第38話 活発化
三日が過ぎようやくシナガワ湖に到着したのだが、すでにセリナがグッタリしている。何故グッタリしているのかと言うと、食料集めも平行に行ってきたからだ。できる限りセリナにも戦闘を行ってもらいたいし、不足している連係も補いたかった。
おかげで鹿や猪、ウサギなどを仕留めることができたので、食料的にはだいぶ補うことができた。セリナの実力も把握できたが、正直に言ってルノよりも使えない。
動物相手ならなんとか戦えるのかと思ったが、全くの戦力外。今までどうやって獲物を仕留めていたのか聞いたところ、エレンが魔法で動物などを仕留めていたそうで、瀕死の魔物に止めの一撃を与えることしかできなかったそうだ。それでもレベルが10というのは良い方なのかもしれない。
そういう事で動物狩りは仕事ができないセリナを放っておいて、ルノと二人で動物狩りをしたという訳だが、気配のある方へ寄り道しているため体力が少ないセリナはグッタリしているのである。
しかし、本来の目的はトゲトゲ草。ここからが本番なのにグッタリされても困ってしまう。ギルドの依頼はトゲトゲ草できる限り集めてほしいとの事だったので、採取する前にトゲトゲ草がどういう物なのかルノに見せた。セリナは動けそうもないので安全な場所にいてもらう。
トゲトゲ草とは、名の通り花が棘でできている草で、素手で掴み取ろうとすると棘を刺してくるのでナイフで切ってから草を取らなければならないのだ。
ルノにナイフを渡し魔物が現れたらベレッタを使うように言うと、リザードンとはどのような魔物かとルノに聞かれた。リザードンとは簡単に言うとワニが二足歩行してくるやつである。ワニのような短足のくせにかなりの速さで動き、牙や爪で攻撃してくる魔物である。
トゲトゲ草はゲームの時と同じ場所に生えておりルノと二人で採取していた。採取していると離れた場所から叫び声が聞こえてきた。
「この声はセリナか? あっちには行っていないはずだが……」
「あの声は別の人ですよ」
冷静な声でルノは言う。自分たちに被害がないときはいつもこんな感じだ。
「じゃあ誰なんだよ。あっちの方がセリナか」
「そのようですね。セリナ様は動いていませんから」
そうとう疲れていたので寝ている可能性もあるが、今はそんなことを考えている場合ではない。
「ルノはセリナを連れてこい! 俺は叫び声があったところへ向かう。」
「了解です」
セリナがいると思われる場所へルノは向かい、俺は叫び声がした方へ向かう。気配察知では人と魔物が争っているような感じで動いており、叫び声は悲鳴に近い感じがした。
シナガワ湖の側には森が広がっており叫び声はそこからしてきており俺は木の陰に隠れてようすをうかがってみると冒険者と思われる人たちがオークに似た魔物の群れと戦っていた。だが、オークに似た魔物の群れの方が一枚も二枚も上手で冒険者と思われる人たちは苦戦していた。と、言うよりも負けそうだ。ヒーラーだと思われる女性は怪我をしており先ほど叫んだのはこの女性みたいだな。
ただのオークだったらこの冒険者たちでも倒せそうだったが、戦っているオークは『アーマーオーク』という種類のオークだ。オークハンマーの上位種にあたる魔物。シナガワ湖辺りで出る魔物ではない。とにかく早く加勢してやらないと危険だ。
「加勢します! てりゃー!」
そう言って俺は後ろからアーマーオークを蹴っ飛ばした。
「誰だか知らないが感謝する!」
リーダーっぽい男性が言ったが、どうやら怪我をしているよで動きが鈍い。他にも倒れている人がいて、このままではこの人達はやられてしまうだろう。
魔物の注意を引き付ける必要があり、俺はスキルの『挑発』をつかうとアーマーオークたちは俺の方に向かってきた。アーマーオークは鉄の鎧を着たオークである。しかも鉄の剣や鉄の斧を装備しており、その一撃はすさまじい威力である。だが、俺の敵ではない。
