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第24話 詠唱

 ルノが追いかけて来ているのか多少心配になったが、俺の気配察知では六匹の魔物を一人で戦っておりどう見ても劣勢にみえる。駆けつけるように魔物の群れに飛び込み、目の前にいたオークの顔面を蹴り飛ばすと蹴られたオークは吹っ飛んで起き上がらない。どうやら首の骨が折れたようだ。


「助太刀します!」


 剣を構えている男性冒険者に声をかけると「助かる!」と返ってきた。本当にピンチだったようだがルノの姿が見えないので少しだけ心配だが、目の前の敵に集中しなければならない。


「大いなる火の神よ、我に力を! ファイアーボール!!」


 男性冒険者が魔法を詠唱して手からファイアーボールを出した。え? 魔法の詠唱? そういえばエレンも魔法を使うときブツブツ言っていたのを思い出したが、俺は無詠唱で魔法を出していた。もしかしてそれがカレンに好かれた理由か? いや違うか……。

 冒険者が投げつけた火の玉はオークの顔に当たると、オークは息ができないらしく倒れてもがく。俺はそいつの首を切り落としてもう一匹を仕留めると、反対側にいたオークがこん棒を振り上げてきたのでバックステップで攻撃をかわした。すると、茂みに隠れていたルノが目を瞑りながら剣を突き刺しに突進してきて、俺を攻撃してきたオークの横っ腹に突き刺した。しかし、それは致命傷になっていないらしく、オークは倒れない。

 ルノは突き刺した剣を抜こうとしていたが、どうやら抜けないらしく「あれ? なんで抜けないの!」と言いながら必死で抜こうとしてオークに投げ飛ばされたので俺は急いで落下地点に行き、ルノをキャッチしたがルノは目を回しており、安全な場所にルノを置いて再び戦闘に参加した。

 冒険者の様子を見たのだが、すでに姿がなく俺たちはスイッチされてしまったらしい。しかし邪魔がいなくなったことで動きの制限がなくなりアッという間に始末できた。


「ルノ、大丈夫か!」


「な、なんとか……。私……勇気を出しましたよ。ご主人さま……」


「あぁ、見ていたよ。えらいぞ!」


「なら……今夜は猪鍋が食べたいですぅ」


 ちゃっかりしてやがる。しかし、あの冒険者はどこへ逃げたのだろうか。俺たちにオークを押し付けやがった。せっかく助けてやったのに……。

 オークの死骸は光の粒子にならなかったので俺は死骸をストレージ中へ仕舞うと、解体するか聞いてきたのでオークの肉は食用だということが分かったのだが、ルノが食べたいかどうかで判断しよう。

 ルノを背負いこの場から退散してゆっくりと休めそうな洞窟に入り、ライトの魔法で周囲を照らしストレージからルノが汚した毛布を取り出して掛ける。食事の準備をするため薪を拾いに行こうとしたら、ルノが「私も行きます……」と言って付いてこようとしたので、俺は休むように言ったのだが「一人は嫌なんですよ!」と強い口調で訴えてきた。

 このように我が儘を言っているときは頑として聞かないため、仕方がなくルノを再び背負って薪を拾いに行くと、ルノは嬉しそうな声で薪がある場所を指を差す。元気なら自分で歩いてもらいたい。

 薪を拾い集めて先ほどの洞窟へ向かおうとしたところ、ポツポツと雨が降り始めてきたので洞窟へ急いで戻り、ルノを降ろして焚き火の準備を始め猪鍋を作りだすと先ほどまでグッタリとしていたルノが飛び起きて鍋の肉を箸で掴んで口に放り込んだ。放り込みまくった。……え? 俺の肉は?

 肉を食べることができなかった俺。ルノが「よそってあげますよ!」と言っているが、肉はすでにない。取り敢えず取り皿を渡してみたがルノは残っている野菜をたくさん取り皿に放り込み、自分は満足そうな顔をしていた。あーおにぎりが食べたい……。

 一応この世界にも米はあるのだが、シンジュクの町では売っていない。売っているのはセンダイの町より上の都市になる。行こうと思えば行けるのだが、行くとしたら一人で行くことになる。能力的に今のルノを連れていくのは難しいだろう。


