第28話 Lvアップ
偉そうに椅子に座っているゴブリンはこちらを見て笑っている。足元にはたくさんの骨が転いてそこにはブロンズプレートやアイアンプレートが落ちていた。他の冒険者たちはすでにゴブリンの手によっていないことを表している。
偉そうなゴブリンは何かを言っているようだが、俺には何を言っているのか全く理解できないし興味もないため何かを言っているゴブリンに向かってトリガーを引く。弾丸は偉そうなゴブリンの頭に当たり、ゴブリンの頭は弾け飛んだ。
「何を偉そうにしてやがるんだ。何喋っているらのか分からねーよ」
ゴブリンの親玉らしき奴は光の粒子となって消えてしまったのだが、通常のゴブリンよりも大きい魔石が地面に転がり落ちた。この大きさだとホブゴブリンか? それともゴブリンシャーマン? 何もさせずに始末してしまったから分からないがギルドプレートも回収しておこう。
「お、終わった……んですか?」
後ろを警戒していたルノが恐る恐る聞いてきた。
「帰り道に気をつけろって言ったばかりだろ。戻る途中にゴブリンがいる可能性だってあるんだ」
「りょ、了解……です」
「帰りはお前が先頭を歩け。少しは仕事をしろ」
叫び声をあげたが俺は許さない。ルノには戦闘に慣れてもらわないといけないので、先頭を歩かせた。案の定ゴブリンの生き残りがおり、ルノはキャーキャーと叫びながら銃を乱射していた。無駄玉を使わないでほしい。
時間をかけて洞窟を出ると日が昇りかけていた。ルノから暗視ゴーグルを返してもらい、俺たちはヨヨギ村へ戻り村長へ報告した。なんだか素っ気ない態度だったのが気になるが村長から依頼達成書を貰いテレポートの魔法を使ってシンジュクの町へ戻った。ギルドへ報告しに行っても良かったのだがルノがウトウトとしているため仕方がなく、今日のところは家へ戻りルノを休ませることにした。
自分の部屋で休めばよいのに何故かルノは俺のベッドで眠りにつきやがる。しかし、ルノがゴブリンを倒したのはかなりでかい。洞窟でゴブリンを倒す際はキャーキャー言っていたが、途中から慣れてきたのか何も言わなくなっていた。多少でも使えるようになってくれたら助かるし、ステータスのレベルが上がっているはずだ。
名前:ルノ 年齢:18歳
種族:獣人ハーフ
冒険者ランク:Eランク アイアンプレート
ポイント:43
Lv:5
HP:28
MP:12
STR:23
AGI:24
DEX:16
VIT:20
INT:10
忠誠心:80
【魔法】生活魔法(清掃・掃除)・剣術レベル2・射撃1
おおぉ! レベルが5も上がっている。新たに【射撃】のスキルも習得してやがった。だが知性は相変わらず低いのでMPが2しか上がっていない。少しは頭を使えるようにした方がよいのだろうか。いや、これから先を考えてポイントを使わない方がよいだろう。獣人の血が混じっているので力と敏捷が大幅に上がっている。これだったら剣の腕も良くなるかもしれない。
翌朝、目を覚ますと何故か隣にルノが寝ていた。俺はソファーで寝落ちしてしまったはずだったが、なぜかベッドで寝ていた。服の乱れはないが、ルノは下着姿。布団をかぶって寝ているため寒くはないとおもうが……。
「うぅーん……あ、ご主人さま……おはようございますぅ」
「お前が俺をベッドに運んだのか?」
「まぁ……はい。運んできました」
悪いことをしたわけやないのでルノの頭を撫でた。ルノは少しくすぐったそうな顔をしていたが、すぐに満面の笑みを浮かべた。
ルノにシャワーを浴びてくるよう指示し、その間に俺は朝食を作った。シャワーから出てきたルノは生まれたばかりの姿でやってきたため取り敢えず鉄拳制裁をして着替えさせた。色々見えたが朝から盛ってどうする。おかげで無言で朝食を食べる羽目になったじゃないか。しかしルノは不貞腐れた顔をしている。本当に何様のつもりだよ……。
朝食を食べ終わり戸締りをして冒険者ギルドへ向かう。さっき朝食を食べたばかりだというのにルノは屋台の肉に反応していて、アレが食べたいコレが食べたいと言う。どんだけ食べれば気が済むんだよ。
ルノの腕を引っ張りながら冒険者ギルドに到着し中へ入る。受付嬢に依頼完了の報告書と俺たちのギルドプレートと死んだ奴らのギルドプレートを渡すと、受付嬢から感謝の言葉を言われた。どうして感謝の言葉を言うのか聞いてみると、普通は荷物になりそうな物は回収してこないとのこと、身内の人が聞きに来ることもあるらしいので報告ができるということらしい。
「あとはこの魔石かな。ふつうのゴブリンではないゴブリンがいたようで、ゴブリンたちを統括してたようです」
