第39話 どうでもよい話
二日目の採取が終わったころセリナがどうするのか聞いてきた。
「これだけ採取すればよいかと思います。ですが、すでに二日も採取に時間をかけており休憩なしで戻るにしても期日までに間に合いません。どうするつもりですか」
「分かってるって。ルノとセリナは俺につかまるんだ」
ルノは俺の腕に抱きつき、セリナは肩に手を置く。俺はテレポートの魔法を使うと一瞬でシンジュクの町にある自分の家の前に現れる。突然家の前に現れたことで二人は驚いた声を上げた。
「そういえば、ご主人さまは大魔法使いでした……」
別に大魔法使いというわけでもないが、一度行ったことのある場所ならば一瞬で移動できる。セリカは失われた魔法をいとも簡単に使う俺に対して絶句していた。
「これで依頼達成だな。すぐにギルドへ行ってオッサンに依頼の物を渡してこよう」
ルノは返事をしたがセリナは無言のまま俺をみていた。翌日にトゲトゲ草を持っていっても良いのだが、早く終わらせてゆっくりしたいので、戻ったその足でギルドへ行き受け付けで採取したトゲトゲ草を渡すと、ラインハルトのオッサンがやってきて労いの言葉を俺たちにかけた。
「言葉はいらんが報酬をよこせ」
「分かっている。これが報酬の金貨二枚だ。何か問題はあったか?」
「普段では現れることのないアーマーオークが現れたくらいだな。あとはトウキョウ都の冒険者と会って、カサイ砦について話を聞いたくらいだ。このトゲトゲ草で作られるハイポーションは砦に持っていくのか?」
「そこまで知っているのか。だが、この依頼は商業ギルドからだから俺からは何ともいえん。だが、この町からも応援を出す可能性があることだけは確かだな。しかしシルバープレート以上の冒険者限定だから、数は知れているがな」
シルバープレートと言うことは、ローラーさんたちになるのか。しかし、魔法使いのミランドさんの代わりをつとめれる人はいるのか?
報酬の金貨一枚をセリナに渡す。セリナはラインハルトのオッサンに用事があるとのことで、俺たちはギルドで別れて家に戻った。これでしばらくの間はゆっくりすることができる。
家に戻りルノは直ぐにお風呂へ向かった。生活魔法を使えばすぐに綺麗になれるからといっても、心が癒されるわけではない。ルノは心の洗濯をしに風呂へ向かったのである。多分……。
ルノが宿屋でゆっくりしている間に俺は自分のステータスを確認していると、レベルが上がっていないことに気が付いた。あの程度の魔物ではレベルが上がることはないということか。しかし、ルノのレベルを上げる必要があるのと、スキルももう少しだけ上げても良いかもしれないが、本人が戦う気がなければ意味がないだろう。でも、ここ幾日か忙しい日々が続いたので少し冒険者は休業しようかな。
翌日になり朝食を食べていると家の玄関が叩かれ俺はルノの顔を見るのだが、ルノは聞こえないふりをしながら朝食を食べている。
「ルノ、お客さんがやって来たみたいだぞ」
「そのようですね。こんな朝早くからやってくるなんて失礼な人ですよね……」
出る気はない。そういった様子でルノは言う。もう、クーリングオフはできないのだろう……。ルノが対応してくれないので仕方なく俺が玄関へ行くと、そこには身なりの良い兵士が立っていた。
「ここはシノミヤ殿の住まいでよろしいか?」
「え? あ、はい。俺がシノミヤですが……」
「冒険者ギルドから連絡は受けているか?」
連絡? 何の話だ?
