第3話 商業ギルドにて
渡された地図を確認してみると、どこかで見たことのある場所に記されており、俺は傾げながら地図で記された場所へ向かってみたら、ステラおばさんの家が商業ギルドになっていた。
「どういう事だ? これではステラおばさんのイベントが起きないじゃないか……」
入り口付近で悩んでいても、仕方がない。
しかし、ステラおばさんのイベントがないと、ストレージが使用できないので、大変不便な生活になりそうだ。
「まぁ、取り敢えず中へ入るか……」
ギルドの中へ入ると、恰幅の良い男たちが談話していたり、掲示板などをみて仕事の依頼を受けるか考えていたりする者がおり、俺は躊躇してしまった。
「……凄い賑わいだな」
自分の目的を忘れてしまうほどの賑わいで、俺は呆けながら受け付けのある場所へ向かった。
「いらっしゃいませ、ここは商業ギルドです」
受け付けの前に着いた瞬間に言われ、自分が何をしに来たのか思い出した。
「あの、えっと……。ギルドに登録したいんですけど……」
言葉に詰まりながら本来の目的を言うと、受付嬢は表情変えずに書類を用意して、俺に差し出した。
「ギルド登録でしたら、こちらの書類に記入していただきます。また、登録料は銅貨五枚になります」
お上りさんの扱いに慣れているらしく、受付嬢は慣れた様子で対応してきた。
銅貨は先ほど冒険者ギルドで使用したため、仕方なく銀貨を出すと、舌打ちのような音が聞こえてきたので受付嬢を見たが、先ほどと変わらない表情でこちらを見ている。
何処から聞こえたのか謎だが、聞こえてきた場所が分からないため気にしないでおこう。
差し出された書類に目をやり、書かれている内容を確認すると、冒険者ギルドと変わらない内容だった。
取り敢えず記入欄を埋めてから再び血を垂らして、受付嬢に渡すと、冒険者ギルドと同様に種族名で驚かれると、同じような言い訳をしたら、再び舌打ちが目の前から聞こえてきた。
どうやら、この受付嬢が舌打ちをしているようだが、表情を一切変えずにしているのが凄いと思ってしまった。
「それでは、商業ギルドやストレージについて説明をさせていただきます」
さらっと大事なことを言われて、俺は目を丸くしてしまうと、再び舌打ちが聞こえた。
「お客様、どうかされましたか?」
受付嬢の相変わらず表情は変わってない。
「い、いえ……。ストレージって、収納のことで間違いないですよね?」
どうして商業ギルドでストレージの話が出てくるのか分からん。
そして、ステラおばさんは何処に行った?
「間違っていませんよ。では、まず最初にストレージについて説明いたしましょうか。ギルドカードに物を収納する事ができるようになります。冒険者ギルドで発行されたプレートにも、ストレージ機能はありますが、あちらはランクが低いと収納スペースが少ないです。もちろん、商業ギルドのカードもランクに応じて収納スペースが決まっておりますが、冒険者ギルドのプレートよりかは大きいな物になっております」
冒険者登録の時にはその説明を聞き逃していたようで、確認のためにプレートを取り出してみた。
「あら、すでに冒険者登録は済んでいるようですね。使い方は同じなので、次の説明をいたしますね」
受付嬢は次の話を始めようとして、俺は慌てた。
「あー、ちょっと待って! 冒険者登録をしたけど、ストレージの説明は無かったんで、申し訳ないが使い方を教えて頂けないですか!」
再び表情を変えずに舌打ちされた。
「プレートやカードに魔力を流すだけです」
魔力?
「精神を集中させて、手のひらに血を巡らせるイメージをしてください」
俺が魔力操作できないのだと悟られたらしく、受付嬢は魔力操作の手本を見せてくれて、俺は真似るようにプレートに血を巡らせるイメージをしたところ、目の前に空間の歪みらしきものが現れた。
「ちなみに、今、お客様の目の前に見えている空間の歪みですが、他の人には見えません」
完璧に田舎者扱いされているようだが、それは仕方がないだろう。
俺は目の前にある空間の歪みに手を入れると、何かが触れた気がした。
「中に物がある場合、リスト表をイメージすることで、中にある物が分かるようになっています」
「リスト表をイメージですか……」
言われた通りにリスト表をイメージしてみると、ストレージの中には様々なインゴットが収納されていた。
これは俺のゲーム内で収納していた物で、そのまま引き継がれていたようだ……全部ではないけど。
「ストレージに関しては以上となります。話を進めても良いですか?」
完全に田舎者を扱う対応だった。
商業ギルドでは、露店を開く際に、期間許可書の発行や空き店舗などの斡旋を行っており、家を借りる際にも、商業ギルドが案内をしているらしい。
他には、ギルドの地下に鍛冶場などの施設があるらしく、お金を支払えば鍛冶場などの施設を使わせてもらえるとの事だった。
先ずは貧弱な装備をどうにかしないといけないが、先立つお金が無いので、資金集めから始めなければならない。
ちなみに、受付嬢の名前がステラでおばさんではなかった。