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第35話 ばかしあい

 カレンに詰め寄られたのだが、ラインハルトのオッサンたちが俺たちに気が付いてやってきた。そしてあれよあれよと話が進み、シンジュクの町へ戻ることとなった。どうやら辺境伯様から連れ戻すように言われているらしく、カレンは俺に何か言いたそうな顔をしていたのだがラインハルトのオッサンがガードして連れていかれてしまったのである。俺とルノはのんびりと帰ると言って、岩陰に隠れてテレポートの魔法を使い家の前へと先に戻り、さっさと風呂に入って久し振りにベッドで寝ることができたが、スギナミ洞窟には三日間もぐり続けていたらしく、その間休憩を一度も取っていなかった。その疲れがどっと出たのか翌日の夕方に目を覚ましたが、ルノは夜に目を覚ましたのだった。


「ご主人さま、どうして起こしてくれなかったんですか!」


「知らねーよ! 俺だって夕方に目を覚ましたんだ」


「魔法で時間を巻き戻しって下さいよ!」


「……そんな魔法ねーよ!!」


「なんですか今の間は!! 本当はあるんじゃないんですか!」


 唸り声をあげているような感じでルノは俺を見つめている。本当は時間を巻き戻す魔法はあるが、現実の世界で使ったらどうなるのか分からないから使えない。


「使えるんでしょ! 使えるんですよね!」


「知らねーよ! そんな元気があるのなら筋トレしろよ! ほら、腕立て伏せ! 百回始めろ!」


 ルノは不貞腐れた顔をしながら腕立てを始めると、服の隙間から胸がチラチラ見えたので目をそらした。奇麗な乳首でした!

 腕立てを百回と言ったがルノは半分で力尽きて眠りにつきやがった。まだ疲れが残っていたのだろう。俺も眠くなったのでルノをベッドに寝かして俺も眠りについた。

 翌朝、俺が目を覚ますとルノが俺の体に抱きついて寝ている。可愛い寝顔で起こすのが可哀想になる。再び目を覚ましたのは昼になってからで、今度はルノが俺の寝顔を眺めていた。


「ご主人さま、まつ毛が長いですね」


「何を眺めてやがる」


「……お腹がすきました。食事にしませんか?」


 俺の話は無視か。


「ご主人さま、お腹がすきました。お昼は何を食べますか?」


「ルノが作ってくれるのか?」


「さぁて、お風呂に入ろうかなぁー」


 やっぱり作らんのかい!

 ルノは起き上がってお風呂へと向かった。本当に作る気がないのか作れないのか分からないが、結局は飯を作らないから俺が調合で昼飯を作って、風呂から上がってきたルノと二人で食べた。

 夕方になりやることが無いとうるさいルノを連れて冒険者ギルドに顔を出すと、周囲の人たちから変人を見るような目で見てくる。一体どうしたというのだろうか……。


「シノミヤ様、お待ちしておりました」


 ギルドの受付嬢が俺に話かけてきた。シノミヤ様? どういうことだ?


「シノミヤ様とルノ様のギルドプレートをお預かりさせていただいても宜しいでしょうか?」


 受け付けの人がいつもと違った雰囲気なのが気になるが、取り敢えずギルドプレートを渡すと、ルノもギルドプレートを渡す。受付嬢はギルドプレートを持って裏へと行ってしまい、俺たちは取り残された気分になった。待っている間、他の冒険者からジロジロ見られており気味が悪く感じる。

 それから少しして受付嬢が戻ってきて、俺たちにギルドプレートを返してきたのだが、俺のギルドプレートの色がメタルになっていて、ルノのプレートはブロンズとなっていた。


「シノミヤ様はドラゴンを仕留めたとの報告がありギルドプレートを確認させていただいたところ、確認が取れました。本来であればゴールドプレートにアップなのですが、一か月そこらでゴールドプレートになるのは異例なため、見送りとなってしまいましたが、メタルプレートでも異例の昇進となります。ルノ様はオーク討伐にゴブリン討伐と実績があるためブロンズとなります。二人ともおめでとうございます」


