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第26話 すぶり

 素振(すぶ)りを終えたルノ。顔は汗だくになっているが、サッパリとした表情を浮かべていた。精神統一されたのだろうか。まだ何も成し遂げてないんだがな。


素振(すぶ)りだけでずいぶんと上達したんじゃないか?」


 すっきりした顔をしたルノに聞いてみた。


「わかっちゃいます? 私の隠れた力が解放されたっていうかぁ……」


 などと言っているルノ。


「まぁ、俺がステータスを弄ったんだけどね。ルノに剣術を覚えさせてみた」


「うそ! うそうそ! ぜったにそれは嘘!」


「本当だよ。お前の素振りがヘッポコすぎて見ていられなかったからな」


 ルノは信じていない顔をしている。


「別に信じなくても良いが、お前に魔法を覚えさせたのは俺だって言うことを忘れるなよ」


 そうだったとルノは叫ぶように言って膝から崩れ落ちる。たった百回素振りをしただけで強くなれたらみんながやるに決まっているだろうが……。

 ガックリしているルノは放っておいて、俺は昼飯を作ることにして家の中へ入るとルノも追いかけてくるように家の中へ入ってきた。今日はオーク肉のステーキにすることにした。

 肉の匂いを嗅いだルノはさっきまで落ち込んでいたのが嘘のように元気になり「何のお肉を使うんですか?」と聞いてくる。俺は黙って肉を焼き始めると、ルノは皿を出して食べる準備を始めた。

 昼食を食べ終えた俺たちは冒険者ギルドへ向かうが、道中ルノはなにの肉を使ったのかと執ように聞いてきたが、なにの肉を使ったのか教えなかった。オークの肉は豚肉と牛肉の間を取った感じの肉質でおいしかった。

 ギルドへ行く途中に卵などを買い足そうとしたが、卵がどこにも売っていない。マツド村でも売っていなかった。卵があれば食事のレパートリーが増えるのに……何処で手に入るのだろうか。冒険者ギルドで聞いてみるかな……。

 冒険者ギルドに到着して中へ入る。ラインハルトのオッサンがいるのか探してみたが、どこにも見当たらない。オッサンなら知っていそうだと思ったのだが、仕方がない。受付嬢にでも聞いてみるか。


「あら、いらっしゃい」


 カウンター越しにいる受付嬢に話かけたら、向こうは俺のことを知っているようだったけど俺は知らない。俺は変に顔が知られているようだ。


「聞きたたいことがありまして……」


「何が聞きたいの?」


 受付嬢に卵のことを聞くと卵を産む鶏がいないらしく、冒険者に依頼して卵を取ってきてもらうとのこと。鶏が狂暴ってわけではなく育てられる場所がない。そのため野生の鶏の卵を取ってくることになってしまうという話だった。


「鶏に関しての話か?」


 後ろから声を掛けられ振り返ってみると、ラインハルトのオッサンが立っていた。


「卵が欲しいんですよ」


「ギルドとしてもどうにかしたいと商業ギルドと話しているんだが……何か良い手はないか?」


「俺に言われても分からねーっす。ふつうは畜産農家が育てるもんですけどね」


「もしかしてお前、鶏の育て方を知っているのか?」


 知っているも何も勉強の一環として小学校などで鶏を育てていたと言っても、小学校って何だって聞かれて終わりだな。


「多少ですけど知ってますよ。昔、育てたことがありますから」


「本当か! 是非教えてくれないか! よし、鶏を確保してくる依頼を出して商業ギルドに育てる場所を提供してもらわないと!」


 興奮するラインハルトのオッサン。


「もしかして卵ってお金になるのか」


 隣にいたルノに聞いてみた。


「高いってもんじゃないですよ! 高級品ですよ! 店で何か探していると思ったら卵を探していたんですか!」


 そこまで驚くことなのか?


「なるほどね。金に困っているところで育てると良いんじゃね?」


 金貨をボッタクる神殿の孤児院とか。


「ちなみに豚などの飼育は……聞くまでもなさそうな顔をしているな」


 育て方は至って簡単。綺麗な環境でストレスのない生活をおくらせてやれば良い。餌は大豆やトウモロコシ、大麦、小麦などを与えてやれば良い。ただそれだけ。豚の飼育に関しても似たようなものだ。

