第31話 どうして君なんだよ
オークハンマーの死骸をストレージに仕舞い解体を行う。一瞬で魔物を片付けた俺に対して恐怖を覚えているのかルノは後退る。人を盾にしたり避けたりと忙しい奴だな。
「たまにはお前も戦えよ。俺ばかり働かせるな」
「あ、あんな奴らを相手になんて出来やしないですよ!」
一か月以上たっているけどクーリングオフってできるのかな……。このままここにいても仕方がないので先を急ぐことにした。
歩きながらメニュー画面を開き自分のステータスを見てみると、レベルが30を超えていた。ルノは戦っていないためレベルはそのままだった。
名前:ルノ 年齢:18歳
種族:獣人ハーフ
冒険者ランク:Eランク アイアンプレート
ポイント:43
Lv:5
HP:28
MP:12
STR:23
AGI:24
DEX:16
VIT:20
INT:10
忠誠心:80
【魔法】生活魔法(清掃・掃除)・剣術レベル2・射撃1
もう少しだけ自分で戦ってくれればオークハンマーなんて楽勝で倒せるはずなんだが、このビビりの性格をどうにかしたいな。
「なぁ、ルノ……」
「は、はい!」
「俺の実力はさっき見た通りだ。低ランクに見合わないだけの身体能力がある。お前を守ってやることは簡単だ。だからもう少しだけ自信を持ってくれないか?」
「……ぜ、善処します」
善処する必要はないだろ。自信をもって戦ってくれれば良いだけだ。だが、いきなり変われと言われても難しいだろうから、もうしばらく様子を見るしかないだろう。
「なぁルノ、どうしてお前は俺の奴隷になろうとしたんだ?」
あれだけ目で訴えてきた理由が知りたい。
「い、言いたくないです」
「後悔はしてないのか」
「——してません」
後悔はしていないらしい。俺としてもルノをクーリングオフはしたくないから助かるが……。
「なら、もうちょっと働いてくれよ」
「……善処します」
困り顔でルノは答えた。
帰り道はできるだけルノに頑張ってもらうことにして歩き続けると、魔物の気配を感じてルノはストレージからベレッタを取り出してゆっくりと魔物がいる方へ歩きだす。少しだけ勇気を出したのかもしれないし、いざというときは俺がいると思っているのかもしれないが、良い傾向だと思った。
茂みから覗いてみると魔物はゴブリンでこちらに気が付いていない。先制攻撃をするチャンスだ。ルノもそれは理解しているらしく銃を構えた……が、注意散漫になってしまったのか運が悪いのか分からないが、ルノは枯れ木を踏んでしまい音を立ててしまった。もちろんゴブリンはこちらに気が付いたのだが、茂みにいるのでこちらの姿を確認できていないので先制攻撃のチャンスは逃げていない。
ルノは緊張した表情で狙いを定めてゴブリンめがけ発砲すると、ゴブリンの脳天に弾丸が命中してゴブリンは光の粒子となって消えた。
「やればできるじゃないか」
「相手がゴブですから……。オークとかはまだ怖いですが、ご主人さまが守ってくれるんですよね?」
「もちろん守るよ。俺にとってルノは大切だからな」
俺の言葉を聞いてルノは顔を赤くしながら先を急いだ。
行きに野営をした場所を通り過ぎてしばらくしたところで日が落ち始めてきた。
「帰り道の方が早くありませんか?」
「俺たち二人しかいないからな。周りを気にせずに歩けるっていうのは楽なもんさ。大人数になればなるだけ周囲を気にする必要があるからな。その分歩くのが遅くなるんだろな」
「そんなもんなんですか?」
「そんなもんさ。さ、枝を集めて火をつけようぜ」
「あのご主人さま、今思ったんですけど薪を買ってきてストレージに入れておく方が効率がよくないですか?」
「お前がそれだけの稼ぎをしてくれたら購入できるんだけどな」
「言わなきゃよかったです……」
げんなりした顔を浮かべルノが薪になる枝を探しに行こうとしたので銃を携帯するのを忘れるなと忠告しておいた。魔物の気配はないが動物の気配は感じるからである。