「そうですか、ありがとうございます」


 取り敢えずお礼を言った。どうやらこれがジロジロ見られた原因のようだな。

 貰った報酬でみんなに一杯奢るよう受付嬢に言う。受付嬢は大きな声で俺が奢るというと、ギルド内にいた冒険者たちは大きな声で喜んだ。そこにやってきたのはラインハルトのオッサンだ。神妙な顔をして俺に付いてくるよう言ってきたのでオッサンの後に付いて行く。

 二階の一番奥にある部屋へ案内され、オッサンの後に付いて行く形で部屋の中へ入っていくと耳がとがった金髪の男が椅子に座っていた。


「誰ですかね?」


 ルノが俺に耳打ちをしてくる。俺が知るはずがない。


「君がシノミヤキョウスケ君か?」


 耳をとがった金髪……こいつはエルフだ。


「そうですけど……貴方は?」


「シンジュクの町で冒険者ギルドのギルドマスターをしている、マチューだ」


「ギルドマスターが俺に何の用ですか?」


 マチューと名乗ったギルドマスター……かなり長い年月を生きている奴の眼だ。かなり強いが俺ほどではなさそうだ。


「ドラゴンを始末したらしいね」


「ドラゴンといっても地竜ですけどね」


 ジト目で俺を見てくるマチュー。気になるならギルドプレートを確認すればいい。


「エルダーリッチも討伐したとか……」


「気になるならこのプレートを確認すれば良くないですか?」


「すでに確認済みだから問題はない。ただ君のその力が気になってね。山育ちだって言っていたがどこの山だい」


「……」


「で、君は何者だ?」


「——エルダードワーフ。生まれは多摩の団地だ」


「ダンチ? タマ? それは何処だい?」


「そんなに長く生きているのに知らないのか? 東京との国境付近にある山奥だよ。何年生きてるんだ? あんたは」


 俺の言葉が気に入らなかったのか、マチューは俺を睨んできた。


「話はそれだけか? それだけだったら帰らせてもらう。ルノ、行くぞ……」


 俺とルノはオッサンの横をすり抜けるようにして部屋を出ると、オッサンは俺たちを追いかけるように部屋を出てきた。


「シノミヤ!」


 俺たちは立ち止った。ルノは少し不安そうな顔をしてオッサンの方を見る。


「俺たちはお前の味方だ! 町から出ていことするなよ」


 俺は返事の代わりに手を上げてその場から立ち去る。ルノはオッサンに頭を下げてから俺を追いかけてきた。こういうところは俺の奴隷らしいな。

 ギルドハウスのホールに戻り、掲示板の方へは行かずにギルドハウスから出ていき自分の家へと戻ろうとしたら再び呼び止められた。今度はオッサンではなく違う人が呼び止めた。


「キョスケ、貴方に話があります」


 俺を呼び止めたのはセリナだった。


「……セリナさん。カレンさんはどうしたんですか」


「キョスケ……いや、シノミヤさん」


 改まってどうしたのだろか。しかも名字で呼んできた。取り敢えず黙って様子を見るか……。


「エレンの件はありがとうございました」


「惜しい人をなくしてしまいましたね」


「カレンお嬢様ですが、今回の件で冒険者を引退されるとのことになりました」


 普通の冒険者なら問題はなかっただろうが、貴族のそれも辺境伯の娘だもんな。


「それで話とは?」


「私とパーティを組んでいただけないでしょうか」


 俺は聞き間違えたのだろうか。セリナは何と言った?


「もう一言います。私とパーティを組んでください」


「ど、どういうこと……? セリナさんはカレンさんの護衛だったんじゃないんですか」


「今回件で私は解雇されてしまいました。今の私はただの冒険者となってしまいました。私の知り合いで冒険者をやっているのはシノミヤさんしかおりませんので……」


 だからってどうして俺なんだ?


「——ちょっと待て!」


 今度は誰だ? いったい何が起きているんだよ。ルノも状況が把握できずに固まっているし。


「シノミヤはうちのパーティに入ってもらう!」


 そう言ってきたのはローラーさんだった。

 俺を仲間に入れるための言い争いが始まっており、俺の意思は尊重されていないようだった。馬鹿らしいのでルノの手を引っ張り黙ってギルドを後にして家へと帰ることにしたのだった。

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