アーマーオークが剣を振り落としてきたところを一寸の極みで避け、首元に剣を突き刺す。仲間のアーマーオークが加勢するように斧で薙ぎ払ってこようとしてきたところをジャンプし、斧を踏み台にしてアーマーオークの顔面に膝蹴りをいれて頭を吹っ飛ばした。残りは二匹をアーマーオークよりも早く動き、首を斬り飛ばしてアーマーオークたちを倒した。
倒し終えた頃にルノたちがやってきたのだが、ゲストも連れてきた。リザードンたちである。
ルノたちは必死な顔して逃げている。と言うか、自分たちでどうにかしてもらいたい。
「ご主人さま~! 助けてぇぇ!!」
動けないセリナを背負いながらルノは言う。本当に残念ガールだなこいつら……。俺はストレージからベレッタを取り出してリザードンめがけてトリガーを引く。俺ばかりレベルアップしても意味ないだろ……。リザードンとアーマーオークあわせて12匹。俺一人で討伐するハメとなった。
「セリナ、怪我人の手当てを頼む」
「承知いたしました」
と、言ったもののセリナは這いずりながら怪我人のところへ行こうとしており、どちらが怪我人なのか分からないといったように見える。結局俺が全員の治療をしたのは言うまでもない。
彼らはトウキョウ都からやってきた冒険者らしく全員Cランク……メタルプレートの冒険者でパーティ名は『暁の星』という名前らしく、リーダーの名前はエルマンで獣人。剣士のサルバートにヒーラーのルミナス、魔導士シャルの三人はエルフで、ヒューマンの剣士ソルトとイルクの六人。彼らはトゲトゲ草を採取しにやって来たとのことだったが、あともう少しでシナガワ湖というところでアーマーオークが現れて襲われたとのこと。
「そっちもトゲトゲ草を採取しに来たんですか?」
エルマンが聞いてきた。
「商業ギルドからの依頼らしくてね。シンジュクの町の冒険者ギルドから無理やりお願いされたんですよ」
「そうですか……。やはりカサイ砦が厳しいっていう話は本当なんですかね?」
「カサイ砦?」
「知らないのですか? 最近魔物が活発になっておりカサイ砦にてミサト大森林からやってくる魔物を迎撃しているという話です」
リーダーのエルマン曰く、サイタマ方面にあるミサト大森林の魔物がカサイ砦に襲撃したらしく沢山の怪我人が出たためポーション類が必要になっているとの話。この頃トウキョウでも魔物の動きが活発になっているので調査隊を募るらしい。
ここからトウキョウ都は二日ほどの場所にあるようで、彼らはこのあとトウキョウ都へ戻るらしいが今回現れたアーマーオークについて報告しなければならないとのことだったが、トゲトゲ草の採取は失敗となってしまう。仕方がないので俺たちが集めたトゲトゲ草を半分だけ渡した。
エルマンたちにお礼を言われたのだが、セリナは少し納得できていない顔をしていた。
「俺たちはもう一度集めればよいだろ。今度はセリナも手伝えよ」
「分かってますが、戻る時間は大丈夫なんですか? もうすぐ夜になりますよ」
セリナの言う通りだんだんと日が暮れ始めており、これ以上の採取は難しいだろう。
「仕方がないだろ。あのまま手ぶらで帰らせて、砦に薬を届けられないほうが問題あるじゃん」
俺の言い分に反論ができないらしく唇を尖らせて俺を睨むように見つめていた。帰る方法については考えがある。
「帰る方法は考えてあるから明日も採取するぞ」
「何を言っているんですか帰りに三日もかかるんですよ! 今日中に戻らないと私たちが依頼失敗になっちゃいますよ!」
ルノが心配そうに言う。俺は問題ないと繰り返し言い今日は野営をすることになった。
翌朝、朝食も食べずに採取を開始する。ルノはお腹がすいたとわめくように言うがセリナが黙っていることからルノも黙って作業をするようになったのだ




