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第40話 効能

 ポーションにはいくつかのレベルがある。

 品質が悪い、普通の品質、品質が良い、高濃度、超回復の五つである。

 調合レベルが低いと品質が悪いになり、調合レベルが高いと超回復のポーションが出来上がるのであるが、この超回復ポーションはハイポーション並みに回復する。

 ハイポーションも同じで五段階の品質があり超回復はエリクサーレベルの回復量を持ち、腕などが無くなっても生えてくるまで回復するのである。

 もちろん調合レベルが高ければ高いほど回復量は異なるのだが、俺のスキルはカンストしているため素材が適合していれば何を作っても最高品質になってしまうのである。逆に言うと素材が適合してなくとも普通や品質が悪いものが作成できてしまえるともいってよい。

 そして、普通の奴がハイポーションを作るのにトゲトゲ草を使用しなければ作れない世界で、雑草からでもハイポーションを作れる奴が、薬草でハイポーションを作ったとしたらこうなってしまう。


「シノミヤ様、ハイポーション(超回復薬)をどこでこんな大量に手に入れたのでしょうか」


 俺は商業ギルドの別室で話をしたいと言われ、連れていかれた先には尋問が待っていた。


「えっと、それは……。その……俺が作成した……物です」


 ざわつく室内。鑑定士が10人ほどいる中で俺は尋問のような質問をされているのである。

 さすがに油断していた。鉄の剣にエンチャントを二つしか付与できない世界で、俺は最低でも10は付与できてしまう逸失な存在だった。そんな奴がハイポーションを作ったとなれば、この世界ではエリクサー並みの回復薬になってしまう。

 しかもだ、彼らの話を聞いている限り、回復量でポーション、ハイポーションと決めているらしく、どうやら俺のはエリクサーの劣化版という扱いになっているようであるが、その回復量は本物のエリクサーに負けじと劣らずといったレベル。簡単に言えば書物に描かれた物が目の前にあると言ったような話なのである。実際にエリクサーは存在しているらしいが、王宮で管理されているようで一般の道具屋などの店員が持っている代物ではない。しかも、商業ランクEの俺ごときが扱ってよい代物ではないという話である。

 現在は、盗難の容疑にかけられていると言ってもおかしくないのである。


『自分で作っただと? このような伝説級の代物を自分で作れるはずがない』


 伝説級扱いだった。

 さらに話を聞くと、エリクサーの調合レシピは存在しておらず王宮に保管されているのがこの国で最後のエリクサーとなっているらしい。しかも国には残り僅かしかない代物を、俺は50本も差し出したのだ。しかもハイポーションとして……。

 そこで大問題となり、冒険者ギルドにいる尋問官を召喚して俺が本当に作ったのか調べることとなった。


「よう、シノミヤ。今回はずいぶんと派手なことをやったみたいだな」


 ラインハルトのオッサンが笑いながら言う。

 このオッサンは、尋問官の護衛として一緒にやってきた。尋問官は女性らしいが、フードを深くかぶっており顔はよく見えない。

 さらに別室へと連れていかれ、俺とオッサン、商業ギルドの副ギルド長、尋問官の四人だけで行うこととなった。もちろん武器は没収されている。


「さて、これから本当のことを話してもらうのね」


 おや、尋問官の声がずいぶんと若い。しかも語尾が変だ。

 尋問官はフードを取り俺の眼を見つめてきたのだが、尋問官の眼は右目は普通に茶色い瞳なのだが、左目は赤い目をしている。いわゆるオッドアイってやつだ。


「このポーションは何の素材で作りだしたのか説明するのね」


 顔を見る限りではものすごく可愛い。だが、その目は俺の魂を見ているかのように見つめており、少しだけ恐怖を感じてしまう。


「薬草を使ったポーションです」


 じっと見つめられるが、嘘はついていないので真剣な目で見つめ返す。


「どうやら彼は嘘はついていないようです。どうやってこのようなポーションを作ったのかは分かりませんが、彼の心を見る限り薬草で間違いはないのね」


 俺はホッと息を吐くが、嘘は言っていない。


「そういえばこいつは五つの付与された剣を冒険者ギルドへ売りにきていた。エルダードワーフならではの技法ってやつがあるのかもしれないな」


 ラインハルトのオッサンが口出ししてきた。それからいくつか質問されたのだが、嘘偽りなく話すとようやく解放された。


「ご主人さま! 大丈夫でしたか!」


 心配そうな目で俺を見つめてくるルノ。本当に心配した表情をしていた。


「問題ないよ。報酬をいただいて帰ろう。正直疲れたよ」


 そう言って帰ろうとしたとき、町の中心部にある鐘が激しく鳴り響く。これは緊急を要した鐘である。ゲーム時にもあり魔物の襲撃イベント時に鳴り響くのだ。


「な、なんですか……この鐘の音は?」


 怯えた様子のルノ。騒がしい商業ギルド内。何が起きているんだ?