夜は帰り道に始末したオークハンマーの肉を使って野菜炒めを作る。なぜ野菜炒めを作ったのかというと、ルノがあまり野菜を摂取しないからである。別に野菜が嫌いというわけではなさそうなのだが……。
食事を食べ終わると次は不寝番になるのだが、ルノに期待するのは難しいだろう。
「夜はお任せください!」
珍しい言葉がルノの口から飛び出て俺は言葉を失った。
「その代わり私の隣で休んでもらえますか?」
「別に構わないけど、なんで?」
「……もしものとき起こさなきゃなりませんから」
「そうだな。分かったよ」
たしかにルノの言う通り……と、思っていた時間もありました。現実は異なり俺が眠りについてからしばらくして、ルノが揺すってきたので目を覚ますと「魔物の気配がします」と、自分で何とかするわけではなく俺に排除をお願いしてきた。
「バカかお前……。お前が排除するんだよ。難しければ俺を起こせば良いだろうが」
「一人じゃ無理ですって! 何のためにご主人さまがいると思っているんですか!」
それは俺のセリフだ。お前は何のためにいるんだよ……。愛玩動物ではないんだから、しっかりと働いてくれ。
「それでどうするんだ?」
「こっちへ向かってきているみたいなんで、どうすればよいでしょうか!」
腰にぶら下げている剣は何のためにあるんだよ。
「銃で倒せばよいだろが。お前が起こすから目が覚めちまったじゃないか」
「ちょうど良かったじゃないですか! ささ、ご主人さま確認をしてきてください……イテッ!」
バカなことを言うから頭を叩いた。
「お前が行ってこい!」
押し出すようにしてルノを一人で行かせたのだが、少しだけ心配になり後をつけた。ビクビクしながら魔物の方に向かうルノもしもの時、すぐに駆け付けられるようベレッタを取り出して様子をうかがっていると、何故だか分からないがルノはベレッタではなく剣を鞘から抜き取って構えた。
茂みをかき分けてやってきたのはオークで、ルノは足を震わせながら剣を構えてオークに話かけた。なぜに?
「——こ、ここで逃げてくれたら見逃してあげますよ!」
いやいや、お前が戦いたくないだけだろ。話かけられているオークは何だか戸惑っているように見えるが、相手も引くつもりはなさそうだ。オークはルノに殴りかかるとルノはバックステップしてオークのパンチを躱し、握っていた剣を振り回しながらオークに向かっていく。
だがオークも負けたくないのかバックステップを踏み攻撃を躱そうとしたので、俺は石を投げてオークの足に当てると、オークはバランスを崩した。ルノは勢いよく剣を振り落としてオークの頭を真っ二つに斬り裂いた。
息を切らせながらルノは斬り裂いたオークを見つめ「私が……やったの?」と呆けた声で呟いた。アシストをしたのは確かだが、ルノは自分の力でオークを仕留めたのだ。
「ルノ大丈夫か!」
まるで今駆け付けたかのように近寄ると、ルノは疲れた顔してこちらを見た。
「私……やりましたよ。ご主人さま」
「オークを倒したのか! 凄いじゃないか」
「……私もやる時はやるんですよ……」
アシストしてやったことには気が付いてないようだ。
オークの死骸を回収しルノをお姫さま抱っこして焚火の場所へ戻ると、アーノルドたちが息を切らせながら誰かを探しているように見える。
「——どうしたんだ? アーノルド。俺たちのお楽しみを邪魔にしに来たのか?」
お姫さま抱っこをしたままアーノルドの前に出ると、アーノルドが悔しそうな顔をして俺を見つめてきた。
「お前らは洞窟内に入ったはずだろ。どうしてこんな場所にいるんだよ?」
「ハァハァ……。なんで君なんかに助けを求めなきゃならないんだ! 僕らだって戦えるはずなんだ! なのに何故……なんで君なんだよ!」
お姫さま抱っこをしている俺の胸ぐらを掴んでくるアーノルド。言っている意味が理解できない。洞窟内で何が起きたというのだろうか……。




