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第30話 オークハンマー

 スギナミ洞窟に到着したのは夜になってからだった。

 今日は洞窟の中に入るのをやめて入り口前で一夜を過ごすことになり、普通に野菜炒めを俺が作るとみんなから好評だった。なぜかルノが自慢げにしているのが気に入らない。アーノルドたちのせいでストレスが溜まっているのかもしれない。あれから何かと俺に絡んでくるアーノルドたち。わざとじゃないのは分かるんだけど、何か空回りしている。


「シノミヤ、ちょっと話がある」


 空気が悪いのを察したのかラインハルトのオッサンが俺を呼びつけた。俺が悪い訳じゃないんだけど……。


「別にお前の責任じゃないのは分かっている。だが、あそこまで空気が悪くなるとこのさき支障が出る。荷物を置いてお前らだけ戻ってくれないか?」


「なんで俺なんですか?」


「人数を考えた際、食料など……」


 簡単に言うと食料と水を持っているのは俺たちだけではなく、アーノルドたちも持っており人数的にアーノルドたちを連れていくことにしたのと、今後の経験とどっちが言うことを聞くのかを、冷静に判断した結果らしい。しかも水と食料を置いて帰れと言ってきた。


「多少の食料は貰ていいですかね? 帰るのは二日もかかるんでね」


「分かった。二日分の食料を持っていけ」


「あと、アーノルドたちに不審がられるのは嫌なんで、明日の朝に帰らさせてもらっても良いですか?」


「それで頼む……」


「オッサンも大変だね」


 オッサンは「余計なお世話だ」と笑いながら言うが周りに気を配らないといけないし、カレンたちを探し出さないといけないから余計疲れるのだろう。

 俺はルノのところへ戻ると、ルノは心配そうな顔をしてきた。


「ご主人さま、どうしたんですか?」


「俺たちの仕事はここまでだってさ」


「え?」


 近くにアーノルドたちもおり、俺たちの会話が聞かれては困るため話はここで打ち切ることにした。


「お前がビクビクしているのを見ていられないんだと。今日はここで野営をして明日の朝、町へ戻るぞ」


「りょ、了解しました……。なんか申し訳ありません」


「気にすんな。最初っから嫌だって断ってただろ。俺らにゃ荷が重すぎる仕事だったんだよ」


 ルノは「そ、そうですよね」と言い俺がストレージから取り出した毛布を奪い取り、安全そうな場所を確保して眠りについた。本当に自分勝手な奴だな……。

 日が昇る前に俺は目を覚ましていつものように朝食を作っていると、ラインハルトのオッサンがやってきた。


「なんだ? 眠れなかったのか?」


 ラインハルトのオッサンが聞いてきた。別に眠れなかったわけではない。ちゃんと寝て起きた。


「朝食をつくるために起きたんだよ。それも仕事のうちだろ」


「お前は俺に敬語とか使わねーのか?」


「使ってほしいのか? そんな気がないのに言うのはやめくれ」


 俺の言葉にオッサンは笑う。


「オッサンこそ俺に用があって来たんだろ。起こしてでも話をするように感じるぜ」


「今回の件、本当に悪いと思っている」


 オッサンが真剣な声で言ってくる。これは手を止めて話をした方がよさそうだな……。


「俺個人としてはな、お前がいた方が安心だって思ったんだが……」


「周りが頭数を優先したんでしょ。オッサンは最初っから俺を連れていきたがっていたからね。それにカレンが俺をブロンズに推薦した理由も気になっているんでしょ」


「いや、推薦した理由は聞いている。お前はほかの冒険者よりもきついトレーニングをさせられていたのに一度もギブアップしなかったのと、全てのメニューをこなしたということからランクアップさせたわけだ」


