第37話 生活魔法
「期限は一週間。商業ギルドからの依頼を冒険者ギルドで引き受けた案件となる」
舌打ちをする俺。行っている間にセリナと連係を取れるようにしなきゃならない。しかもルノのレベルも上げる必要がある。
オッサンは「頼んだぞ」と言い、席を立ち家から出ていった。たぶんギルドへ戻ったのだろう。
「セリナ、知っていることを全部話せ」
「何の話でしょうか?」
とぼけた顔をしてやがる。
「シナガワ湖にはリザードンがいるんだ。あんたは攻撃系の魔法は使えるのかって聞いてるんだよ」
「それは私を仲間にしてくれるということで宜しいのでしょうか?」
俺は舌打ちをした。
「今回だけのパーティだ。その先は話しだいだ。この話は知っていたんだろ」
「――はい、存じてました。ラインハルトさんにパーティ解散の話をした際、シノミヤさんがどの宿屋にいるのか聞きました」
あんちくしょうめ!
「先ほどの話に戻すと戦闘系の魔法に関してですが、私は聖属性しか攻撃魔法を使うことはできません。武器に関してもロッドや杖しか装備できません」
戦闘に関しては戦力外に近いと遠回しに言っている。よくメタルプレートになれたものだな。
「回復系は?」
「メインは回復でサポートの魔法も使うことができます」
「それでメタルプレート?」
「回復魔法の種類が評価された結果です」
カレンが上がるのと比例させないといけない部分も合わさっているんだろうな。
「期間は一週間。これから出かけるとして、到着は三日後になる。それでも大丈夫か?」
「問題ありません」
「ルノ、出かけるから戸締まりの確認を行うぞ」
「了解です!」
シナガワ湖はヨヨギ村からゴタンダ山を越えた先にあり、トゲトゲ草は湖の周りに生えているがシナガワ湖にはリザードンが生息してる。リザードマンよりは弱いのだが、集団行動してくるので単独で行くとかなり厄介な相手である。そのため、集団で採取しに行くことをお勧めされている。俺には関係ないけどね。
戸締まりをして乗り合い馬車が出ているのか確認しに行ったのだが、すでに出発したあとだったため、動物狩りしながらヨヨギ村を目指すことにした。もちろん戦闘になったらルノに任せるつもりだ。
気長な三人旅となったが、気になることが二つある。一つはセリナが食事を作れるのかという問題と、不寝番だ。
「セリナ、確認したいことがある」
「なんでしょうか?」
「飯を作ることはできるのか? 夜は不寝番してもらう必要があるけど大丈夫か?」
ルノは不寝番だけしてもらうとして、セリナには食事の準備など手伝ってくれると助かる。
「食事ですか……。自信はありませんが、多少は作れます。不寝番もできなくはありません」
目が泳いでるところを見ると、本当に自信がないということだろう。もしかして残念ガール2号か? もちろん1号はルノだ。
「手伝ってくれるだけで問題ないよ」
「そうですか……」
ホッとした顔をしているところをみると、食事を作るのは苦手ということか。ここに2号が誕生した。
町を出て行き動物の気配を探しながら街道を歩いて行く。ウサギでも良いし鹿でも良い。何かしら動物が現れてくれることを願いながら数時間歩いていたが、今日は何も現れることがなく、ヨヨギ村近くまでやって来た。
「もうすぐヨヨギ村に到着するけど、どこにも寄らずに先へ進むけど問題ないよな?」
ルノは元気よく返事をしたが、セリナは少し寄りたそうにしている。立ち寄っても何もない村なんだけどね。
「あの……お手洗いに行きたいんですけど……」
少し恥ずかしそうに言われると、どう反応してよいのか困る。ルノですら草陰でやっているんだから特別扱いはしたくない。
「却下。草陰で行ってください」
冷たくあしらってみる。
「生活魔法が使えないんです! 何故か覚えられなかったんです!」
マジか! 魔法を使える奴は必ず覚えられるんじゃないのか?