「ルノ、冒険者ギルドに行くぞ!」


「りょ、了解です!」


 俺たちが駆け出す前にラインハルトのオッサンが尋問官を抱きかかえて走り出していた。

 追いかけるように俺たちも走った。

 冒険者ギルドに到着すると商業ギルド以上に騒がしい。


「緊急事態です! 魔物の群れ……ハーピーの群れが町に迫っております! 弓や魔法を使える冒険者は壁の上や屋根の上で撃退を! 他の冒険者は迎撃に備えてください!」


 ギルドの受付嬢が大声で叫んでおり冒険者たちはワサワサと動いていた。


「ルノ! 俺たちも行くぞ!」


「は、はい!」


 町を囲んでいる壁の上に上る。すでに知らせを受けていた冒険者たちが陣取っており、俺たちが何かをできるスペースはなかった。しばらくしてハーピーの姿が見えてきたが、弓や魔法で届く距離ではなさそうだった。


「これはやばいな。ルノ、迎撃の方へ行くぞ!」


「は、はい!」


 大体50匹ほどいるハーピーの群れが地上に降りてきて住民に襲い掛かっている。町の冒険者が対応しているが相手の数が多すぎる。

 ルノはベレッタを取り出して空にいるハーピー目掛けて狙撃すると、翼に当たったのか空から落ちてくる。それに便乗した冒険者が止めを刺し、手柄を立てる。


「そ、そいつらは私の獲物です!」


「そんなことを言っている場合か! 今は襲われている人を助けるのが先だ!」


 俺は剣を取り出して襲っているパーピーの背中を斬り付ける。ルノは相変わらずベレッタを手にして空のハーピー目掛けて撃っている。


「ルノ! 翼ではなく頭を狙え!」


「む、無茶な……」


「だったら地上に降りてきたやつを狙うか、屋根にいる奴を狙え!」


「りょ、了解です!」


 それから一時間ほどしてハーピーの群れを撃退することができたのだが、町は甚大な被害を受けていた。


「ひ、酷い……」


 町の状態を見てルノがつぶやく。


「怪我人が運ばれているところへ行こう。きっとポーションが必要になるはずだ」


 怪我人は神殿へと運ばれており、回復魔法が使える者たちが怪我人の治療に当たっているのだが、人数が乏しいため手が回っていないように見える。治療に当たっている中にセリナの姿もあり、必死に声をかけながら包帯などを巻いていた。どうやら魔力切れのようだ。


「ルノ、怪我人にポーションを配れ! 魔力が尽きたものにはエーテルを配るんだ」


「りょ、了解です!」


 ストレージにあるポーションとエーテルを取り出してルノに渡し、俺は町民たちの治療にあたろうとしていたら、見知った顔の男を発見した。


「おおぉ! シノミヤ様!」


「あんたは……奴隷商会の!」


「はい、ジョアンでございますぅ」


「あんたは大丈夫だったのか!」


「私は大丈夫だったんですが……商品に傷がつきましてぇ、誰か治療ができる人を探しておりましてぇ」


 相変わらず独特なしゃべり方をする奴だ。


「誰か怪我人でもいるのか?」


「相当な深手を負ったものが数名、軽い怪我をしたものが大勢おりますですぅ」


「なら、俺が治療してやるから連れてこい!」


 ジョアンは首を横に振った。


「商品なものなので鮮度が命となってしまいますぅ。逃げられては困るので……」


 怪我を理由に逃げる者がいるから連れだせないと言っているらしく、ジョアンは困った顔をする。するとポーションとエーテルを配り終えたルノが戻ってきた。


「ご主人さま! 配り終えました……あっ!」


 ジョアンの姿に気が付き、ルノは固まる。


「おや、彼女は……大拙に扱っておるのですねぇ……」


 そう言いながらも困った顔をするジョアン。俺は仕方なしに奴隷商館へと向かうこととなった。

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