「なるほどね。それが言いたかったのか?」


「いいや。お前は今から洞窟へ入ってくれないか」


 真剣な目で俺を見つめてくる。


「……断る。中に入るのを怖がっている奴がいるんでね」


「そうか、お嬢様が見つからなかったとき、お前はどうするんだ?」


「そん時はオッサンたちが辺境伯に報告するんだろ」


 オッサンは頷いたのだが真剣な目をしながら俺を見つめてくる。


「なんだよ? 俺はブロンズでルノはアイアンだ。中に入ることなんてできやしなんだぞ」


「ギルドから直接依頼を出す。行ってくれないか……。お嬢様はひどくお前さんを気に入っていた」


「なら、オッサンが助けりゃいいだろ」


 何も言わないオッサン。このままだと平行線だ。


「分かったよ。オッサンたちが失敗したら俺が中へ入る。それで良いんだろ? 俺たちに死ねっていうのかよ……」


 オッサンは笑いながら「お前なら大丈夫だろう……」とずいぶん勝手なことを言う。俺たちが死んだら責任取ってくれるのかよ……。

 それからしばらくしてルノが目を覚まして朝食を作るのを手伝い始めた。帰り道にでもルノに話をすることにしよう。

 全員が起きた時にオッサンが俺たちが帰るのをみんなに伝えると、アーノルドたちは少しホッとした顔をしていた。自分たちの方が優先されたと思い込んでいるようだ。

 俺たちは朝食を食べ終わると洞窟の入り口でみんなに別れを告げ帰路につく。ルノは洞窟に入らなくて済んだとホッとした顔をしているが、帰りは二人だということを理解していないようだ。魔物が出たら二人で対処しないといけないのに。

 案の定、ルノは魔物の存在を失念していたようだ。みんなと別れてすぐに魔物の気配を察知して、俺の後ろに隠れやがった。


「どうしたんだルノ。後ろに隠れて」


「いえ……魔物の気配がして……」


「お前に武器は渡してあるだろうが……」


 俺の言葉にハッとした顔をして、ルノは自分のストレージからベレッタを取り出した。本当に忘れていやがった。


「ご主人さま、あっちの方から気配を感じます!」


 後ろに隠れながら指を差す。俺にも気配察知のスキルがあるから言われなくとも分かってるよ。


「この間つかった遠くの獲物を狙える奴で殺って下さい!」


 なんでお前が俺に命令をするんだよ。本当にバカなの?


「言い忘れてたけど、オッサンたちが救出に失敗したら俺たち二人で洞窟に入ることになっているからな」


「……え? 今、何と言いましたか?」


「オッサンたちが失敗したら、俺とルノの二人でカレンたちを探しに行くって言った」


「ちょ、待ってくださいよ! だったらなんで私たちが戻らなきゃならないんですか! 一緒に行けば済む話じゃないですか!」


 おや? 少しは頭の回転が速くなったか?


「アーノルドたちが俺らを敵視してたろ。それで空気が悪くなって俺たちは帰らされることになったんだよ」


「ご主人さまは何も悪いことしていないじゃないですか! 相手の言いがかりで戻らされるんですか! この二日間は何だったんですか!」


 そんなことを俺に言われても知らん。興味もない。


「話は変わるが……魔物が直ぐ側まで来てるぞ。ほら……」


 ルノは動きを止めゆっくりと魔物の気配がする方を油が切れたロボットのように首を動かして見る。大声を出すから魔物に気付かれたようだ。バカだなぁー本当に。

 魔物は目視できる距離まで近づいており、どうやら目的はこちらのようだ。最初に気が付いたときは相手はまだこっちに気が付いていなかったが、ルノの声でこちらの存在に気が付いたようだ。魔物はオークハンマー三体。オークの上位種になる。ゲーム時代だと戦ったことはあるが、こっちの世界だとまだ戦ったことはない。ルノは慌てて俺の後ろに隠れて俺を盾にしている。こいつにとって主人とはいったい何だろうか?


「オークハンマー三体か……。ストレス発散するには物足りないがな」


「な、何を言っているんですか! あんな魔物どうやって戦えというんですか!」


 俺はルノに下がっているよう言い、剣を鞘から抜いた。ルノはアワアワしていたが勝負はアッという間に終わる。ルノやオークハンマーの目には映らない速さでオークハンマーの首を斬りおとし、剣を鞘の中に仕舞った。


「ちょっ! なんで剣を鞘の中に仕舞ってるんですか!」


「勝負はついた。あれは屍だよ」


「へ?」


 オークハンマーが持っていた武器を振り上げるとオークハンマーの首がズルっと滑り落ちて膝から崩れ落ちるように三体のオークハンマーが倒れた。


「な、何を……したんですか……」


「見た通りオークハンマーの首を斬りおとしたんだよ」


「み、見えなかった……です」


 すべての面でルノを上回っているのだから仕方がないだろうが、これだけだとストレス解消にはならないな。


 【ステータス】

 名前::四ノ宮(しのみや)京介(きょうすけ) 年齢:24歳

 種族:エルダードワーフ

 冒険者ランク:Dランク ブロンズプレート

 商人ランク:Eランク商人

 ポイント:105

 Lv(レベル):34

 HP:表示できません

 MP:表示できません

 STR():65,620

 AGI(敏捷):65,635

 DEX(器用):65,681

 VIT(生命):65,695

 INT(知性):65,715

 スキル・魔法:表示できません

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