ラインハルトのオッサン相手だったら敬語は使わないが、ギルドの受付嬢には何故だか敬語になってしまう。
「この大きさ……ホブゴブリンですね。ホブゴブリンでしたらギルドからも討伐依頼が出せたのに……」
そんなことを言われても知らんがな。最後のボスみたいに椅子に腰かけていやがったんだもん。しかも一発で死んじゃったしね。
受け付けで報告書などをすべて処理して報酬を貰い、何か面白そうな依頼はないか掲示板に向かおうとしたらアーノルドたちと出くわした。お互いに気まずい雰囲気が流れる。
「ご主人さま、お知合いですか?」
気まずい空気を無視してルノが聞いてくる。空気読めよ。
「あ、あぁ……。えっと、彼はアーノルドっていう冒険者で、俺と一緒に訓練をしたことがあるんだ」
「へぇー。ご主人さまが訓練をしたんですか……。初めましてアーノルド様。私はシノミヤ様の奴隷でございます」
珍しくルノが奴隷らしく挨拶をした。食い意地がはった奴とはおもえない。
「きょ、キョースケ! 奴隷を購入したのか!」
アーノルドが驚いた声を上げると、後ろにいたマリアンヌさんが俺を睨んできた。俺は何も悪いことをしていない。
「彼女は奴隷商館の主人から譲り渡されたんだよ。商館の井戸が壊されてしまっていてね、それを直したお礼だってさ。無理やり押し付けられたんだよ」
「あーひどい! 私がこんなにご主人さまに尽くしているのに!」
飯も作らず人の肉を奪い取り、主人の言うことをほとんど聞かないやつが言う台詞ではない。戦闘にだってほとんど参加しないくせに。
「す、すごいな……相変わらずキョースケは僕らを驚かせるね」
「そ、そんなことよりもヨヨギ村の件、お前らの家は大丈夫だったのか?」
話題をそらそう。
「僕らの村? 村で何かあったのか?」
「ゴブリンに襲われていたらしいぞ」
「なんだって!」
「取り敢えずゴブリンたちは退治したけど、村長が素っ気なくってさぁ……」
「父さんが!」
なんと! 村長の息子がアーノルドだったのか。もしかして自分の息子にゴブリン退治をしてもらいたかったのか? しかし、アーノルドたちの実力でホブゴブリンと戦えと言われても、無理だと思うから俺がやってよかったのかもしれない。
「たまには親の顔を拝んで来いよ。会える時にしか親はいないんだぜ」
「あ、あぁ……分かってる。今度家に帰ってみるよ」
「じゃあ、俺たちは何かできそうな依頼がないか見てるから……」
俺は逃げるように掲示板の方へ向かうと、ルノは四人に頭を下げてから俺の方にやってきた。アーノルドたちはどこかへ行ったようだった。しかし、親が元気なうちに顔を見せなければ後悔するだろう。
「——ご主人さま、『ウサギの肉を取ってきてほしい』という依頼がありますよ!」
こいつは人の気も知らんで……。だが、ウサギの肉ならストレージに仕舞われているから、これは依頼完了できる。
俺は依頼書を手にして受け付けに行くと、ウサギの肉をストレージから出して依頼が完了したことを報告。報酬を貰い再び掲示板を観に行った。
ルノでも対応できる依頼はないか探していると、受け付けの方が騒がしくなった。何かあったのか?
『冒険者諸君! スギナミ洞窟に入った辺境伯様のお嬢様が半月も戻ってきていない! 我こそはという冒険者がいれば、お嬢様の救出へ行ってもらいたい! ギルドからも捜索隊を出すのでそれに同行してもらいたい』
ギルド職員と思われる男性が声を上げて呼びかけている。どうやらカレンたちが行方不明になったらしい。だが、俺たちのような下っ端は参加しない方が良いだろう。そんなことを考えているとラインハルトのオッサンが俺のところへやってきた。
「おい、シノミヤ! お嬢様の捜索隊に入ってくれ!」
「ちょっ、ちょっと待ってください! スギナミ洞窟って俺たちのランクでは入れない場所じゃないですか」
「荷物持ちが必要なんだよ」
「いやいや、お断りしますよ。シルバープレートやメタルプレートの中に俺たちのような下っ端が行っても邪魔になるだけですし、それにこいつがいるんですよ? 足手まといにしかなりません」
食い下がるラインハルトのオッサンだったが、俺は難癖をつけて断りを入れる。なんとかして人を集めたいのかラインハルト以外の職員がアーノルドたちにも声をかけたらしく、アーノルドたちがギルドに戻ってきた。
彼らが行くのに俺が行かないというのは……と、ラインハルトのオッサンは言い、本当に荷物運びしかしないことを約束してカレンたちの捜索隊に加わることになってしまった。