 あとは飼育先だったが、金に困っている場所を助言してやると、ラインハルトたちは交渉してみると言った。これで卵の生産ができるようになるはずだ。

 ギルドで卵の話を終え、俺たちは何か良さげな依頼がないか探していると、ヨヨギ村でゴブリンが出没するので退治してほしいとの張り紙を発見した。

 ヨヨギ村といえばアーノルドたちの故郷である。そういえばアーノルドたちは元気にしているだろうか。多少なりとも関わりを持ったので心配だ。

 俺はゴブリン退治の依頼書を手にすると、ルノは嫌そうな顔をしたがここで少しでも経験を積んでもらわないとこの先が厳しくなってしまう。


「そんな顔をするな。俺も一緒に戦ってやるって。新しい武器もやるよ」


「怖いのは嫌なんですよ!」


 冒険者あるまじき台詞。


「近寄らなきゃ怖くねーだろ」


「近寄らないと戦えないじゃないですか!」


「弓矢は近寄らねーだろ」


「使ったことがないから無理です!」


「当てられる武器をくれてやるって言ってんだよ。俺の言うことを聞け。ど阿呆」


 そう言ってルノの頭を叩くと、納得できていないらしくブツブツ言ってやがる。そんなルノを無視して依頼書を受け付けに提出すると、なるべく早めに依頼を遂行してもらいたいと受付嬢に言われた。どういうこと?


「いままで数名の冒険者がその依頼を受けたのですが、誰一人も戻ってきていないんです。ランクを上げようにも報酬が合わなくって……」


 受付嬢が早めに対処してもらいたい理由を教えてくれたが、ルノには聞かせたくなかった内容だった。


「そんな無理な依頼を受けるんですか! 絶対に無理ですって! 今からでも遅くないから止めましょう!」


「おいおい困っている人がいるんだぞ。放っておいてもいーのかよ?」


 断る理由を探すルノだったが時すでに遅し。俺が依頼を受けてしまったのでルノは付いてこなければならない。ギルドハウスあら出ていくと肩を落としながらルノは俺の後を付いてきていた。

 町を出て適当な動物の気配を探る。ルノでも扱える武器を渡して試させるためである。ルノは相変わらずブツクサと文句を言っているのだが、こいつは自分の立場ってやつを理解していないのだろうか?

 探りながら歩いていると動物の気配を見つけたのでスコープを取り出し、覗いてみる。どうやらウサギが気配察知に引っかかったのだろう。


「ルノ、この先にウサギがいる」


「えぇ、動物の気配がしてますね。ウサギを仕留めるとなると罠を仕掛けないとなりませんね」


「しかしだな、俺はこの場から仕留めることができる」


「はいはい、ご主人さまはすごい魔法使いですからね。仕留めることくらいはできるんじゃないですか? 消し炭とかにしてしまって」


「いやいや、こいつを使って仕留めるんだよ」


 ストレージからスナイパーライフル取り出して構える。


「そう言えばこの間も使ってましたね、それ」


 サプレッサーを取り付けスコープを覗き込む。ウサギに照準を合わせトリガーを引くと、弾丸は脳天に命中した。ルノは何が起きたのか分からんらしく銃を見つめていた。


「これを覗いてみー」


 ルノにスコープを渡す。


「よく見えませんよ?」


「覗くの逆だ。動物の反応があった方を観てみろ」


 慌てて逆側から覗き込み驚いた顔をしながら声を上げた。


「ご主人さま! ウサギが死んでますよ!」


「これが銃の威力だ。お前に拳銃(これ)をやる。威力はあるが音が響くため相手は躊躇するだろうよ」


 投げるようにしてベレッタを渡すとルノは慌てて受け取った。使い方を説明して弾を渡す。

 説明しただけだと理解できないと思い、的を用意して試し撃ちをさせるとルノは衝撃と音に驚き銃を落とした。必中5が付与されているため弾は的に当たっている。


「な、なんですか! これ……」


 威力に驚いているのか、それとも音に驚いているのか分からない。


「弓矢を強化した物だと思ってくれればいい。離れている敵を仕留めるのに使う武器だ」


「音が大きすぎますよ!」


「威圧ができるだろ?」


「場所がまるわかり過ぎます!」


「場所なんてばれたって良いんだよ。知られた時には撃たれているんだから。弓矢だって外したらある程度の場所がばれるだろ? この武器は場所がばれても構わない武器なんだ」


 ジト目で俺を見てくるルノ。この目は俺の言っていることを信じていない。


「ご主人さまが使っていた武器は、遠くの敵を狙えるじゃないですか……」


「お前は後衛支援タイプじゃないだろ。まぁ、そのうち使わせてやるけど、今はこれを使って戦闘に馴れろ」


 馴れろと言われて「はい、そうですね」と簡単に言えないのが人であるがルノは奴隷なのでそう答えるしかないのである。

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