「今までどうしていたんだよ」
「言わせないで下さいよ! 紙を使ってに決まっているじゃないですか!」
決まっていると言われても知らねーよ。
「だったら紙を使えば良いじゃん」
「高級品なんです! そう簡単には使えません!」
ちっ! 面倒くせー。生活魔法が使えれば問題ないんだな。
メニューから同伴者ステータスを選択。同伴者にセリナの名前がありクリック。
「何をしているんですか?」
「ちょっと黙ってて。今忙しい」
名前:セリナ 年齢:19歳
種族:ヒューマン
冒険者ランク:Cランク メタルプレート
ポイント:50
Lv:10
HP:45
MP:50
STR:8
AGI:22
DEX:30
VIT:15
INT:40
魔法:ヒール2・ハイヒール1・浄化・ホーリーアロー
さすがヒューマン。能力が低い。しかもセリナは力が全くない。魔法もそんなに使えないじゃん。
しかし、ポイントは50あるので生活魔法を付与させられる。この人たちはポイントのことは知らないと思うし、勝手につけても問題ないな。
名前:セリナ 年齢:19歳
種族:ヒューマン
冒険者ランク:Cランク メタルプレート
ポイント:40
Lv:10
HP:45
MP:50
STR:8
AGI:22
DEX:30
VIT:15
INT:40
魔法:ヒール2・ハイヒール1・浄化・ホーリーアロー1・生活魔法(清掃・掃除)
「これで良し。セリナ、生活魔法が使えるようにしたからトイレはそこら辺で行ってくれ。使えるようにした方法は秘密だ。何も聞くなよ。俺は質問には答えないからな」
早口でセリナに説明する。セリナは「え? どういうことですか? 何を言っているんですか?」と、質問してきたのだが俺は全てを無視して歩く。だがセリナは説明をしつこく求めてきやがった。
「ルノ、セリナに説明してやってくれ。うるさくてかなわん」
「りょ、了解です……。セリナ様、ご主人さまはものすごい魔法使いなんです。ご主人さまができると言ったらできちゃうんです!」
説明になっていないが、とにかくセリナが黙ったので良しとしておこう。セリナは本当に使えるようになったのか確認するため、自分の服に魔法を使ってみているようだ。
「聖なる加護にて我の服を清掃せよ」
詠唱を初めて聞いたルノは眉間にシワを寄せて俺を見ている。自分たちは無詠唱だから疑問に感じているのかも知れない。
セリナは服が綺麗になったのを確認して、草陰の方へ走っていく。俺はもしものためにセリナの警護をするようルノに伝えた。
「ご主人さまが行けば良いのでは?」
まさかの言葉に俺は顔を引き攣らせた。
「デリケートな問題なんだよ。男が近寄っては恥ずかしいだろうが」
「そう言うものなんですかね?」
不思議そうな顔をしてルノはセリナのいる場所へと向かった。アイツはどのような教育を受けているのだろうか。不思議でならない。
しばらくしてすっきり顔のセリナとルノが戻ってきて、再びヨヨギ村へと向かう。セリナは魔法に関して納得ができていないらしく、しばらくの間俺を見つめていたのだが答えが出ないのと、俺が何も言わないので諦めて周囲を観察しながら歩いていた。
それからしばらくしてが見えてきた。そういえば村長の息子はアーノルドだったな。たまには里帰りしろといったが、どうなっているのだろうか。
「ご主人さま、お昼はいつ頃にするんですか? お腹が空きました」
自己主張してくる奴隷に対し、セリナは少し驚いた顔をしながらルノを見た。俺も驚きだが、これがいつもの事なので慣れてしまった。
「村から少し先に行ったところで昼にするから、もう少し我慢をしろ」
「えー! うー。了解です……」
納得はしていないが言うことは聞く。
本当にこれが奴隷なのかと聞きたそうな顔をしているセリナの目が痛いのを我慢し、俺たちは村には立ち寄らずに先へと向かった。




