんだな? では一緒に生活を共にしているのか?」
「いや、別だよ」
そこは正直に言わせてもらう。
「ならば駄目だ。仲間とは認められないだろう」
屈強な男曰くパーティは常に一緒らしい。
「悪い、セリナ。さっきの話は無しだ」
俺の言葉にセリナは驚いた顔をした。
「ちょ、ちょっと待ってください! 私たちは仲間なんですよね!」
「その話は無かったことにしてくれ」
セリナがものすごい形相で俺の胸倉を掴んできたので、誰にも分からないスピードで顎先を殴ると、セリナは膝から崩れ落ちたので椅子に座らせて、屈強な男に仲間では無かったと説明して、俺とルノは逃げるようにギルドから出ていった。
「ずいぶんと騒いでしまったので当分の間はギルドに行けませんね……。セリナ様はどうして意識を失ったのでしょうか……」
呆れ顔でルノが言う。俺は悪くない。しかし……。
「一緒に住んでこそ仲間って考えは如何なものだろうか?」
「うーん、パーティは家族って意味なんじゃないですか?」
そんなもんかね……。
「考えても仕方がない。取り敢えず明日の準備をするため、木材でも取りに行くか」
「了解です」
俺たちは町を出てシブヤ大森林へ向かい、日が暮れるまで木を伐採しまくった。
伐採した木は鍛冶スキルで木材に加工することができるしベニアに加工することもできる。地面の土もセメントに調合することができるため、できる限り回収してから家に帰った。
家に戻り風呂に入ると、再びルノも風呂に入ってきたので俺たちはしっぽりしてから晩御飯を食べたのだが、寝る前も愛を育んだ。まるで猿のようだ。節度を持って生活しよう。
翌朝、俺たちはジョアンの屋敷というか奴隷商館へやってきた。壊れている場所は二階の屋根で、先ずは梯子を掛けて屋根の上へ登る。商館は二階建てとなっていて、二階にはどのような施設になっているのか分からない。
作業するにあたり人手が欲しいと言ったが、まさか奴隷の方々だとは思ってもいなかった。
ジョアンは好きに命令をして良いと言っていたが、指示し難い。奴隷の皆さんに大工経験があるのか聞くが、誰もやったことは無いと返ってきた。先ずは道具の使い方から説明する事となり、午前中は説明だけで終わってしまった。
昼になり食事を調合で作りルノに渡す。手伝いをしてくれる奴隷の皆さんは質素な食事を与えられ、なんだか可哀想だったので仕方なく温かいスープを調合してルノに配らせると、みんなはガッついてスープを飲み干した。
午後の作業は全体的に傷んでいる屋根を全部取っ払う事から始める。
「先ずは屋根を剥がしていこう。足元が危ないので注意するように。怪我をした人は直ぐに言って下さい」
俺の言葉に奴隷の皆さんは返事をして作業に取り掛かった。屋根は垂木だけになり、垂木の下に遮熱シートを張っていく。傷んでいる垂木や壊れている垂木の修繕を行い、鍛冶で作り出したを野地合板を全体に張っていく。
今日できる作業はここまでで、明日に持ち越しとなる。だが、明日やりたいことを口頭で全員に説明して俺たちは家へと戻った。
夜は屋台で簡単な食事にさせてもらい、明日は少し早めに行って作業するため、早めの就寝となった。
朝になり、俺たちは少し早めに奴隷商館に到着すると、屈強な男が数名の奴隷を並べて立たせていた。
「む、早かったな」
屈強な男が俺たちに気が付いて言った。できることなら今日で作業を終わらせたいからとは言えなかった。
「早く目が覚めたんだよ。今日手伝ってくれるのは彼らか?」
「うむ、そうだ。お前たち! シノミヤの言うことをしっかりと聞くんだぞ!」
そう言って屈強な男は去っていく。仕事がやり難い。
先ずは雨水が入らないように防水シートを施工していき、その上に屋根材を施工して屋根の修繕は完了である。
完成した屋根を見た奴隷の皆さんは、歓喜の声を上げる。古かった屋根が新しくなると、建物も新しくなった気がする。
ジョアンに屋根の修繕が完了したことを告げると、ジョアンは歓喜の声を上げた。
「素晴らしいぃでぇすぅ!」
「彼らが手伝ってくれたから早く終わったんだよ」
手伝ってくれなきゃまだ半分だっただろう。
「彼らが働くのは当たり前ですよぉ。私の奴隷なんですから。それで報酬の件ですが『お金』と『もの』どちらが良いでしょうかぁ?」
言い方が気に入らないが、揉めるのは得策ではない。お金はともかく物? もしかしたら俺が持っていないレアなアイテムか?
「さぁ、どちらか選んでくださーい」
お金は腐るほど持っているが、アイテムはいくらでも欲しい。
「じゃあ、物で」
「了解でぇすぅ。シノミヤ様もお好きですねぇ……。こちらへ来て下さーい」
レアなアイテムを嫌うやつなんていないはずだ。何をくれるんだろう。
家の中へ通されて二階へ連れて行かれると、高級そうなソファーなどが置かれている部屋へ案内された。何か特別な物なのだろうか。
ジョアンが手を叩くと隣に続いている扉が開く。何か嫌な予感がする。
開いた扉から出てきたのは、エルフの女性三名が出てきた。しかも全裸で。
これには俺もルノも言葉が出なかった。たしかに奴隷は物扱いされているが、俺が望んでいた『物』ではなかった。
「先日滅ぼされたエルフの王族が手に入りましてねぇ。それを一つ譲りまぁすぅ。自己紹介をしなさい!」
悔しそうな顔をしながらエルフの三人は自己紹介をしていく。奴隷紋のせいで逆らえないようだ。
「鮮度が命でぇす! さぁ、早く選んで下さぁい」
選べと言われても別に欲しいとは思っていない。ルノがいれば十分だ。
「ルノがいるから必要ないんですけど……」
「おやぁ? お気に召さないですか……」
悄気るジョアン。
「彼女らだったら金貨1,000枚はくだらないでしょう」
1,000枚! チラッとルノを見ると、ルノは好戦的な目でエルフたちをみていた。
王族ということは家事全般はやったことがな可能性がある。
「あの……申し上げ難いんだけど、家事全般ができる人をお願いできない? 彼女らは家事などできないと思うんだよね」
「たしかにぃ……。ランクは落ちてしまいますがよろしいですかなぁ?」
「え? あぁ、問題ないけど……」
そう言うとしばらく待つようジョアンに言われ、俺たちはソファーに腰掛ける。
「ライバル出現の予感がしますね」
真剣な表情でルノがつぶやく。そうそう簡単にライバルなんて現れるのだろうか……。