「美味しかったですぅ」


 そりゃ肉しか食べてねーからな。俺は野菜とスープのみだ。今度はオークの肉でも……。


「ルノ、オークの肉って食べられるのか?」


「はい、食べれますよ。私は食べたことがありませんが、結構美味だという話を聞いたことがあります。どんな味がするんでしょうかね~」


 どうやらオークの肉は一般的に食べられているようだが、ルノのい方からするとあまり出回っていないようだ。


「なるほどね。オークの肉は食べられるのか……。ルノ、そういえばオークを仕留め損ねたな」


「……あと一歩というところだったんですけどね」


 一歩どころかもう少しでお前が死ぬところだったんだけどな。


「お前の剣には切れ味増幅も付与されているんだけどな。帰ったら剣の稽古をしなけきゃいけないな」


 何も答えないルノ。どうやら聞こえないフリをしているようだ。だが、帰ったら剣の稽古をみっちり行ってやる。そうしないと何処にも行くことができないじゃないか。

 しばらくしてルノは毛布が臭いと言ってきた。お前のしょんべんの匂いだよと言ったら、デリカシーがないと言い放ち顔を殴ってきやがった。それから少ししてルノは再び眠りにつき俺は寝ずの番をしたのだった。

 翌朝になりルノが目覚めたので朝食を用意すると、ルノは勢いよく朝食を食べた。本当に残念ガールだな。俺も朝食のパンを食べると、ルノは「美味しいお肉が食べたいですね」と言ってきた。昨日沢山食べたじゃないかお前……。

 朝食を食べ終えた俺たち。町へ戻る準備をして移動を始めた。ルノを鍛えるために歩いて帰ろうとしたのだが、本当に剣の稽古をしてやらないといけないのと、冒険者ギルドで魔法に関して聞きたいことができたのと、逃げた冒険者のことを調べる必要があるためテレポートの魔法を使って自分の家へワープできるか試してみた。すると目の前にワープホールが現れたので入ろうとしたらルノが怯えて動こうとはしない。仕方がないのでルノをお姫さま抱っこしてワープホールの中へ入ると家の前に到着した。


「——あれ? ここどこでなんですか?」


「俺たちの家の前だよ。早く家の中へ入って風呂に入れ。お前、しょんべん臭いんだよ」


 怒りの形相でルノが顔面を引っ叩こうとしてきたので避けた。


「そんな元気があるんだったら自分の足で立てよ」


 手抱えていた手を離すと、ルノは尻もちをついてお尻を押さえながら悶えていた。そんなルノを置いて家の中に入り、先ずは着替えることにした。玄関が開く音がしたのでどうやらルノも家の中へ入ってきたようだ。

 服を着替えてキッチンへ行き冷蔵庫の中を確認するが、めぼしい物はない。オークの肉をストレージから取り出して冷凍できる分だけ詰め込み、残りはルノと一緒に食べる分とギルドに卸す分にしよう。


「ルノ! 出かけるぞ!」


「——ちょっと待ってください! いま、お風呂に入っているんです!」


 俺に言われたことを気にしていたのだろう。一時間ほど待っているとルノがご機嫌な様子でやってきた。


「おっ待たせ致しましたー!」


「じゃあ、行くぞ」


「あっ! 待ってくださいよ! 私綺麗になりましたよ! もう臭いだってしないはずですってばぁ! 聞いてるんですか!」


 ルノが何か言っているが気にしないでおこう。先ずは冒険者ギルドだ。家を出るとルノも慌てて靴を履いて家から出たので、家の鍵を閉めて冒険者ギルドへと歩き出す。ルノは相変わらず臭いについて何か言っていたが、俺はその言葉を無視しながら先へと急いだ。

 そして冒険者ギルドに到着し中へ入る。相変わらずギルドの中は喧騒としており、俺は言葉の渦を突っ切るようにラインハルトのオッサンがいる場所へ向かった。


「よう! シノミヤじゃないか」


「よう、オッサン。護衛の仕事は無事に済ませたぞ。だけどちょっと問題があってね、相談したいんだが少し話せるか?」


「問題ないが何かやらかしたのか?」


 俺はマツド村の宿屋の件と、オークの群れに襲われていた冒険者の件を(はなし)た。


「マツド村の件はただの喧嘩だから問題ないが、問題は冒険者の方だな。一応こちらとしても調べておくが、相手が知らぬ存ぜぬを貫き通す場合もある。そんときゃカーッとなって殴るなよ。調査が済んで身元が分かったら注意しといてやる」


 注意だけで済むのかよ。


「最後に、魔法を使うときは詠唱が必要なのか?」


「当たり前だろ。魔法を使うときは何でも詠唱が必要になる。無詠唱で魔法を使える奴は古い魔法使いだけだろうさ」


「ヘーソウナンダ……。生活魔法でも詠唱するのか?」


「もちろんだ」


「そういえば魔法ってどうやって覚えるんだ?」


 普通に魔法が使えるため気にも留めていなかった。


「神殿で神官に(かね)を払うか、魔法使いの弟子になるかの二択だな。魔法に興味があるのか?」


 興味というよりも常識が知りたかっただけである。俺はラインハルトのオッサンに礼を言って護衛の依頼が完了した証拠をオッサンに渡して報酬の銅貨50枚を受け取った。

 次は魔法の常識を知るため神殿へ行ってみるかな……。

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