「いや、何も聞いていませんけど……」
「おかしいな。ラインハルト氏に話てあるのだが……」
そんな話をしているとセリナがやって来た。
「どうしたんですか? シノミヤさん」
「いや、俺にも何の話か分からないんだけど、ギルドに話をしてるって……。それでセリナは何の用なの?」
この人もそうだけどセリナも何の用なのだろうか。
「私はあなた方の仲間になったのですから……。それにあなたの能力にも興味があります。失われた空間……」
「セリナちょっと待って! 取り敢えず待って! 先ずはこの人が何の用なのか確認するから!」
テレポートに関して探りを入れてきたと言うのなら人がいない場所で話をしなければならない。俺は最初に訪ねてきた人に話を振る。
「私は辺境伯様の使いでやってきました。この度、カレンお嬢様を救っていただき感謝いたします。ぜひご挨拶をという話に……」
「あっ、そういう話なら結構です。俺はギルドから依頼を遂行したまでですから……」
「承知いたしました。旦那様にはそのように伝えさせていただきます」
身なりの良い兵士はお辞儀をして帰っていったのだが、次の問題はセリナである。
「取り敢えず中に入ってくれるか」
セリナを中に入れ話を聞くことに……といっても、内容は先日と変わらない内容だと思うのである程度話を省くとしよう。
「ありがとうございます……」
セリカはリビングの椅子に腰かけると、ルノは水を出す。そんな奴に水を出す必要もないのだがね。
「それで仲間になったという話だけど、あれは一時的っていう条件だったはずだろ」
「私は戦力になります! そこらのヒーラーよりも私の魔法の方が!」
「そういう話なら先ずは体力をつけてくれ。この間だって俺が治療したんじゃないか。あんたは体力が無くてグッタリしていただけだろ」
「私だって戦えるんです!」
メニュー画面からセリナの名前が消えていることから、すでに仲間ではないと判断されているようだ。このまま話を押し通す!
「それに俺はしばらくの間、冒険者の仕事を休むことにしているんだ」
「それでどうやって生活していくつもりなんですか!」
強い口調でセリナは言う。まるで俺の母親か何かかよ。
「俺はゆっくりしたいんだよ」
「そうですか。言い忘れていましたが、ギルドからシノミヤさんに正式依頼すると言ってましたよ。カサイ砦の件を」
「お断りするから大丈夫だ」
「無理だと思いますけど……なら最後に、失われた空間魔法はどうやって習得したんですか?」
「俺はエルダードワーフだ、使えて当たり前だろ。話は終わりだ、帰ってくれ」
悔しそうな顔をしてセリナは立ち上がって玄関に向かう。
「私は諦めませんからね!」
捨て台詞を吐いてセリナは家から出ていった。
「大丈夫なんですか?」
ルノが心配そうに聞いてきた。
「自分で戦えると言っていたんだ、たぶん大丈夫だろ。それよりもルノ、お前こそ大丈夫なのか?」
「何が……ですか?」
「俺に貰われてからなんの役に立っていないぞ」
そう言うと、ルノは驚いた顔をして俺を見る。見られたからといって、何かが変わる訳ではない。
「そ、そんなことありません! ご主人間のために私だって戦えますよ! 炸裂魔法のこもった凄い武器を貰っていますし!」
「そういうのなら、実力を示してくれよ」
「も、もちろんですよ! 私は働ける凄い女なんですから!」
働かない凄い奴隷の間違いではないのだろうか……。
「取り敢えずギルドにはしばらく顔を出さない方がよさそうだな。セリナみたいな奴がいても困るし、変な依頼を受けさせられても迷惑だ」
「そ、そうですね。のんびりしているのが一番ですよ」
いやいや、お前は働け。
のんびりすると言ってもやることをやらねばお金は無くなっていくため、冒険者ギルドではなく商業ギルドに顔を出して掲示板に目をやる。すると、ポーションやハイポーションの生産依頼が掲示板に張られており、数に応じて金額が上がるとのことだった。
ハイポーションを作るには薬草とトゲトゲ草が必要だと記載されているのだが、これは間違いである。実際のところトゲトゲ草が無くてもただの薬草で作ることは可能であるが、これには調合スキルが50ほどないと作成ができない仕様となっている。……ゲーム内での話だが。
だが、俺のメニュー画面には薬草しかないがハイポーションは作れるため、あながち間違っていないはずである。
ハイポーションをメニュー画面から作成して商業ギルドの受け付けに持っていくと、本当にハイポーションなのか効能を調べるためしばらく待つように言われた。こういうところはお役所仕事と似ている。
だが、この時の俺はものすごく油断と勘違いをしていたことに気が付いてはいなかった。




